マスクはファッションではない、ってこと
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- 2021/02/11(Thu) -
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マスクの素材としては布よりも不織布の方が良い、という常識がようやく、公認されつつあります。
いつもオシャレな布マスクだった小池都知事が、今じゃサージカルマスクで記者会見に臨んでいますからね。 アベノマスクよりやや大型の布マスクをしていた菅首相も、今は白いサージカル。他の大臣らも同様です。 かつてマウスシールドを装着していた田村厚労相などは、2段階改善しています。 まあそこまではヨシとしても、残念ながら多くの方が着け方を間違えてますね。 一般に、濾過機能が優れているマスクほど空気抵抗が大きく、マスク周囲から空気が出入りしやすくなります。 したがって、サージカルマスク装着のキモは、マスクの周囲、とくに鼻の両側に隙間を作らないことです。 そのためには、内装されているワイヤーを曲げて、鼻と頬のラインにフィットさせなければなりません。 これが上手くいくと、隙間が埋まるだけでなく、ずり落ちにくくなるし、眼鏡も曇りにくくなります。 マスクを着けたら眼鏡が曇って困ると嘆いている人は、吐息が抜けていることを公言しているようなもの。 そのような人に近付く時は要注意です。 中川医師会会長を見ると、喋る時にマスクが口に吸い付いているのがわかります。フィットしている証拠です。 河野規制改革相は、オシャレにしたいのでしょうか、白いサージカルマスクの上に布マスクを重ねています。 有効性も高いとは思いますが、油断してしまったのか、ワイヤーの折り方が足りないようにも見えます。 コロナの予防は、手指消毒よりも何よりも、マスクが大事だとわかっています。マスクの装着法は大事です。 |
Go Toが拡大する一方で熊本のコロナも増えて、イヤな雰囲気です
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- 2020/10/05(Mon) -
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熊本のコロナ感染者が急増してて、イヤな雰囲気ですね。昨日今日の熊本は、九州で断トツじゃないですか。
一部のクラスターを反映している数字だとしても、その人たちからの広がりが今後どうなることやらです。 新型コロナウイルス感染を疑う患者さんは、当院では原則として自家用車での診察(?)を行っています。 疑いは強くないけど可能性がありそうな方は、隔離診察室内で、一定の防護具を着けて診察しています。 可能性は低いけどゼロでは無いような発熱者の方も、念のため隔離して診察することになります。 コロナの可能性はほぼゼロでも急性症状のある方はみな、少なくともゴーグル等は装着して診察しています。 今後インフルエンザが流行期に入り、発熱者が増えたら、ホントに面倒なことになりそうです。 米国のトランプ大統領のコロナ感染は、情報開示が不十分ですが、実は重症だったと報じられています。 入院中に外出して姿を見せたのには驚きましたが、たぶん選挙前の健康アピールなんでしょうね。 黒いマスクから酸素チューブが出ている様子はなかったので、すでに肺の酸素化は改善していると思われます。 いや、酸素不要の状態を支持者に見せるために、無理して酸素吸入を一時中断していたのかもしれません。 もしかすると、大統領専用車内に高濃度酸素を充満させて走っていた可能性だってあります。 レムデシビルやステロイドや抗体カクテル療法など、やれることは全部やる濃厚治療が行われています。 未承認の薬であっても投与を受けられるのは、さすが最高権力者ならでは。 なんとか回復したあかつきに、コロナの脅威や予防の必要性について何を語るのか、興味深いですね。 |
夜間のエアコンつけっぱなしって、昔なら非常識だったはず
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- 2020/08/23(Sun) -
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熱中症対策としてメディアは、「夜間のエアコンつけっぱなし」を、さも当たり前のように推奨しています。
でもそんな話、私はつい最近になって聞いたような気がします。10年20年前からそう言ってましたっけ? 最近わかってきた知見を、さも昔からの常識のように上から解説するメディアには、辟易します。 私が子どもの頃(昭和40年代)は、自宅にエアコンなんてありませんでした。夜は窓全開で寝るのみです。 扇風機はつけてましたが、ずっと風に吹かれると疲れるので、首振りやタイマーを使っていました。 真っ昼間にも、扇風機の熱い風に当たりながら、蝉時雨の中で夏休みの宿題をしていたのを思い出します。 今と当時(50年前)とでは気温が違うと言う人もいるでしょうけど、平均気温でせいぜい、1℃の違いです。 どうして人はこんなに暑がるようになったのでしょう。何が違うんでしょうね。まさか、人間のこらえ性? あるサイトには、夜間の室温は25〜26℃にせよと書いてありますが、これは賛同しかねます。寒すぎますよ。 私は27℃です。この室温なら、薄いタオルケットをかぶる程度で、ちょうど良い具合に眠れます。 でも去年までは26℃設定で、夜間に肌寒くなってエアコンを切ったり、またつけたり繰り返していました。 寝入りばなこそ少々涼しいぐらいがいいですが、深夜の良眠維持にはあまり涼し過ぎない方が良いですね。 理想的には、寝る前までにしっかり部屋を冷やしておき、寝るときには設定温度を上げるのが良いのでしょう。 たとえば、寝る1時間前から25℃設定でエアコンをつけておき、寝る段になったら27℃に上げる、とか。 でもね、何時に寝るかもわからないし、あらかじめエアコンをつけるのって、忘れるんですよね。 ONから2時間後に設定温度が1度上がるみたいに、温度をタイマー設定できるエアコンって、ないですかね。 |
風疹対策はやっぱり低調ですが、さてどうします?
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- 2020/07/02(Thu) -
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「風しんの追加的対策」の利用率が、20%にとどまっていると報じられました。まったく残念なことです。
昭和37〜53年度生まれの男性を対象とし、それを3分割して昨年度から始まった3年間の時限措置です。 開始がずれ込んだこともあり利用者が少なかった昨年度の対象者は、今年度も対象にする措置がとられました。 今年度は今年度で、コロナ禍の影響で受診者が低迷したため、時限措置は1年延長されることになりました。 しかし予想外の要因があってもなくても、この風疹対策はあまり成功しないだろうと、私は思っていました。 風疹対策の目的は先天性風疹症候群を減らすことであり、気になるのはおもに身近に妊婦がいる家庭です。 身近に妊婦がいなければ、自分の健康に直結するわけでもない検査を、中年男性が受ける動機がありません。 それに加えて、多忙な中年男性が、わざわざ仕事を休んで検査を受けに行くのもハードルが高いですね。 熊本市でこの事業が始まったのは昨年7月末。その後11カ月の間に、当院に来院した対象者は47人。 そのうち27人(57%)が、土曜午後か日曜祝日の来院でした。平日限定なら受診しなかったかもしれません。 対象を3分割して進めてきた制度設計も、対象者を混乱させ、モチベーションをそぐ結果となりました。 いちどに全員を対象とすると医療機関に対象者が殺到すると国が予測したのであれば、とんだ勘違いです。 官僚はいつも、彼らの机上の空論がもたらす「副作用」の方を心配しますが、思った通りにはいきませんって。 そんなことは、高齢者の肺炎球菌ワクチンの接種率低迷でわかってたはずです。 新事業がヒットして混乱を招くことを心配する前に、まずその事業が成功することに全力投球しなきゃ。 |
緊急事態宣言解除とは、新型コロナ第1波収束ってことですよね
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- 2020/05/25(Mon) -
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新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言は、ようやく、残る「5都道県」での解除が決まりました。
これが感染「第1波」の収束を意味する上に、今後の社会・経済の復興が期待でき、ちょっと明るい転機です。 今後各地で感染者数がどうなるか、再宣言の判断基準やタイミングをどうするか、課題山積ですけどね。 にしても、「都道県」って言葉、どうなの。耳慣れなくて違和感があって、他のニュースが入ってきません。 メディアによっては「1都3県と北海道」と言ってます。きっと「都道県」を使いたくなかったのでしょう。 「都」や「道」や「府」が含まれるかどうかで、いちいち言い方を変えるとは、日本人ってホント細かい。 さすがに、「都道県」とか「道府」はあまり聞きませんが、「都県」や「道府県」はよく使います。 ですが、その使い分けって必須ですかね。ざっくり全部「都道府県」じゃダメですか。ダメなんでしょうね。 それならば、「知事を首長とする自治体」を総称する言葉が欲しい。 “prefecture” の直訳、何かないですか。 ついでに言わせてもらうなら、「北海道」って、他の「都府県」とは異質・異次元の名称ですよね。 たとえば「東京」「大阪」「熊本」に並べて「北海」で済ませることはあり得ません。いつも「北海道」です。 歴史的経緯は理解しますが、「北海道」だけが例外であるところが、どうしても私は釈然としないのです。 その整合性の無さには目をつぶってるのに、「都道県」のような表現にはこだわる。不思議な国民性です。 という、どうでも良いことはさておき、明日は3カ月ぶりに、ハンズマンに行ってみます。私も活動再開です。 |
マスクの品切れは困りますが、そもそも使い方は正しいですか?
