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「糖尿病」改め「ダイアベティス」?
- 2023/09/23(Sat) -
「糖尿病」という病名を別の呼称にしようという動きの中で、「ダイアベティス」案が出てきました。

高血圧症や脂質異常症にならって、高血糖症や耐糖能異常症になるかと思ってたけど、違いました。
糖尿病の英語名「Diabetes」を、そのまま日本語読みして「ダイアベティス」ということですか。
これまでも、医療者同士で「ディアベ」なんて言ったりしてたので、馴染みはあります。

でも、英語の発音 [dàiəbíːtis] にできるだけ忠実にカナで書くなら、「ダイアビーティス」ですけどね。

この英単語で重要なのは、「ビー」の部分にアクセントがあるということです。
アクセント部分の発音の正確さは、それが相手(ネイティブ)に通じるかどうかに大きくかかわります。
その、いちばんだいじな部分を「ビー」と言わずに「べ」と発音して、果たして通じるのでしょうかね。

いや、たぶん、ダイアベティスというのは、英語を参考にして作り出した、新しい日本語なのです。
日本語なので、外国人に通じるかどうかは関係ありません。とにかく「糖尿病」をやめたいのです。

糖尿病治療に関わっている外資系企業の、日本法人の関連事業部の名称にも違いがあって、面白いですね。
・日本メドトロニック株式会社ダイアビーティス事業部
・アボットジャパン株式会社ダイアベティスケア事業部

メドトロニックが原音に忠実なのに対し、アボットは敢えて日本風です。本社の親日度の違いかもしれません。

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第9波の次には、第10波が来るでしょう
- 2023/09/08(Fri) -
一昨日放送されたRKKの『週刊山崎くん』で、当院のお隣の「味のまつり家食堂」が紹介されていました。
録画(全録)したものを今日見たら、当院の建物が見事に何度か映り込んでいましたね。
収録当日(先月)、私は発熱外来の合間に屋外をウロウロしたのですが、残念ながら映っていませんでした。

さて、コロナです。熊本県の毎週の「定点あたり報告数」の推移は、7/31-/6の週から8/28-9/3の週までに、
24.66→22.41→16.43→16.60→15.54→17.84と、いったん減っていたのに、いまは上昇に転じています。
同様の状況は東京でも全国でも見られ、ほとんどの地域でコロナ感染者数が再び増えつつあるようです。

この報告数は、第8波のピーク時の約3分の2に相当します。つまりいま「第9波」真っただ中ということです。

当院の発熱外来の、最近の日曜日の「陽性者数/コロナ検査数(陽性率%)」の推移は、
14/23(60.9)→13/23(56.5)→休診→15/27(55.6)→13/27(48.1)→12/20(60.0)、でした。
検査数がやや減り、しかし陽性率が高いのは、疑わしい人に絞って検査しているからかもしれません。

いま、新型コロナウイルスの新たな変異株「BA.2.86(通称ピロラ)」が、世界各国で報告され始めました。
突然変異箇所がとても多く、過去のワクチンがあまり効かないため、感染急拡大が懸念されています。
いったいコロナって、いつかは収まるんでしょうかね。それとも永久に、新たな波が来続けるんでしょうか。

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コロナ禍後の「RSウイルス感染症」大流行
- 2023/07/04(Tue) -
「RSウイルス感染症」が流行しています。乳幼児が罹ると重症化することもある、呼吸器感染症です。

高熱とひどい咳が特徴的で、2019年までは毎年、秋口から流行する感染症でした。
ところが2020年は、からっきし、流行しませんでした。コロナ対策が奏功したのだろうと考えられました。

ところがその翌年、2021年は、例年よりも早い夏場に大流行しました。
前年に流行しなかったために子どもたちの免疫が低下していたため、翌年流行したのだと考えられました。
その大流行のおかげで免疫が付いたのか、2022年は例年程度の流行におさまりました。

しかし今年、再び2021年並の大流行が始まっています。
これは子どもたちの免疫低下だけでは説明できません。やはり「ウィズコロナ政策」が利いているのでしょう。

「園でRSが流行っているので、検査してほしい」というお子さんが、毎日のように来院されます。

ですがこの検査の保険適用は、外来では、RSに罹ると重症化しやすい0歳児に限られます。
なので1歳以上のお子さんの検査は、当院では原則として行っていません。検査はほぼ、お断りしています。
一方で0歳児の場合は、熱や咳の状態や状況を考慮して、念のためRSの検査を行うことが増えています。