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- 2020/02/02(Sun) -
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医療従事者にとっては、一般の方以上にマスクが必需品なのですが、新型肺炎のせいで世の中マスク不足です。
当院も先週までになんとかかき集めましたが、今週はもう、追加購入が難しい状況になりました。 こんな製品って、メーカー在庫がたんまりあるんじゃないの? あるなら早く吐き出して欲しい。 ためしにAmazonを見てみると、ありきたりのマスクが異常な高値で売られていますね。あくどいです。 日本でコレですから、中国ではもっと深刻な事態になっていることが想像できます。 いや、訂正。中国は想像をはるかに超えていました。 なにしろマスクをペットボトルで作ってますからね。驚きを通り越して、もはや敬意を表したくなるレベル。 笑うしかない果物の皮のマスクも、決してウケ狙いじゃなく、真面目に装着してそうなところが怖い。 しかし翻って日本でも、一般の方がマスクを扱う様子には問題も多く、中国の状況を笑うことはできません。 マスクを扱う上で重要なのは、鼻周囲の隙間をなくすことと、内側(顔に接触する側)を清潔に保つことです。 しかし一般の方を見ていると、自由自在に取り外したり、適当にそこらへんに置いたりしています。 床に落ちた子どものマスクを拾い上げ、パンパンとはたいてから、また装着させる親もいます。 最近は立体的な形状のマスクがあり、私は使ったことがありませんが、鼻へのフィットが良さそうです。 この形だと、自然と内側には触れにくいので、清潔も保ちやすいですね。 ただ、一般の方が毎日使い捨てて使うだろうか、何日も使い続けるんじゃなかろうかと、そこが心配です。 まあ、昔のガーゼマスクよりはいいですけどね。あれは上下も裏表も区別してませんでしたから。 |
ルームランナーを11日間続けて体に起きた変化(速報)
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- 2020/01/27(Mon) -
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ルームランナーを購入した日からずっと毎日、運動してます。って言うのもおこがましい話ですが書きます。
傾斜6%、速度4km/hで、30分間歩行の設定です。「ランナー」とはほど遠い、超初心者のごく軽い運動です。 まあ見ててください。今後ジワジワとスピードアップしますから。しまいにゃ16km/hで走り出しますから。 実質11日連続、例外は1日だけ。その日は屋外で坂道を30分以上歩いたので、ランナーはパスしました。 今のところ、体重や体脂肪率に有意な変化はありませんが、別に悲観してはいません。予想通りですから。 現時点で実感できている、明らかな変化は2つ。 (1)同程度の負荷でも、心拍数が上がりにくくなった (2)階段を昇り降りするのが早くなった すぐに効果が出てきたのは(1)です。心肺機能の改善でしょうか。それまでの運動不足のなせるわざです。 1週間ぐらいして気づいたのは、階段を降りるときのスピードです。軽快なステップで降りられます。 というわけで現在は、夜帰宅後に7時のNHKニュースを見ながら走る(ていうか歩く)のが日課です。 新型コロナウイルス関連や大相撲などのニュースに集中していると、うっかり歩いていることを忘れます。 ニュースが終わって歩くのをやめるのが名残惜しいような、でも風呂にも入りたいしお腹も空いたし。 傾斜などの負荷を調整すれば、2時間や3時間の映画を観ながらでも、ずっと歩き続けることができそうです。 運動をしようとしていちばんのネック(あるいは言い訳)になるのが、時間が取れないってことでした。 なので、快適に「ながら歩行」できるのであれば、この運動はずっとストレス無く続けられそうな気がします。 テレビ視聴のときだけでなく、可能であれば、食事や読書や執筆の時間にも、ずっと歩き続けたいですね。 などと妄想するほど「ウォーカーズハイ」な気分になってきたことが、いちばん大きな変化かもしれません。 |
インフルと修学旅行
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- 2019/12/09(Mon) -
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インフルエンザが流行期に入りましたが、今シーズンなぜか多いのが中学生の患者さんです。
おりしも近隣の中学校は、ちょうど修学旅行のシーズン。この時期の京都・奈良って、めっちゃ寒そうです。 間の悪いことに、このタイミングでインフルエンザにかかる中学2年生が何人もいます。 昨日までに発症したお子さんは、治りが良ければ多分、土曜日からの修学旅行にギリギリ間に合います。 しかし、今日発症した生徒は、たとえすぐ下熱しても、土曜日から旅行に参加するわけにはいきません。 学校保健安全法等の法令によれば、インフル発症の5日後までは「出席停止」と決められているからです。 インフルエンザの検査を受けた子たちは、自分が陰性であることを祈る思いで結果を待っています。 偽陰性でもいいから、ともかく陰性が出ることを待ち望んでいます。 なので陽性判定が出ると、ホントにがっくりと肩を落とします。 こんなことなら、発熱しても医療機関を受診したがらない生徒も、なかにはいることでしょう。 そういったお子さんが、診断を確定させないまま、中途半端な体調で旅行に参加する可能性も大いにあります。 このようなインフルエンザシーズンに修学旅行が設定されていることが、まず第一の問題ですよね。 いや修学旅行に限らず、高校や大学等の入学試験が冬期に行われることだって、同じく問題です。 わざわざ一年中でいちばん寒い時期を選んでセンター試験を行うなど、考えてみたら不合理の極みですよ。 |
時差ボケ調整アプリ
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- 2019/08/20(Tue) -
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「時差ボケ調整アプリ」なるものがあるそうですね。ANAとニューロスペースが開発したソフトです。
ANAが社内で行ってきた実証実験を今後社外に拡大するそうで、一般向けには来年提供される予定とのこと。 たいして海外渡航(出張や旅行)を行ってるわけでもない私ですが、そのアプリの内容は気になります。 つまり、時差ぼけを解消するために、そのアプリはどのような事柄を重要視しているのか、という点です。 アプリは、出国前、渡航中、帰国後のいろんなタイミングで、さまざまな情報を利用者に提供するようです。 たとえば、その時々の光の浴び方、食事の摂り方、睡眠・仮眠の取り方、体の動かし方などです。 たしかに、渡航先や帰国直後の仕事が何より重要なビジネスマンなら、時差ボケ解消は最重要課題でしょうね。 しかし、私のようなシロウトは、渡航先での活動のために機内で適度に寝るなんてことは考えられません。 だって、飛行機に乗ったらワクワクするでしょう。寝るのがもったいなくて、ずっと起きてますよ。 思い出すのは小学5年のとき。寝台特急「あさかぜ」に乗って、防府から東京まで家族旅行をしたときのこと。 寝台列車は寝るための列車ですが、私はずっと起きていて、駅に停まるたびにノートに記録をしていました。 旅行は、目的地に着いてから始まるものではなく、家を出た時点から、もう始まっているのです。 その移動過程がすでに旅行なのです。もちろん、家に帰るまでが遠足です、じゃなくて旅行です。 そんな私なので、機内ではなかなか眠くなりません。むしろ、マックス覚醒しています。 海外旅行でリズムが乱れて困るのは、私の場合はただ1つ、便通です。 気が小さい私はいつも、機内のトイレで「大」ができず、空港で排便することになります。先週もそうでした。 クアラルンプールを出て、台湾上空から便意がありましたが、成田まで我慢しました。 |
ルームランナー買う?
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- 2019/07/16(Tue) -
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「形から入る」なんていう表現がありますね。私の場合はまさに、それです。とくに健康関係で。
数年前に「運動公園を走ろう」と思いつき、靴やウェアやウエストポーチを一揃え購入したことがあります。 しかし残念ながら、その後数年たった今まで、ただの一度も運動公園を走ったことがありません。 形から入る、というよりも、形だけで終わったパターンです。計画倒れです。よくあります。 「腹筋を鍛えよう」と、話題の健康器具を通販で購入してリビングに設置したのも数年前のこと。 残念ながら、使ったのは1回か2回。その後しばらく書斎に安置してましたが、やがて廃品回収に出しました。 似たような腹筋器具は、だいぶ前にも買ったことがあります。30年ぐらい前にはエアロバイクも買いました。 昔の健康器具はすごく重くて、引っ越しの際に業者に処分してもらいましたが、だいぶ嫌がられました。 そんな既往歴のある私ですが、ルームランナーなら続けられそうな気がしてきました。根拠はありません。 計画はこうです。仕事から帰ったらまず、1時間ほど走る。そして風呂。それからビール。食事。ブログ執筆。 時間がもったいないので、走っている間に、録画しておいた映画やテレビ番組を見てもいいでしょう。 なんなら、ブログ執筆等をしながら走れれば、それもいい。デスク付のルームランナーもあるようだし。 機種選定において、高額品を購入すればもったいないから続けるだろうという理屈は、私には通用しません。 しかし、安物は壊れやすいというネット情報も考慮するなら、やはり一流品を購入すべきかと考えています。 どうせ壊れるまでは使わないだろう、という考え方もありますが、最初からそんな弱気ではいけません。 予算以外で問題となるのは、設置場所です。毎日のように使いたくなるためには、リビングに置くべきです。 この件については今後、関係各所への根回し、もしくは便宜供与(金品贈与)等が必要になると思われます。 というわけで、まだ買うかどうか決まってもいないうちから書いてしまいました。計画段階が楽しいもので。 |
悲観論者と楽観論者
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- 2019/07/15(Mon) -
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世の中には、物事を悲観的に捉えがちな人と、楽観的に済ませてしまう人がいます。
とくにからだの不調や病気については、その考え方が両極端です。 自分の病状をいつも悪い方向に考えてクヨクヨ心配する人もいれば、まったく平然と構えている人もいます。 でもよく考えてみると、両者には本質的な違いは無いのかもしれません。 心配性な方は、自分が重病ではないことを早く確認して、いつも安心しておきたい気持ちなのでしょう。 楽観的な方は、自分は重病ではないのだから心配無用なのだと、そう思いたい気持ちがあるのかもしれません。 結局どちらも、自分が重病なのはイヤなのです。早く確認したいか考えないようにするか、その違いです。 予防医学の観点からは、前者(心配性)の方が良く、楽観主義ではしばしば早期発見のチャンスを失います。 しかし一方で、過度な心配はよけいなストレスを生み、病状悪化の悪循環を生じかねません。 そこで心配性の方に対しては、「心配無用」であることの根拠を理詰めで示すのが、医者の腕の見せ所です。 一方で楽観的に過ぎる方には、適度な心配をすることを勧めつつも、安心できる医療を提供することが肝要。 メディア等による医療情報はしばしば、一般人に無用な心配を煽り、医療をやりにくくしている面があります。 しかし逆に、その心配をうまく利用すれば、適切な予防医療を提供するキッカケにできるかもしれません。 そんなことが最近私もわかってきたので、テレビ番組等による情報を頭ごなしには否定しない方針です。 医療は基本的に、多少心配性気味なスタンスで良いのかもしれません。 |
奇跡の肩こり治療?
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- 2019/07/02(Tue) -
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「耳たぶにシワがあるのですが、大丈夫でしょうか」と深刻な顔の患者さん。ははあ、例の番組見たな。
「大丈夫です。この程度なら、年齢相応の変化ですよ」と、やんわり応えて安心していただきます。 たしかにテレビで、耳たぶのシワは脳梗塞や心筋梗塞の危険があるという話が出てましたね。私も見ました。 そういった情報を頭から否定するでもなく、肯定するでもなく、ひとつの「考え方」だというのが私の立場。 動脈硬化が進行して耳たぶの血流が低下すると萎縮してシワができる、という理屈は間違ってはいません。 ただ、耳たぶのシワを気にするわりに、血液の悪玉コレステロール値が高いことには意外と平気な方が多い。 検査結果や医者の言葉よりも、民間療法やテレビ番組の情報の方が、患者さんには抵抗無く入るようです。 かくいう私も実は、いま「ファイテン」にはまっているのです。肩こりに効くという、磁気ネックレスですね。 医者としてどうなのかと思いながらも、医者だからこそ、自ら検証するべきだという結論に至ったわけですよ。 私はもう10年以上も、頑固な肩こりに悩まされ続けています。磁気治療程度で簡単に治るとは思えません。 数年前に左右の五十肩も併発しましたが、これらはいずれも治癒しました。でも肩こりだけは続いてます。 毎日16時間ほどパソコン叩いてるのも、きっと悪いんでしょうね。などと今、パソコンで書いてますけどね。 通販で発注したファイテンが、本日届きました。直ちに装着。むむ、すぐに効果を感じました。マジですか。 これは奇跡の治療法なのか、はたまた顕著なプラセボ効果なのか。現時点では、肯定も否定もしません。 ともかく、検証を続けていきます。あと、ネットで見た「ファイテン+エレキバン併用療法」も気になります。 |
寝る前に水を一杯
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- 2019/07/01(Mon) -
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「からすまがりのようなったですもんね」
来院早々そのように経過報告をされた方に先月処方したのは、「芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)」。 「からすまがり=こむらがえり」でお困りの方によく処方する漢方薬です。 かくいう私も、今朝久しぶりに、ふくらはぎにこむら返りが起きました。泣きそうになる痛さですね。 もともと「こむら(腓)」は「ふくらはぎ」の意味ですが、私のこむらがえりは、足背部によく起きます。 その場合、本来は「こむら」返りではないのかもしれませんが、病態は同じでしょう。 しかし今朝は、もっとも一般的な部位である「腓腹筋」に、その激痛発作が起きました。 もう痛くてたまらないのですが、数分以内に必ず治ることを経験上知っているので、なんとか耐えられます。 これが1,2分で止まるのか何時間も続くのかわからないとなると、もう、絶望しますね。 「からすまがり」というのは熊本の方言かと思いきや、調べてみると似たような表現が全国にありました。 山形県の「からすがえり」とか、愛知県の「からすなえり」とか、沖縄県の「がらさまある」とか。 さすがに沖縄の方言には、少々エスニックな(ガラムマサラの)香りがします。 古い言葉を調べる時に見る「和名類聚抄」に、「古无良加倍利」と「加良須奈倍利」の記載がありました。 10世紀の辞書ですが、たぶんこれは「こむらかへり」と「からすなへり」と読むのだと思います。 「こむら」や「こぶら」は、ふくらはぎの意味だとして、では「からす」とはなんぞや。烏? 諸説ありますが、やはりふくらはぎの意味らしいですね。でも私としては「烏曲がり」語源説に一票。 漢方薬に頼る前に、寝る前に水分を摂って、深酒せず、運動不足を解消するよう、患者さんには勧めています。 そして、人に偉そうに言うばかりの自分の不養生に、ときどき罰が当たるのです。 |
風呂でのぼせないために
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- 2019/05/03(Fri) -
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某ホテルの大浴場で昨日、私の友人が入浴後に気分不良に陥り、しばらく介抱される出来事がありました。
先日は当院の患者さんが、温泉で気を失って溺れかけ、救急搬送されたという話も聞きました。 入浴中や入浴直後の体調不良は、元気な方にも起こり得ることです。 環境温度や体への水圧が急変動し、さらに多量に発汗するので、身体への負担は思いのほか大きいのでしょう。 入浴による血圧低下については以前にも書いた通りで、転倒による受傷や溺水の危険もあります。 溺死者数は毎年数千人で、その大半が浴槽で起きており、海や川やプールなどよりもずっと多いようです。 さらに、浴槽での溺死の多くが高齢者ですが、心臓や脳の異常がはっきりしないケースが多いとのこと。 つまり、単に一時的な低血圧・のぼせ・立ちくらみに近いものでも、浴槽内で起きるととても危険なのです。 かくいう私ですが、熱めの風呂に少し我慢して長時間浸かるような入浴が、実は好きです。 なので自分に課しているルールは、入浴前には少し水分を摂り、飲酒後には入浴しないということです。 また、浴槽から出るときには、ゆっくり慎重に立ち上がります。 うっかりしてスクッと起立した時に軽い立ちくらみを感じることは、月に1回ぐらいあります。 そういえば子どもの頃、浴槽に浸かったまま、蛇口から出てくる冷たい水を直接飲むのが好きでした。 ところが現在のわが家の浴室を改めてよく見たら、蛇口なんてないんですね。シャワーしかない。 そのかわり、浴槽の背もたれと反対側に、半身浴(腰湯)に使うような段があります。使ったことないけど。 風呂から上がる前に少し半身浴しながら、持ち込んでおいたお茶でも飲む、ってのが良いかもしれません。 |
Watchで不整脈監視
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- 2019/04/28(Sun) -
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「Apple Watch」を購入してから、もう4年経ちました。
私が毎日使っているのは「初代」Apple Watch。現在の最新版は「Series 4」です。 このSeries 4ってのが、評判良いらしいですね。 その「心電図機能」が、利用者の不整脈(とくに「心房細動」)を検知する事例が増えているからです。 残念ながらこの心電図機能は、欧米向けの限定機能なので、日本ではまだ使えません。 前例のない医療機器を販売するためのハードルは、米国(FDA)よりも日本(PMDA)の方が高いのです。 となると、私の初代Watchなんて何の取り柄も無いのかと言えば、そうじゃありません。 「心拍数」検知機能があります。手首で測定するので、厳密には心拍数ではなく「脈拍数」ですけどね。 Watchで測定している心拍数は、ペアリングしているiPhoneの「ヘルスケア」アプリ内に記録されます。 たとえばこの1カ月間の私の心拍数は、最大133,最小は54でした。 54のときの心電図はわかりませんが、心拍数がもっと少ない(=「徐脈」)なら、精密検査が必要です。 実際に、初代Watchで徐脈を発見して「洞不全症候群」が判明した米国人の話は、よく(?) 知られています。 発作性上室性頻拍症や心房細動や房室ブロックだって、心拍数に大きな変動があれば発見できるはずです。 つまり、心電図という形でなくても、心拍数やその変動を解析するだけでも、不整脈発見には事足ります。 就寝中に異常な頻脈が記録されたことがきっかけで、心房細動を発見し、無事治療をした人もいます。 心拍が安定しているはずの就寝中こそ、不整脈を発見しやすい時間帯なのかもしれません。 ためしに今夜から、就寝前までに充電を終えて、Watchを腕に装着したまま寝ることにしてみましょう。 何かがわかったら、ご報告します。 |
禁煙したら糖尿になる
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- 2018/08/23(Thu) -
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禁煙すると体重が増えますからと患者さんはよく言いますが、仮にそうだとしても、禁煙した方がマシです。
なかには、禁煙したら太ったのであわてて喫煙を再開しました、などという臨機応変な方もいらっしゃいます。 しかも、喫煙を再開したけど体重が思うように戻らないという、妙な悩みも聞きます。 太るから禁煙したくないなどという理屈は、言い訳に過ぎません。ずっと私はそのように指導してきました。 しかし、禁煙したら糖尿病になりやすくなることは、じつは医学的事実です。ある有名な研究によると、 ・新たに禁煙したら、その後5年間は、糖尿病になるリスクが高くなる ・禁煙後にたとえ体重が増えなくても、男性では糖尿病になるリスクが増える ・もともとの喫煙量の多かった男性が禁煙すると、よけいに糖尿病になりやすい そんなデータが禁煙外来の逆風になって困っていましたが、最近、禁煙に軍配を上げる研究が発表されました。 ・禁煙後に体重が増えると糖尿病のリスクは上昇するが、それは一時的なもの(禁煙後5〜7年)である ・禁煙によって最終的な死亡リスクは減った つまり、禁煙によって体重が増えようが糖尿病になろうが、その人の寿命は延びるということです。 それほどまでに、タバコの害は強いということなんでしょうね。 体重が気になる喫煙者は多いですが、四の五の言わずにまず、禁煙しましょう。減量はその次ということで。 |
大腸3D-CT検査
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- 2018/08/10(Fri) -
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「がんドック」を受けてきました。「カンドック」じゃありません。それは「チャングム」の養父。
とくにがん検診に的をしぼった、画像診断を主体とする人間ドックです。 今回も病院に早く着きすぎましたが、前回と同じ轍は踏みません。読み物を持って行きましたから。 その『日本史真髄』(井沢元彦著)がすごく面白くて、待ち時間が短く感じるほどでした。 井沢氏の『逆説の日本史』数冊分を凝縮したような内容ですが、最新ネタも加えてあって面白い。 『逆説』を以前読んだとき、面白いけど少々回りくどいと感じましたが、『真髄』は簡潔ですね。 それを熟読する合間に、検査を受けたような、そんな1日でした。 大腸のCT検査は、内視鏡検査よりもずいぶん楽でした。なにしろ、飲まされる下剤の量が少ないのです。 もちろん、多少の下剤や、それに加えてバリウムをあらかじめ飲みますが、それはたいしたことありません。 撮影時に、お尻から炭酸ガスを注入されますが、まったく苦痛ではありません。 64列マルチスライスCTなので、撮影時間も秒単位。それを体位を変えて撮る。以上。 検診センターでは、各検査部署の窓口でいちいち、名前と生年月日を言わされます。本人確認のためです。 自分の名前と年齢が、周囲の待合室の人たちに丸聞こえなのは、人によってはイヤかもしれませんね。 下剤を飲む専用の部屋では、十数人の男女が、下剤を飲んだりトイレに行ったりを繰り返しています。 そこへ職員が巡回して、便の色や状態はどうだったかと訊いて回ります。それを答えるのも女性には酷ですね。 そうそう、名前の書かれたリストバンドを待合室で装着するのですが、スタッフが次のように尋ねました。 「お尻を拭くときはどちらの手を使われますか?」 邪魔にならないように反対側の腕に着けるのが目的なのでしょうけど、尻の拭き方まで周囲に丸わかりです。 「1回目は念入りに右手ですが、2回目からはサクッと左手で、最後の仕上げはやっぱり右ですかね」 なんて言ってやろうかと思ったけど、実際には、常識人として振る舞いました。 |
名医が買っている市販薬
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- 2018/07/30(Mon) -
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「名医20人が自分で買って飲んでいる『市販薬』実名リストを公開!」(週刊現代)