RSウイルスの検査の保険適用と検査の可否については、以前も書いたように、釈然としない実情があります。
ですがどっちみちRSに特効薬は無く、RSであろうとなかろうと、治療は病状に応じて行うのみです。

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長い目で見て、まだコロナは流行の真っただ中です
- 2023/06/22(Thu) -
毎日毎日、当院の発熱外来を受診する発熱者のうちの何割かは、コロナ陽性です。
でも高熱でも検査は希望しないし、そもそも感染症とさえ思っていない方がいます。気持ちはわかります。

「たぶん疲れだと思うんです」
「エアコンが効きすぎてたんですよね〜」

ワクチンの副反応や熱中症などでもない限り、発熱は何らかの感染症を疑うサインです。
疲れやエアコンの効きすぎで体力・免疫力が低下したことによって、感染症を発症したと考えるべきでしょう。

「ウイルスとかじゃないと思うんです」

新型コロナのおかげで「ウイルス感染」が嫌われています。ウイルス=コロナ、の雰囲気なのでしょう。
ですが、ウイルスでなければ細菌か、別の病原体による感染症ということになって、逆にややこしいです。
普通の風邪はおおむねウイルス感染です。そして新型コロナも、言うなれば新種の風邪です。

コロナ禍当初から、コロナなんてただの風邪だと言う人がいましたが、しかしそれは少し違います。
ウイルスが人類に馴染んで弱毒化し、また多くの人々にある程度の免疫ができるまでは、油断はなりません。

変異が激しいので、今後何度も流行再拡大を繰り返し、場合によっては再強毒化する可能性もあります。
感染者の全数がわからなくても、重症化率や死亡率は工夫して評価していかなければなりません。
まだポストコロナではありません。あくまでウィズコロナです。普通の風邪扱いするのはまだ早いのです。

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「ナッツ」アレルギーが意外と多い
- 2023/06/03(Sat) -
この時期、食物アレルギーの検査をご希望のお子さんが多く、必要な項目を厳選して血液検査をしています。

卵や牛乳や小麦に次いで、よく検査項目に上がるのがナッツですね。最近は甲殻類より増えてる印象です。

おさらいしておきますと、「ナッツ」は木の実(種)です。殻が固い場合は、その中身(仁)を指します。
クルミやアーモンドやカシューナッツやヘーゼルナッツやピスタチオは、みなナッツの仲間です。
一方で「ピーナッツ」は豆です。大豆などと同じ豆科です。煎るとナッツっぽいので、混同されがちです。

ただし、ピーナッツはとくに重要なアレルゲンなので、ナッツと同時に検査することはよくあります。
そして、ナッツのうち1つか2つか3つのアレルギーが陽性でも、ピーナッツは陰性のことが多いようです。

私は毎晩ブロッコリー1株食べていますが、ドレッシングがわりにナッツをトッピングしています。
ドレッシングをかけていた時期もありましたが、どの味にも飽きてしまったのです。

好きなナッツはアーモンドとピスタチオ。クルミとヘーゼルナッツは味がしまらないので嫌いです。
最近トッピングによく使うのは、アーモンド単独か、コストコの「ミックスナッツ」あたりでしょうか。

その「ミックスナッツ」には、ナッツが5種類入ってますが、たしかにピーナッツは入っていませんね。
ピーナッツが何かと混ざっているとすれば、それは柿の種です。種ですがナッツとは言えません。

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不気味に増えつつあるコロナとインフル
- 2023/05/28(Sun) -
コロナが「5類化」して定点あたりの毎週の報告数で集計されるようになり、2週目の分までが公表さています。

熊本県では、先々週(5/8〜14)が定点あたり2.06、先週(5/15〜21)は2.30と、ジワッと増えています。
熊本市でも同様で、先々週1.60から先週1.76に、やはり増えています。

もしも当院が定点医療機関であれば、先々週は5,先週は7、今週は9という報告数になるところです。

定点医療機関の数が地域毎に異なるため、定点あたりの報告数を地域間で厳密に比較することはできません。
あくまで、同一地域における経時的推移を見るための指標です。

ただ、コロナとインフルは同じ医療機関が定点となっているため、互いの数を比較することはできそうです。

そのインフルエンザの定点あたり報告数も、熊本県では先々週は2.72、先週は3.05と増えています。
熊本市も同様で、先々週1.88から先週2.44と、こんな時期なのにけっこう増加しつつあります。

コロナもインフルも共に、同じような増加率で感染者数が増えているとは、なんとも不思議なことです。
インフルエンザが2シーズンまるで流行しなかったのは、やはりコロナ対策が効いていたのでしょうか。
世の中がウィズコロナに向かい、マスクも外したタイミングでのインフル流行とは、皮肉なものです。