この手の週刊誌記事を鵜呑みにする方は少ないとは思いますが、ホント、非科学的で問題の多い記事ですね。 本来は読む気にもならないのですが、患者さんに尋ねられた時のために、目を通してみました。 某有名医師は「20歳くらいのときからバファリンAを安心して使っている」そうです。 ある1人の医師が、ある薬を「安心して」飲んでいるからといって、それに何の科学的根拠があるのでしょう。 しかしこのような「個人の意見」でも、特集を組んで記事にすれば、それなりの説得力が備わってしまいます。 バファリンAの成分は「アスピリン」。子どもには原則として飲ませられない薬です。 なのにどうして、「安心して飲める」という個人の意見を、そのまま記事に使うのでしょうね。 子どもが使える消炎鎮痛剤は「アセトアミノフェン」だけなのに。 ある医師は「単なる対症療法にすぎない(略)総合感冒薬は服用しないし薦めない」と言っています。 そんなことはわかってます。 しかし、根治療法だけが治療ではありません。対症療法でも、それが必要な状況なら行う価値はあります。 のどが痛くて物が食べられないとか骨折して激痛があるとき、鎮痛はあくまで対症療法ですが、有意義です。 「私の場合、効き目が強すぎても困るので、処方薬はなるべく使わず、市販薬を飲んでいます」という医者。 アホですか。処方を受けておきながらその薬は飲まないと、医者がもっともらしく語ってどうしますか。 効き目が強すぎるのならその処方が悪いだけ。処方医との意思の疎通ができてない証でしょう。 こう考えてみると、「医者の個人的意見」というのが、いちばん有害な情報ですね。 |
鰯の頭も信心から
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- 2018/07/27(Fri) -
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『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』(津川友介著)という本を、映画館の帰りに買いました。
たぶん、すごくいい本です。ちょっと読んだだけで、ピンときます。 ただ、まだやっと3ページ目まで読んだところなのですが、ちょっと気になるフレーズで引っかかっています。 「もう『○○だけ食べていれば健康になれる』といった類のあやしい健康本を購入する気にはならなくなる」 いや、私もかつて「ブロッコリー本」に荷担したことがありますが、怪しいことを書いたつもりはありません。 ブロッコリーのことを、面白おかしく紹介しただけです。たまにブロッコリー食べてみてはどうですか、的に。 だいいち、「ブロッコリーだけ食べていれば健康になれる」みたいなアホなことは、誰も考えてないでしょう。 せいぜい、「ブロッコリーも時々食べたらいいかもね」ぐらいの受け止めでしょう、今どきの読者は。 「ブロッコリーを続けると、何かいいことがありますか」という質問を、ときどき受けます。 「1年続けたら習慣になり、3年続けたらもう止められませんよ」と応えたくなりますが、そうは言いません。 当ブログと同じで、ある程度続けてると止めようにも止められなくなります。中断するのがもったいないから。 続けてること自体に満足してしまうのです。だからそれは、ブロッコリーでなくても何でもいいのです。 自己満足も捨てたモノじゃありませんよ。たぶん良いホルモンが出ますから。 巷の健康本にもそんな面があるのです。信じて読めば、それなりに効果はありますよ、きっと。 |
行事と熱中症
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- 2018/07/18(Wed) -
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今日も熱中症の子どもたちが多数、救急搬送されたと報じられました。
宮城県名取市の小学校で、朝9時から9時半の間に、校庭で人文字を作ろうとしていた児童たちです。 校長は「ちょっと長かった」と反省の弁。たった30分でも、長いと感じるほどの暑さだったのでしょう。 この事件を聞いて、現場の大人たち(教諭・校長・教育委員会など)を非難するのは簡単です。 どうしてもっと早く行事を中止しなかったのかと、あとでなら誰でも言えます。 しかし今回は、市制60周年記念の市内全校の統一行事であり、児童たちの写真が記念に残るものです。 まだそれほど気温が上がらない朝のうちに、ささっと済ませたい、という校長たちの気持ちもわかります。 逆に、安全面を考慮して早めに行事を中止したら、中止する必要はあったのかと、あとで必ず苦情が出ます。 早めに手を打って事なきを得たとき、その英断はなかなか理解されず、むしろ非難の的になりかねません。 これは防災のときでも同じ。災害を未然に防げたかどうかは立証が難しく、なかなか評価されないものです。 昨日の豊田市の、気温33度下での校外学習後に熱中症で亡くなった小学生の件は、たしかに手遅れでした。 しかし今日のケースは、児童たちの安全に配慮しながら注意して行ったので、重症者は出ませんでした。 この件を非難するというのであれば、この時期の野外活動は全面禁止にしなければなりません。 高校野球でも、実は全国で熱中症患者が出ているそうです。では、気温の高い日は必ず試合を延期するのか。 2年後の7月24日から開催される東京オリンピック。いくら気温が高くても日程は変更しないでしょう。 たしかにトップアスリートは鍛え方が違うかもしれませんが、競技場や沿道の観衆の熱中症が心配です。 |
受動喫煙防止条例成立
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- 2018/06/28(Thu) -
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東京都の「受動喫煙防止条例」が、昨日成立しました。従業員を雇っている飲食店を原則禁煙とするものです。
これで国の「健康増進法改正案」というザル法が、都内ではまったく意味をなさなくなりました。 例の「排除」発言ですっかり株を下げた小池都知事ですが、少なくとも私は今回、少し見直しましたよ。 厚労省の原案を大幅に後退させてしまった自民党の先生方も、都内に居る限り、条例には従う義務があります。 国の中枢が自治体の条例に縛られるとは、まことに痛快。それに不満なら、首都を移転しますか。 条例では、教育施設での屋外喫煙所の設置不可という点が国の法案よりも圧倒的に厳しくて、すばらしい。 一方で、病院や大学や官公庁の屋外喫煙場所設置が可能になると言う点は、残念です。 官公庁に対して甘くしたのは、ギリギリの妥協点なのかもしれません。 喫煙する権利を主張する人がいます。たしかにニコチンは合法ドラッグなので、摂取するのは自由です。 そのような方には、ニコチンだけを自由に摂取できる方法があればいいのです。煙は不要。迷惑なだけです。 この際、ガムやパッチや錠剤によるニコチン摂取を、もっと積極的に広めたらどうなのでしょう。 周囲の人に迷惑さえかけなければ、ニコチン摂取はあくまで自己責任ですから。 |
沖縄の麻疹終息
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- 2018/06/15(Fri) -
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沖縄県から今週、麻しん終息宣言が出されました。沖縄の患者は全部で99人。この程度で済んで良かった。
最後の患者が発生した5月11日以降4週間、新たな発生がなかったようです。 ただし、名古屋や福岡ではまだ発生しているので、全国的には終息していません。 それ以外の地域でも、今後新たに感染・流行が起きるかもしれません。油断はできません。 日本における現在の麻疹は、海外で感染した外国人または日本人が国内に持ち込んで、感染が広がります。 なので沖縄だって、今後また持ち込まれたら、麻しんが流行するかというと、必ずしもそうではありません。 今回の流行を機に、沖縄県内のワクチン接種が積極的に推奨・助成されたからです。 地域のワクチン接種率が95%になると、流行が阻止できるといわれます。これを「集団免疫」といいます。 個人的な理由(病気や信念)によってワクチンを接種しない人がいても、その割合が5%以下なら大丈夫。 ワクチンを接種しなかった人も、感染症から守られるのです。 ところで、沖縄県の保険医療部長による「患者発生状況の概要」に、以下のような記載がありました。 「初発患者は外国人観光客であり、はしかに罹患した状態で3月17日に来沖し、その後(以下略)」 「来沖」って言うんだ、というのが最初の感想。 熊本に来るという意味の「来熊」は、2000年に熊本に引っ越してくるまで、聞いたことがありませんでした。 驚いたのはその読み。「らいゆう」です。「熊」を音読みで「ゆう」と読むことを初めて知りました。 さて「来沖」です。当然、音読みで「らいちゅう」だろうと思ったら、一般的には「らいおき」らしいですね。 「来○」で重箱読みするケースには、長崎の「来崎(らいさき)」もあるようです。「来長」の方がいいのに。 熊本の「来熊(らいゆう)」は「来遊」にも通じるので、観光県としての熊本には、ピッタリかもしれません。 |
敷地内禁煙
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- 2018/06/11(Mon) -
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禁煙外来を行っている当院は、当然、「敷地内禁煙」です。
しかしそのように掲示していても、毎朝掃除のときに、駐車場の片隅でタバコの吸い殻を数本発見します。 診察をお待たせしたのは申し訳ありませんが、敷地内禁煙なので、せめて自分の車で吸ってほしいものです。 そして吸い殻は、車の灰皿に入れていただきたい。 そんなことは常識的なマナーだと思うのですが、(一部の)喫煙者は、吸い殻をポイ捨てするんですよね。 マナー違反が喫煙者のごく一部だとしても、その不快な行為が、喫煙者全体を嫌悪させることになるのです。 いま、受動喫煙を防止するための法案が議論されていますが、ポイ捨てについても厳しく規制してもらいたい。 たばこは、たとえば小さな子どもが誤食したら、急性ニコチン中毒で致命的な結果をもたらす場合があります。 胃酸があるので吸収されにくく、意外と安全だという理屈もありますが、それは楽観的です。 同時に摂った飲食物等の影響によっては、ニコチンが急速に吸収されてしまう可能性を考慮すべきです。 つまり、たばこは毒薬。吸い殻のポイ捨ては、毒物を公共の場所に遺棄・放置することなのです。 年に1回か2回、自宅で子どもがたばこを食べてしまった、という親御さんからの電話相談を受けます。 お子さんのために、迅速かつ適切な対応をするのは医者として当然としても、心底ガッカリする話です。 たばこの管理が悪かったと親はしきりに反省しますが、子どものいる家庭での喫煙自体が犯罪行為なのです。 「従業員のいる飲食店は原則禁煙」という、国よりもずっと進んだ姿勢を、東京都の条例案では示しています。 それが、未成年を含む非喫煙者従業員を保護する目的であるのなら、もっと踏み込んでみてはどうでしょう。 「未成年者のいる家庭では原則禁煙」 子どもを受動喫煙や誤食の危険から守ることが、街中での受動喫煙対策よりもよっぽど大事だと思うのですが。 |
アイコスの余計なお世話
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- 2018/05/21(Mon) -
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なかなか禁煙できない方に、禁煙補助薬による治療をお勧めするのですが、たいてい反応がよくありません。
当院の禁煙外来は自分の意志で受診する方が多く、私が勧めた方はなかなか治療に踏み切ってくれません。 自ら進んで禁煙したいのであって、人に言われるのはイヤ。そんな天の邪鬼な気持ちがあるのでしょうか。 「勉強しなさい」と母親に叱責され、「今やろうと思ったのに。もう勉強せん!」と言う子どもに似ています。 「アイコスに変えましたから」と、禁煙が半分成功しているかのように言う方にも、よく出会います。 アイコスを始めたけど、紙巻きたばこも「併用」していて、合計本数はむしろ増えている方もいます。 シンガポールやタイに紙巻きたばこは持ち込めますが、電子たばこや加熱式は持ち込みが禁止されています。 私にはその理由がよくわかりませんが、これらの国では、アイコスを所有しているだけで厳しく罰せられます。 紙巻きよりも環境や健康への害が少なそうに見えることが逆に良くない、という理屈なのかもしれません。 アイコスが「IoTデバイス」であることが最近も報じられ、むしろ私にはそのことが恐ろしく感じました。 ユーザーの喫煙状況データが、アイコスの内臓チップによって収集され、フィリップモリスへ送信されるとか。 そのデータを受けたフィリップモリスは、例えばユーザーに対して次のようなメッセージを届けるそうです。 「今日はアイコスを使ってないようですが、禁煙したのですか、それとも紙巻に戻ってしまったのですか」 まったく余計なお世話です。禁煙しかけている人に、アイコスの存在を思い出させる効果しかないでしょう。 |
福岡で麻疹9人
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- 2018/05/16(Wed) -
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福岡県内でも、昨日までに9人の麻疹患者が確認され、県からプレスリリースが出ています。
熊本から見て、沖縄はまだ「海外」でしたが、福岡は「隣県」。ずいぶん近づいてきました。 その9人の患者のプロフィールを見ると、問題点がいくつか浮き彫りになります。 1例目の方の情報は非公表なので、詳細不明ですが、二次感染はないとされています。 福岡での発端者は、実質的に2例目の20代男性です。沖縄を含む流行地への旅行歴はなく、感染場所が不明。 その後の3例目から9例目までの7人が全員、2例目の方との接触が疑われています。 麻疹の流行において、いつも気になるのは、患者の年代とワクチン接種歴です。 福岡の2例目から9例目までの8人のうち、成人は5人、小児は3人(0歳2カ月、3歳、10歳)でした。 成人5人の全員が、ワクチン接種歴1回または不明の方です。過去のワクチン行政の不備が悔やまれます。 この年代の方を感染から守るためには、接種歴2回未満の方へのワクチン接種を行うしかありません。 もっと問題なのは、3人のお子さんです。全員、MRワクチンの接種歴がありませんでした。 0歳2カ月のお子さんは、もともとMRワクチンの接種が想定されていない年齢層で、どうしようもありません。 3歳のお子さんは、1歳の時に定期接種の機会があるのに、MRワクチンを接種していませんでした。 10歳のお子さんに至っては、MRワクチン定期接種の1期も2期も受けていなかったということになります。 どうして定期接種を受けないのでしょう。健康問題や家庭環境など、さまざまな点が心配になります。 当院受診者の中にも、定期予防接種歴がまるっと抜けているお子さんに、ときどき遭遇します。 確固たる信念を持って接種を受けない方など、めったにいません。ほとんどは、認識不足によるものです。 その原因は、行政の啓蒙不足です。もちろん、医療機関にも責任はあります。 麻疹の流行が話題になっているいまこそ、予防接種全体の啓蒙活動を進めるためには大事な機会でしょう。 |
人生100年時代
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- 2018/05/08(Tue) -
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「人生100年時代」の到来については、だいぶ前から議論されていますが、いつもホットな話題です。
平成28年簡易生命表によると、日本人の平均寿命は、男が80.98年、女が87.14年でした。 私はいま、57.5歳。平均余命は約25.8年なので、平均的には83.3歳まで生きる計算になります。 でもってその83歳になると平均余命はまだ7.3年あり、90歳になっても4.3年、94歳でも3.1年残っています。 さらに97歳になっても2.4年、99歳で2.1年、101歳でも1.7年の余命が残っています。 まるでアキレスと亀のように、余命まで生きたらまた次の余命があり、際限なく生き続けていくのです。 先月、世界最高齢だった鹿児島県喜界島の田島ナビさんが、117歳8カ月で亡くなりました。 19世紀最後の年(1900年)から今世紀まで、足かけ3世紀生きた方でした。 足かけ3世紀生きた有名人と言えば、英国のトーマス・パーでしょう。愛称「オールドパー」で知られます。 152歳まで生きたというのは伝説だとしても、当時(15〜17世紀)としてはかなり長生きした人物のはず。 彼にちなんで名づけられたスコッチウイスキー(ブレンデッド)は、かつて私のお気に入りでした。 最近は、ウイスキーはその個性的な香りが重要なのだと思って、私はシングルモルト中心に飲んできました。 しかしたまに、安らぎを求めてオールドパーを飲むと、そのバランスの良い深い味わいの広がりに、驚きます。 長寿社会で大事なのは、晩年の心身が健康であるかどうかです。 平均寿命と健康寿命の差は、男は8.8年、女は12.4年だといいます。女性でとくに長いのが私には意外です。 いやそれとも、男は健康問題を抱えたら一気に弱っていく、と解釈できるのかもしれません。 やがて人生100年が当たり前になるとしても、QOLの低下した晩年が長くなるだけでは、暗い未来ですね。 |
沖縄の麻疹90人
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- 2018/05/07(Mon) -
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沖縄での麻疹患者は、合計90人になりました。5月1日〜3日の間に新たに確認された麻疹患者は8人です。
沖縄県地域保健課は、連休中も麻疹の疑い患者の精密検査を行っているようです。ご苦労さまです。 愛知県など、沖縄県外での発生患者も含めると、現在確定している3月以降の国内の麻疹患者数は123人です。 発端者の台湾人男性が沖縄を訪れたのは、3/17のことでした。 沖縄県の集計表を見ると、発端者から感染したいわゆる「一次感染者」は、3/25から症状が出始めています。 つまりこのケースでは、潜伏期は8日でした。教科書的には10〜12日とされているので、8日とは驚きます。 家庭内感染した宜野湾市の3歳女児が、4月2日に発症しています。この子が最初の「二次感染者」でしょう。 その子の感染源は、3/25に発症した一次感染者の6歳男児であろうと推測します。 となると、やはり潜伏期は8日か、兄の発症の前日から感染力があったとしても9日です。短いですね。 麻疹は、発熱の前日、発疹が出る数日前から感染力があり、発疹が消えて平熱になっても感染力が続きます。 まだ無症状なのに麻疹が感染するというのが、この病気の拡散を防ぐ上で、とても難しい点です。 しかも潜伏期は、8〜14日程度の幅をもって考えなければなりません。 いま、熊本ではインフルエンザが局所的に流行していますが、麻疹への警戒も怠るわけにはいきません。 また、ワクチンの接種を希望される方には、1日も早く接種をしてあげるのが、医療機関の務めです。 成人はもちろん、0歳児や、第2期接種を待ちきれない3,4歳児などにも、当院では接種を行っています。 熊本では絶対に麻疹を流行させない。その意気込みで、予防接種希望者は誰も断らないのが、当院の姿勢です。 |
喫煙習慣の拡散
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- 2018/04/28(Sat) -
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「大人の何%がたばこを吸っていると思うか」
中学生にアンケートをとったら、「男性の6割・女性の4割が喫煙者」だと誤解していた、という調査結果。 静岡の保健所長が、先週開催された日本小児科学会で発表しました。 残念ながら、私はその学会に参加できず詳細がわからないので、以下は、推測を交えて書き進めます。 コンビニ等でたばこを目にする機会が多いことなどが誤解を招いているのではないか、と分析されています。 男性の90%が吸っていると回答した生徒もいたらしいので、喫煙者が目に付くことは間違いないでしょう。 男性の6割・女性の4割というのは、中学生からみた、いわば「体感喫煙率」と考えるべきかもしれません。 目の前でたばこを吸っている大人は当然、喫煙者ですが、いま喫煙していなくても非喫煙者とは限りません。 電車やバスの乗客は誰も喫煙していませんが、その人たちの中には喫煙を我慢している人だっているはずです。 そのような「想像」も含めると、周りの大人の多くが、喫煙者に思えてしまうのかもしれません。 たばこは、自分の趣味や嗜好の目的で吸い始めるというよりも、最初は興味や勧誘がきっかけでしょう。 若者の周囲の喫煙率が高いと、やがて喫煙を始める可能性も高くなるだろうと推測できます。 現に、雀荘にもパチンコ店にも入り浸ることがなかった私には、ついに喫煙習慣が付かずに済みました。 同様に、いったん喫煙を始めた者が禁煙に成功するかどうかにも、周囲の環境の影響が大きいと思います。 社会の喫煙者の分布には「濃淡」があり、喫煙率が日本の平均値よりもはるかに高い集団が存在します。 そのような職場の喫煙者は、個人的には禁煙の意志はあっても、実際にはなかなか成功しません。 当院の禁煙外来で禁煙に成功した方が、後に喫煙を再開してしまうのは、たいてい同僚との飲み会からです。 禁煙しきれない者が、禁煙に成功していた同僚を、悪の道にそそのかすのです。 受動喫煙の問題も重要ですが、若者に喫煙習慣を拡散させない方策の方が、長期的にはより重要でしょう。 |
私は重度の柑皮症
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- 2018/04/09(Mon) -
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「黄疸が出たのですが」と、皮膚の色を心配して当院に来られる方のほぼ全員が、「柑皮症」です。
ミカンなど、カロテンを多く含む食物の摂り過ぎなどが原因で、手のひらなどが黄色になった状態です。 もちろんたまには本物の黄疸の方も来られます。たいていは胆道系の病気ですが、当院ではとても稀なこと。 逆に勤務医時代には多くの黄疸患者を診てきましたが、柑皮症患者の診療を行うことなどありませんでした。 黄疸の場合は眼球結膜(白目)が黄色になりますが、柑皮症では白いままです。両者は明確に区別できます。 「白目が黄色くないので黄疸ではないですよ」と説明すると、おおむね納得されます。 それでも心配な方には、私の両手を見せます。私の手掌の方が、間違いなく、よほど黄色いからです。 この数年、私よりも黄色い手の方にお目にかかったことがありません。 原因はわかっています。毎朝欠かさずに飲んでいる野菜ジュースです。トマトと人参がたっぷりのやつ。 さらに緑黄色野菜でも柑皮症になるそうで、ならば毎晩1株食べているブロッコリーも原因の一つでしょう。 「トマトが赤くなると医者が青くなる」などと言いますが、私の場合は黄色くなりました。 柑皮症は、原因の食品の過剰摂取をやめれば、自然に数か月のうちに改善すると言われています。 私もいちど、本当に改善するのか調べるために、食生活を抜本的に見直そうかと思ったことがあります。 しかし、やめました(見直すことをやめました)。 野菜ジュースは美味しくて飲んでるわけじゃないし、ブロッコリーなんて、どちらかと言えばマズい。 ほとんど惰性で摂取しているので、何カ月も中断したら、もう再開できなくなるような気がするのです。 |
春ときどきPET
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- 2018/03/20(Tue) -
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約2年ぶりに「PET-CT検査」を受けてきました。愛犬の精密検査ではなく、自分のがん検診の一環です。
前回は、熊本地震から復旧したばかりの、日赤の健康管理センターで検査しました。前々回も日赤です。 ところが1年前に、日赤のPET-CT診断センターは業務を止めたので、今回は済生会病院に行きました。 まず、菊陽から行くには少々遠いですね、済生会。 遅刻しないように早めに家を出たら、早く着きすぎました。とにかく、待ち時間ばかりの1日でした。 (1)受付前で、1時間待つ (2)血液検査などの予備検査 (3)PET検査室の前で、1時間待つ (4)説明を受けた後、ブドウ糖に似た「FDG」に放射性同位元素「フッ素18」をつけた薬剤を注射 (5)FDGが全身にいきわたり、もしもがん細胞があればそこに集まるのを、1時間ほど安静にして待つ (6)スキャナーの中に入り、約30分かけて陽電子放出断層撮影(Positron Emission Tomography)する (7)また安静にして1時間待つ (8)食事 (9)1時間待つ (10)結果説明 読み物(文庫本)を持って行くのを忘れたので、(1)と(3)と(9)は雑誌熟読でしのぎました。 PET検査中の(5)と(7)は、読書もスマホも音楽も禁止なので、ボーッと寝てるしかありません。 フッ素18の半減期は110分。明朝には、私から出る放射線量は2800分の1以下になってますので、ご安心を。 |
インフルの次は胃腸炎?
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- 2018/03/03(Sat) -
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第8週(2/19-25)の定点当たりインフルエンザ観測数は、全国22.64、熊本県19.00、熊本市15.60でした。
いずれも前週より減っていますが、とくに流行の早かった熊本では、全国に先駆けて終息に向かっています。 そのかわり、いま目立って増えているのが感染性胃腸炎です。 今シーズンのインフルエンザは胃腸炎症状を伴うケースが多いので、よけいややこしくなります。 胃腸炎で困るのは、乳幼児の脱水症や年長児などの低血糖症状と、家族内で感染を広げやすいことです。 便のウイルス検査をすることもありますが、ウイルスが検出されたからと言って、治療法は変わりません。 この時期、食中毒はあまりないので、たいていは、ウイルス性と決めつけて対症療法あるのみです。 そうはいっても、とくに年長児や成人の場合には、発症の数日前に食べた食事内容をいちおう尋ねます。 ノロウイルスのように、潜伏期が1日、2日のものもあれば、O157のように1週間近いものもあるのです。 思い当たるものは無いという方でも、よくよく尋ねると、鳥刺しやBBQなどを思い出してくれたりします。 外食後に胃腸炎を発症した方が、同じ店で食べた友人も2,3人同じ症状だと言う場合は、保健所に連絡です。 これまでに3,4回、そのような連絡をした記憶があります。有名な某居酒屋チェーン店もありました。 国際線の旅客機では、機長と副操縦士が、機内食で別メニューを食べることはよく知られています。 万一の食中毒に備えて、2人がともに発病するリスクを考慮したものです。 でも、その万一が起きた時、ヘタしたら、乗客の約半分が胃腸炎を発症するわけですよね。こりゃ大変。 考えただけで修羅場です。トイレは足りるのか。 機内食の調理等には厳しい衛生管理をしているとは思いますが、くれぐれもしっかり、お願いします。 |
節煙は無意味か
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- 2018/02/26(Mon) -
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禁煙指導のキモは「完全禁煙」であって「節煙」ではないことは、よく知られていることです。
喫煙本数と喫煙リスクは、必ずしも比例しないからです。 ある研究によれば、心筋梗塞や脳卒中のリスクは、1日1本吸うだけでも1日20本喫煙の4割程度あるとのこと。 毎日の喫煙本数を20本から1本に減らしたところで、完全禁煙に比べれば五十歩百歩だというわけです。 ある記事によると、「禁煙でやってはいけないこと」と称して、以下の4点が提示されていました。 ・だんだんと減らそうとすること ・軽いたばこに変えること ・加熱式たばこ、電子たばこに変えること ・「1本くらいなら」と甘くみること 理解できる考え方ですが、しかし私は異を唱えたい。少なくとも、だんだん減らすことには意味があります。 禁煙外来では完全禁煙を指導するわけですが、そうすると脱落する人が出てきます。 「目標は0本ですが、とりあえず5本まで減らしましょうか」ぐらいのハードルの低さも大事です。 節煙すれば、まず発がんリスクが減ります。受動喫煙も減らせます。禁煙の意志を周囲にアピールできます。 医療現場での実体に即せば、理想を目指すよりもまず、一歩前進の方が重要です。 いきなり完全禁煙できる人ばかりではありません。禁煙外来も、人それぞれの対応でいいじゃないですか。 |
頭痛の日
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- 2018/02/22(Thu) -
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2月22日は「頭痛の日」だそうですね。知りませんでした。今日知りました。
これがあと4年後だと、2022年2月22日で、さらに2が並びます。「頭痛が痛い日」とでも言いましょうか。 さらに2222年2月22日ともなると、「頭の頭痛が痛い日」ぐらいの勢いですね。(ふざけてすみません) 「日本頭痛協会」と「日本頭痛学会」が、「片頭痛を予防しよう」という啓発ポスターを作っています。 ただ、そのポスターに描かれているモデルが外国人(っぽい)女性なのが、どうしても気になります。 日本の団体が作成したポスターじゃないんですかね。もしかして、国際団体のポスターからの流用? でも少なくとも、2月22日を頭痛に結びつける国って、日本だけですよね。 過去の啓発ポスターを見たら、2013年以降ずっと、外国人(っぽい)女性がモデルじゃないですか。 「頭痛=外国人女性」という固定観念でもあるのでしょうか。それとも、協会代表者の趣味? 「頭痛の日」にするのなら2月2日の方がしっくりきますが、その日はかつて、存在していました。 ジョンソン・エンド・ジョンソンが2001年に制定したけども、翌年には廃れたという幻の「頭痛の日」です。 その、メーカーが制定したのと同じ日を使うのがためらわれたために、2月22日が選ばれたのかもしれません。 「22」の部分で「頭痛」と読むのであれば、2月でなくても構わない気がします。毎月22日は頭痛の日です。 「片頭痛」は、その前兆として、「閃輝暗点」と呼ばれる視野の異常が現れる場合があります。 私は頭痛持ちではありませんが、仕事中にいちど閃輝暗点を見たことがあります。 突然視界に、アルミホイルを弧状の短冊にしたようなものが、チンアナゴのように、ニュッと出てきたのです。 最初は驚き、戸惑ったものの、それが生まれて初めての閃輝暗点だと気づき、その後の片頭痛を待ちました。 待ちましたが頭痛は起きず、むしろ脳梗塞じゃないかと不安になり、後日脳外科でMRI検査を受けたのでした。 もちろん、脳には異常なし。その後2年ぐらい経ちますが、いまだにチンアナゴには再会できてません。 |
喫煙者の医療保険
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- 2018/01/30(Tue) -
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米国では、喫煙の年齢制限を21歳以上に引き上げる州が増えつつあるようです。
若い頃に試しに喫煙した者は、たいていそのまま習慣的な喫煙者になるともいわれます。 つまり、若者にはできるだけ、喫煙の機会を与えないことが大事だということになります。 その意味で、喫煙年齢の引き上げは、喫煙者を減らすための有効な手段かもしれません。 隠れて吸う若者もいるでしょうけど、法的に規制されていれば、ある程度は抑止できるでしょう。 一方でわが国には、喫煙年齢制限を「実情に合わせて」引き下げようかと、バカなことを言う人がいます。 私も若い頃に(何歳かは忘れましたが)、何本か吸ったことがありますが、幸い習慣にはなりませんでした。 たぶん、喫煙した場所(パチンコ店や雀荘等)になじめなかったのでしょう(パチンコも麻雀も下手だった)。 パチンコや麻雀が上手かったら、私の人生(健康状態を含む)も変わったかもしれません。 タバコが原因で起きるさまざまな疾患の治療に対して、非喫煙者と同等に保険が利くのは釈然としませんね。 喫煙者の医療保険の自己負担額を増やすとか、何か差別化を図るべきでしょう。 喫煙に関連した疾患・病状であることが統計学的・疫学的に認められたら、窓口負担割合を増やす、とか。 その際の自己負担増を補償するために、喫煙者専用の医療保険制度を作ってみたらどうでしょう。 保険料はタバコ代に含んでおけば、すべての喫煙者を被保険者にすることができます。「喫煙者皆保険」です。 タバコ代は、保険料のぶん値上げです。喫煙者は、喫煙本数に比例して保険料を負担することになります。 この制度、いいなあ。厚労省と財務省とJTでよく検討してみてください。 |
ストレスと疾患
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- 2018/01/20(Sat) -
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「ストレスが高いと長期的に感じている男性は、そうでない男性に比べがんにかかるリスクが高まる」
国立がん研究センターが国内で行った、長期間の大規模な観察型研究の結果が、最近公表されました。 40〜69歳の約10万人を約20年間追跡して、「自覚的ストレス」と「がん罹患」との関連を調べたものです。 「日常あなたの受けるストレスは多いと思われますか? 」 この質問に対して、少ない、普通、多い、という3つのストレスレベルを選択させ、5年後に比較しています。 その結果、持続的に高ストレス、または5年間でストレスが高まった者で、がん罹患リスクが増加しました。 とくに男性で強く認めました。メカニズムは不明ですが、ストレスによる免疫機能の低下も考えられています。 ところで、生活習慣病の場合には、ずっと以前からストレスとの関連が指摘されています。 血圧や血糖値が悪化したり、体重が急に増えた人には、私はいつも診察しながらお決まりの質問をします。 「最近、ストレスはありませんか」「あるんです」「やはりそうですか」「そうなんですよ」「ですよね」 言ってみれば、「最近、寒いですねぇ」「寒いですね」「ですね」みたいな、当たり障りのない会話です。 しかしそのような世間話をきっかけにして、やや深刻な問題が見つかることもあり、問診はやはり重要です。 たまに、「ストレスありませんか」と尋ねると、キッパリ「ないですね」と応える方もいて、逆に驚きます。 本人はそうだとしても、周囲の家族のストレスはどうなんだろうと思うケースも、しばしば見受けますけどね。 あ、私のことだったりして。 |
加熱式は禁煙にあらず
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- 2018/01/03(Wed) -
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元旦から禁煙している方へ。それが3日坊主にならないための方法はただ1つ。決して1本も吸わないことです。
昨年から「非燃焼・加熱式タバコ」が問題視され、日本呼吸器学会など各種団体が、その害を警告しています。 前にも書いたように、加熱式タバコでも、喫煙者の健康には悪影響があるし、受動喫煙の可能性もあります。 ところが、喫煙者にも周囲の人間にも、そのような認識が不足していることが問題なのです。 受動喫煙についてはとくに、東京五輪との兼ね合いもあって、近年社会問題化しています。 喫煙者自身の健康問題よりも、受動喫煙の問題の方がクローズアップされているのは、新しい傾向です。 そのためか、周囲に煙をまき散らさない加熱式タバコへのシフトが加速しているように感じます。 実際はPM2.5を含むエアロゾルが拡散する加熱式タバコですが、目に見えない分、気にならないのでしょう。 私の外来を訪れる生活習慣病の方にも、紙巻きタバコを加熱式に切り替えた方が目立ちます。 気になるのは、当院の禁煙外来受診者が激減していることです。 昨年、禁煙外来を新たに受診した方は20人でした。一昨年までの7年間は、年平均39.4人だったのにです。 加熱式に切り替えることで少し安心して、禁煙する意識が薄れてしまった方がいるのかもしれません。 しかし加熱式でも、ニコチンをガッツリ吸い続けることになります。「ニコチン依存症」は治りません。 加熱式タバコが発売されたばっかりに、喫煙率の減少傾向が鈍化しないかと心配です。 |
ビワのタネは危険
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- 2017/12/08(Fri) -
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「ビワの種子の粉末は食べないようにしましょう」
農水省から、こんなお知らせが出ました。ビワの種子を粉末にした食品から、有害物質が検出されています。 アーモンドや梅のタネの毒性については、前にも書きましたが、ビワも同系列の植物なんですね。 「アミグダリン」という成分がそれらの毒性の元であり、腸内で分解されると猛毒の青酸が生じるとのこと。 ところがこれが健康食品のように扱われ、ネットではビワのタネを使ったレシピも掲載されているそうです。 ググってみたら、ビワ種粉末の通販ってすごく盛況ですね。 アミグダリン=ビタミンB17だと書いているサイトもありますが、これは誤りです。 ネットの情報がいい加減なのは周知の事実ですが、鵜呑みにすると健康を脅かしかねません。 ビワといえば、屋敷にビワの木を植えたら病人が出る、なんて話を、むかし聞いたことがあります。 もちろん迷信ですが、迷信は迷信なりに、しばしばその根拠となる理屈があります。 たとえば、ビワの薬効を求めてケガ人や病人が集まって来る、なんてのもそのひとつ。 若い頃にバイトに行ってた某病院の入り口にも、立派なビワの木が植えられていたことを思い出します。 あれって、病院における招き猫のような意味合いで、わざと植えてたんでしょうかね。 |
抗インフル薬注意喚起
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- 2017/11/27(Mon) -
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「抗インフルエンザウイルス薬の使用上の注意に関する注意喚起の徹底について」
厚労省は今日、このような通知を出しました。 以前から問題となっている、抗インフルエンザウイルス薬投与後の異常行動の発現についての、注意喚起です。 この異常行動は薬を服用していない子でも見られており、インフルエンザよる熱せん妄と考えられています。 そのことをわかっている厚労省ですが、自分たちがタミフルに濡れ衣を着せたことは認めません。そのかわり、 「抗インフルエンザウイルス薬の種類や服用の有無によらず」注意喚起を徹底せよと言っています。 タミフルは無実とは言わないけれど、タミフル以外にも原因を拡大して、なんとなくウヤムヤにする作戦です。 「具体的な注意喚起の例」として厚労省の通知では、転落防止等を考慮して、以下の2項目をあげています。 (1)高層階の住居においては(略)ベランダに面していない部屋で療養を行わせること (2)一戸建てに住んでいる場合は(略)出来る限り1 階で療養を行わせること どうでもいいとは言いませんが、なんかスケールの小さな、本質を見失った通知に思えてなりません。 もうそろそろ、異常行動はタミフルのせいではありませんでしたっ!、と明言してもらえませんかね。 なぜなら現実には、異常行動の原因はタミフルだと思い込んでいる患者さんが、いまだに多いのです。 裏を返せばそれが、タミフルさえ飲まなければ異常行動の心配はない、という誤解につながっています。 タミフルだけが10代への処方が禁止されていることが、問題の根源ですが、いつ解禁されるのでしょうね。 誤って止めてしまったタミフルを、まだ再開できずにいる厚労省の姿は、HPVワクチンの場合と同じです。 |
受動喫煙防止ザル法案
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- 2017/11/17(Fri) -
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「モリカケ」問題がどう決着するのかと思ってたら、こんどは「ザル」ですか。
受動喫煙防止策は結局、店舗面積150平方メートル以下の飲食店での喫煙を認める法案に決着しそうですね。 「健康増進法」という名称が、ギャグにしか思えません。 当初の厚労省案の「30平方メートル以下」から比べると大幅な後退だ、なんて言う意見が出ています。 しかし私に言わせれば、30だって甘い。喫煙できるのは個人宅だけ、ぐらいの規制でもいいぐらいです。 国に対抗して、東京都がどのような条例をぶつけてくるのかが見物ですが、いまとなっては期待薄ですね。 小池都知事の勢いは、すっかり消沈してしまいました。都議会公明党の全面的協力を得るのも、難しそうです。 公明党は「知事とは一線を画し是々非々で判断する」と言っています。ここはぜひ「是」としてもらいたい。 東京都福祉保健局は今年9月に、「東京都受動喫煙防止条例(仮称)の基本的な考え方」を公表しました。 それによると、飲食店、百貨店、事業所、駅、空港なども原則屋内禁煙という、なかなか厳しい内容です。 例外は、面積30平方メートル以下のバー・スナックで、従業員が同意し、未成年を立ち入らせない場合だと。 また、一定要件を満たした「喫煙専用室」の設置は認めるようで、煙や臭いの流出がどのぐらい防げるのやら。 いっそのこと、街中のところどころに、「阿片窟」のような愛煙家専用バーを作ったらどうでしょう。 喫煙者を追いやらずに、むしろ集めるわけですよ。都営の「喫煙所」を、あちこちに配置してもいい。 なんなら、タバコを焚いて部屋中に煙を充満させた「受動喫煙所」なんてのを作ってもいいかもしれません。 |
加熱式タバコ問題
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- 2017/10/29(Sun) -
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「加熱式タバコ」が広まりつつありますが、その問題点について啓発する動きも、このところ活発です。
当院でも禁煙外来を行っており、加熱式タバコについての理解を深めるための院内勉強会を、先月行いました。 禁煙外来には、紙巻きタバコと加熱式を併用している方が、時々いらっしゃいます。 喫煙本数としては、どのようにカウントすればいいのでしょうね。 喫煙には、喫煙者本人の健康問題と、周囲の人の健康問題(環境問題)があります。 煙の出ない加熱式に変えた方には、周囲には迷惑をかけないのだからいいだろう、という意識があります。 さらに言うなら自分の健康被害も、紙巻きタバコよりはマシだろうという思い(願い)があります。 いずれも誤解です。 加熱式タバコでも受動喫煙があります。煙が見えないのでそれを自覚しにくく、かえって危険かもしれません。 紙巻きタバコより健康被害が少ないと誤解することで、喫煙量がむしろ増えてしまうリスクさえあります。 「タバコはもう加熱式に変えましたよ」と、まるで禁煙が半分成功しているようにおっしゃる方が時々います。 これも大きな誤解です。実際には、禁煙のキの字にもなりません。まあ、言葉の上では禁「煙」ですけどね。 危険なモノは「見える化」して避けるべきなのに、加熱式タバコはそれを「見えない化」しているのです。 |
ポカリで熱中症対策?
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- 2017/08/11(Fri) -
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川崎市内の工事現場の、「熱中症対策自動販売機」と張り紙がされた、ポカリ1本50円の自販機が話題です。
ポカリ代金の差額は大和ハウスが負担しているそうで、名目は「熱中症対策費用」だとか。 中学生の時、下校中に山口県庁に立ち寄り、職員用自販機で10円のファンタを買ってたことを思い出します。 県庁職員の福利厚生としての格安飲料だったのでしょうけど、私がとがめられることはありませんでした。 それはさておき、ポカリです。熱中症対策として推奨されていますが、場合によっては危険な飲料です。 先日、ひどい熱中症で、全身熱痙攣を起こしている方が来院されました。 作業でひどく汗をかいた後に、発症したようです。熱中症としては最重症のIII度です。 救急車を呼ぶ時間がもったいないので、当院ですぐ点滴しました。病状は劇的に改善しました。 ここまで熱中症がひどくなった原因は、ポカリの飲み過ぎです。 汗には塩分が含まれます。日頃あまり汗をかかない人が急に発汗すると、とくに塩分が出やすいといわれます。 塩分を多量に喪失した時には、塩分を摂らなければなりませんが、大事なのは飲料の水と塩のバランスです。 塩分を失った人が、体液よりも塩分濃度の低い飲料を飲めば、からだの塩分濃度はますます薄まります。 残念ながらポカリは、体液よりもずっと塩分濃度の低い飲料です。飲めば飲むほど体の塩分濃度は低下します。 塩分濃度が下がると、体は水分が過剰と判断して利尿作用が働き、ますます脱水になるおそれがあります。 普通の発汗のときはポカリでも良いですが、ひどい発汗時にポカリを過信しては危険です。塩が足りません。 熱中症対策として、その治療にポカリが最適であるかのようなメディアの扱い方には、問題があります。 |
厚労省のダジャレ
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- 2017/07/27(Thu) -
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2年前にやっと「麻疹排除国」に認定されたばかりの日本ですが、麻疹は今なおたびたび集団発生しています。
その多くは、幕張メッセとか関西空港とかの例のように、海外で感染した方が日本に持ち込んだケース。 かつて「麻疹輸出国」と揶揄されていた日本が、いまは晴れて「麻疹輸入国」の仲間入りです。 などと冗談を言ってる場合ではなく、海外渡航者に対する麻疹予防の啓発が喫緊の課題となりました。 厚労省のキャッチコピーは、『マジンガーZ』とコラボして、「みんなで目指そう『麻しんがゼロ』」だと。 なるほど「麻しんがーゼロ → マジンガーZ」って、誰ですか、その苦しいダジャレを採用した責任者は。 今日からダウンロードできる、マジンガーZをフィーチャーしたポスターは、まあ悪くない仕上がりですけど。 それにしても最近の厚労省は、啓発ポスターのダジャレがひどすぎませんか。 たとえば、デング熱やジカウイルス感染症など、海外の蚊は意外に危険だという趣旨のポスターのコピーは、 「蚊意外にキケンあり」「キケンな蚊、どうする蚊?」 思わずズッコケながら、ポスターを詳しく見ると、さらに悪ノリしています。 「さされないために何ができる蚊?」「さされるとどんな病気にかかるの蚊?」 鳥インフルエンザ発生地域への旅行者に対する啓蒙ポスターでは、ニワトリやアヒルに近づかないようにと、 「鳥扱い注意」「海外での鳥扱い説明書」 あのね、厚労省の方。少々ふざけ過ぎ鳥ません蚊?(ありゃ、うつった) |
フレイル対策
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- 2017/07/17(Mon) -
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先月公表された、厚労省の「平成28年 国民生活基礎調査の概況」で「介護の状況」をみると、
「要支援」となった原因の第1位は「関節疾患」、2位が「高齢による衰弱」、3位「骨折・転倒」でした。 「要介護」となった原因の第1位は「認知症」で、2位は「脳卒中」、3位が「高齢による衰弱」でした。 「要支援」も「要介護」も、「高齢による衰弱」が主要な原因だったというのがポイントです。 ちなみに平成28年の「国民生活基礎調査」には、熊本県が含まれていません。 熊本県ではこの年、震災で調査どころではなかったのです。県内の介護認定も滞った年でした。 厚労省は「高齢者の虚弱(フレイル)に対する総合対策」を打ち出しましたが、その「フレイル」って何? お役人だけが悪いとは思いませんが、このようなカタカナ言葉を登場させられても、市民はピンときません。 「加齢とともに心身の活力が低下し、生活機能障害、要介護状態、死亡などの危険性が高くなった状態」 これが厚労省による「フレイル」の定義ですが、つまり簡単に言えば「老衰」のことですよね。 医学・医療が進歩し、がんでも心臓病でも脳卒中でも感染症でも、昔のようには死ななくなった。 人間は、その心身能力の限界まで生きるようになってきたわけで、その最終段階がフレイル(老衰)なのです。 後期高齢者の保健事業の在り方として、「フレイルの進行を予防する取組が重要」だと厚労省は言っています。 でも、たとえ老衰の進行を予防できたとしても、結局その先に待っているのは、老衰なんですけどね。 |
がん検診の見落とし報道
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- 2017/07/14(Fri) -
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青森県が行ったがん検診の調査検査を、NHKが大きく取り上げて、波紋を呼んでいます。
NHKは「胃がんと大腸がんでは、4割が見落とされていた可能性がある」などと報じました。 これに対して国立がん研究センターが、今回の調査では評価困難だととの声明を発表しました。 青森県がん情報サービスのサイトで調査結果をよく見てみると、ほぼNHKの誤報ですね。問題点は2つ。 (1)症例数が少なすぎる (2)観察期間が短すぎる これは青森県の責任ではありません。予備的調査として、10町村の検診結果をまとめてみただけなのです。 たとえば胃がん。ある1年間で見つかった胃がん患者は、全部で10人。 そのうち検診で要精査とされていたのが6人。あとの4人は精査不要と言われていた。だから見落とし4割だと。 たったの10人ですよ。この人数で、どれだけ正しい評価ができるというのでしょう。 調査対象の10町村の、それぞれの町村1つずつの結果を見ていくと、その問題がもっとはっきりします。 ある町(村)では、胃がん患者は1人だけ。この人は検診で要精査だったので、この町(村)は見落としゼロです。 一方で別の町(村)では、胃がん3人が全員、検診では精査不要との判定だったので、なんと見落とし10割です。 このように、少人数の患者の調査で、的中率だとか見落とし率だと言うこと自体、ナンセンスなのです。 せめて、がん患者100人単位で調べた結果なら、多少は統計学的に意味があるでしょうけどね。 もちろんこのことは青森県もわかっていて、やがて全県に広げるつもりの調査の、あくまで予備調査なのです。 ところがNHKはその数値の部分に食いついて、大きく報じたわけです。統計学的な思考が全く欠けています。 |
血圧人体実験
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- 2017/06/30(Fri) -
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ナイスじゃないカップ麺について、昨日書きましたが、塩分が多い食事を摂ると、ただちに血圧が上がるのか?
これは科学的に検証する必要があります。つまり、実験です。人体実験です。 そこで今晩、問題のカップ麺摂食前後の血圧、とくにスープを飲む前後の血圧を精密に測定してみました。 血圧は、オムロンの上腕式血圧計HEM-7600Tを使って、毎回2度計測してその平均値を測定値としました。 この血圧計は、測定値がBluetoothによってリアルタイムにiPhoneに送信され、記録・管理できます。 入浴後、ビールを2本飲み、地鶏焼きとカボチャコロッケと佐賀牛を食べ終わってから、実験開始です。 「カップヌードル ナイス 濃厚! ポーク しょう油」を、硬麺の状態で食べました。汁は全部飲みました。 まず、言いたい。塩辛いことこの上なし。カップの底に、濃厚な辛いスープが沈殿しており、のどが痛みます。 コクやうま味よりも、とにかく塩辛い。やっぱりダメでしょう、この味付けは。で、血圧は、 食前:116/73 → 麺食直後:108/68 → スープ飲んだ直後:101/62 → その30分後:108/70 めちゃ塩辛いスープを飲んだ直後は、血圧はむしろ下がっています。カーッとして、血管が拡張したのか。 その後、スコッチをロックで2杯飲み、1時間後に血圧を測ってみると、血圧はさらに下がって94/65。 食塩摂取による血圧上昇は、もっと後で起きるのでしょう。飲酒による血圧低下作用の方が強く現れています。 アルコールって、思いのほか血圧下げますね。飲酒後の入浴が危険なはずです。 |
サングラスで日焼け対策?
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- 2017/05/01(Mon) -
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今日から私はまた2連休。天気もいい。自転車を清掃・整備して、昼から近場を少し走ってみました。
半袖のポロシャツでちょうど良い気温と日差しでした。でもこんな日こそ、紫外線対策が必要なんでしょうね。 最近よく聞くのは、日焼け対策にはサングラスが有効、という話。 目が紫外線を感知すると、脳神経と内分泌を介して、皮膚のメラニン合成を促進するからだそうです。 その仕組みを逆手にとって、目に入る紫外線をブロックすることで皮膚の日焼けを防ごう、というわけです。 でも、そんなことしていいのでしょうか。 そもそも日焼けは、皮膚細胞のDNAが紫外線の影響を受けにくくするための、防御反応のはず。 メラニン色素は、紫外線が皮膚に深く入り込んでいくのをブロックする、バリアーじゃないのですか。 日焼けは、体に備わっている紫外線対策(発がん対策)ではないのですか。 サングラスを着用すれば、目そのものを紫外線から守ることはできます。 しかし皮膚を紫外線から守るためには、日傘や衣類や日焼け止めクリームを使うべきです。 サングラスをかけて日焼けを防ぐのは、皮膚がんを防ぐ目的では、まったく本末転倒。逆効果。 とは思いながらも何しろ外はまぶしいので、この季節からの自転車は、やっぱりサングラスが必要ですね。 |
受動喫煙問題
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- 2017/04/11(Tue) -
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自民党内でも意見が分かれる事柄はいくつもありますが、受動喫煙対策の論争は、いただけませんね。
対立軸は「禁煙」vs「分煙」。「党受動喫煙防止議連」vs「党たばこ議連」と言い換えることもできます。 「受動喫煙防止議連」は、このたびの厚労省案に従って、受動喫煙の規制を強化せよ、という人たちです。 一方で「たばこ議連」は、飲食店に「喫煙・分煙・禁煙」の表示を義務づける、という対案を出しています。 たばこ議連というのはつまり、愛煙家の集まりですよね。いま、肩身が狭くなりつつある人たちです。 その自民党の愛煙家のオッサンたちの肩を持つ報道をしているメディアがあり、禁煙学会が反発しています。 先月、各メディアが行った世論調査の結果が、真逆だからです。 朝日新聞:原則禁煙(厚労省案)「賛成」が64% 毎日新聞:原則禁煙(厚労省案)「妥当」が58% 産経新聞:たばこ議連の案を支持する声が60.3% 日本禁煙学会が発表した調査結果では、圧倒的に厚労省案が支持されており、産経の調査には疑問があります。 調査対象中の喫煙者の割合などの詳細を公表しておらず、客観性に問題があるかもしれません。 アンケートなんて、調査対象の選び方によっては、恣意的な結果が出せるということの見本ですね。 世界が禁煙を推進しているいま、「愉しみを奪うな」と厚労省案に反対する議員には、未来はありません。 |
先輩の急逝に思う
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- 2017/03/27(Mon) -
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大学の医局の先輩が、2日前に急逝されました。64歳でした。
その2日前には、長時間の心臓手術を執刀するなど、まったく普通に仕事をされていたそうです。 死因は心筋梗塞だったと聞きました。就寝中の出来事です。 このような、比較的若い年齢での突然死には、長患いの後に亡くなる場合とは異なる、怖さを感じます。 ひとつは、自分の身辺整理も、家族や職場へ何か言い残すことも、何もできないということです。 やりかけの仕事や懸案の問題に対して、まったく中途半端なことになってしまい、ひどく不本意でしょう。 残された者にもやりきれない悲しみと喪失感とショックを与え、同時に多大な混乱を引き起こします。 何も苦しまないまま突然亡くなる、いわゆる「ポックリ病」が望ましい死に方だと言う人が、昔はいました。 しかし、ポックリ病の実態は致死性不整脈による突然死の場合が多く、比較的若い方が命を落とします。 そのような死に方が、望ましかろうはずがありません。 助かる命は助けなければなりません。致死性不整脈の多くは、適切な心肺蘇生によって救命しうるものです。 最近では当たり前となった、AED(自動体外式除細動器)も、その有力な救命道具です。 当院にもAEDを設置していますが、それは患者さんのためでもあり、私のためでもあります。 そういえば、自宅にAEDが無いことが、なんだかひどく気になってきました。 もっとも、たとえ家にAEDを設置しても、いざという時に適切に使ってもらえるかどうかが問題ですけどね。 なんにせよ、日々の健康管理が第一だと、あらためて感じた次第です。 |
「金沢宣言」
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- 2017/03/25(Sat) -
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日本循環器学会(通称「日循」)は、金沢で先週開催した学術集会で、「金沢宣言」を採択しました。
「脳卒中と循環器病の多くは生活習慣の改善で予防できる」ということを、あらためてアピールしたものです。 金沢宣言に異を唱えるわけではありませんが、ふと、生活習慣の「改善」って何だろう、と思いました。 おそらく、結果として生活習慣病につながるような生活習慣が、「悪い生活習慣」なのでしょう。 そしてそのような生活習慣をしないように改めることが、「生活習慣の改善」なのでしょう。 しかし生活習慣の悪い部分を改善すると言うのは簡単ですが、その方法はケースバイケースです。 私は何年も前から1日1食ですが、この方法を開始して減量できたので、私には悪い習慣とは思っていません。 運動によって体重が減って活気が出てくる人もいますが、食事制限がストレスになる人もいます。 生活習慣を改善するように言い続けてると、ついに当院に通院されなくなる方も、稀ですがいらっしゃいます。 将来、心臓病や脳卒中になったら困りますが、その予防がストレスになってもいけません。 重要なのはモチベーションでしょう。私の経験上、適度な具合の「成功体験」が必要だと思います。 何を指標にして、ゴールをどこに置くか。そのペース配分と適切な評価が、医者の務めかもしれません。 |
マキロンの成分
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- 2017/03/18(Sat) -
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子どもの頃、外で転んで膝を擦りむいたら、いつもオキシドールと赤チンで消毒していました。
その2つの組合せが最強だと、私なりに思っていたのです。 その後、赤チンには水銀が入っているので良くないということになり、黄色のアクリノールを使い始めました。 やがて、使いやすくて色が付かない消毒液「マキロン」が発売されたら、そればかり使うようになりました。 薬剤の色が薄くなるにつれて、有効性はともかく、毒性(副作用)もないだろうと安心して使っていました。 しかし、その認識は間違いだったかもしれません。マキロンの成分には、毒性があったからです。 最近、医療系サイトにもマキロン関連の記事が出ていたので、注意喚起のために書き留めておきます。 問題となったのは、「マキロン」に含まれていた「ナファゾリン」という血管収縮薬の毒性です。 小児の内服致死量は、体重1kgあたり0.1mgとされているので、1歳の赤ちゃん(体重10kg)だと1mg。 マキロンへの含有量は1mlあたり1mgなので、たった1ml飲んだだけで死んでしまうということになります。 この点が問題となり、10年ほど前から、ナファゾリンが取り除かれた「マキロンs」に切り替わっています。 つまり、いま日本国民が「マキロン」と思って買っている消毒薬は、じつは「マキロンs」なのです。 確認のため、わが家のマキロンを見るとしかし、それは「マキロンs」ですらなく、「マッキンZ」でした。 コスモスで買ったのはマキロンの類似品でした。そしてその容器には、ナファゾリン含有と書かれていました。 このように、マキロンの類似品には、かつて問題となった成分がいまだに含まれているということです。 何か問題が起きると、成分と商品名をこっそり変えるのは、大手製薬メーカーのやり口です。 しかし類似薬では、そのような面倒なことをしてないので、問題が残ったままになります。要注意です。 |