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コロナワクチン6回目接種体験記(参考にはなりませんが)
- 2023/05/11(Thu) -
昨日モデルナを接種した私は、左肩がそこそこ痛みますが、カロナール多量服用の効果か熱は出ていません。

さて、ワクチン接種後の発熱とコロナ感染による発熱については、昨日も書きました。
いずれも、コロナウイルス(のスパイク蛋白)という異物に対する生体反応という点では、共通しています。
発熱によって免疫細胞を活性化するのが目的ですが、一般にウイルスは熱に弱いので発熱は好都合なのです。

昨日紹介した研究は、オミクロン株のウイルスがデルタ株よりも格段に熱に弱くなった点を示したものでした。
なので、発熱したらすぐに解熱せずに様子を見るという、これまでの風邪やインフルの対処法が一層有効です。

また、寒気がして震えている発熱の初期には、からだを温めて早く目的の体温に到達させるのが良いはずです。
水分は十分摂り、熱が上がりきってから、あちこち冷やすなり解熱剤を使うなりすればよいのでしょう。

「はしかは冷やすな」といって、厚着させて熱をこもらせて麻疹を治そうという一種の迷信が、昔ありました。
脱水の危険がある「民間療法」ですが、発熱のごく初期に限れば、理にかなってるのかと少し思ったりします。

そんなわけで昨晩は、接種後の体を十分温めて免疫系を活性化しようと、じっくり熱めの風呂に入りました。
と言いながら、カロナール飲みまくったんじゃ、意味ないですけどね。

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「増悪」は「ぞうあく」で、「憎悪」は「ぞうお」
- 2023/03/01(Wed) -
「急増「心不全」が危ない! “不治の病” 回避最前線」
こう題して、今日のNHK『クローズアップ現代』が、心不全の早期発見や予防法について紹介していました。

「心不全」とは、心臓の働きが全(まっと)う出来ていない(=不全)状態のことで、原因はさまざまです。
その心臓の働きで最も重要なのは、全身の細胞に「酸素」を届け、各細胞にエネルギーを与えることです。
酸素不足によって身体機能が低下し、運動能力が低下すれば労作時には息切れが起きやすくなります。

「急性心不全の多くが 慢性心不全の急性増悪である」というのが、最近の考え方です。
ここで「急性増悪」とは見慣れない言葉かもしれませんが、文字通り「急に悪化すること」です。

番組中では、その心不全の進展ステージについて、よく使われる図解を引用した説明がありました。
ところがその図解の中で、大事なワード「急性増悪」と書くべきところが「急性憎悪」と書かれていました。

数分後に、番組中で桑子真帆アナが口頭で次のように訂正しました。
「キュウセイゾウアクという文字の『ゾウ』という字が間違っていました。正しくは『増える』という字です」

ここはやはり、「○増悪 ×憎悪」とテロップを出すべきでしょう。口頭でサラッと言われてもわかりにくい。
「憎悪」では、あまりにも恥ずかしいので、敢えてわかりにくく訂正したのかと勘ぐってしまいます。

実はこれ、私が学生時代に何度も教えられた、間違いやすい表現のひとつです。
なので教育的観点からも、NHKは何をどう間違えたのか、正誤を比べてきちんと説明した方が親切でした。

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コロナとインフルの重複感染は、予想以上に多いかも
- 2023/02/11(Sat) -
建国記念の日。さすがに祝日ともなると、発熱外来もかなり混み合います。
朝9時台には、夕方までの予約が埋まりました。相談センター等からの紹介は、早々に止めていただきました。

当院ではこのところ、インフルエンザの感染者数がコロナを上回っています。たぶん全国的にそうでしょう。
そんな中で今日もまた、コロナとインフルの両方で同時に陽性が出た方がいました。

感染のタイミングが同時とは限らないので、「同時感染」というより「重複感染」と呼ぶべきかもしれません。

高熱が出てインフルの検査のみを希望する方が多いですが、つねに重複感染を考えておく必要があります。
ただ、高熱でぐったりのお子さんに、インフルだけでなく念のためコロナも調べるかどうかは悩ましいところ。
たぶんインフルだろうと思うし、両方検査するには綿棒を2本使うことになるのも嫌われます。

周囲でインフル流行中で、高熱が出たのでインフル検査して陽性という場合、もはや重複感染など疑いません。
そんな具合に、コロナの重複感染が見逃されてしまうケースが、今後は増えることでしょう。

重複感染が判明したらしたで、悩ましいのはコロナの療養期間をどう考えるかということです。
2日前から発熱、今日検査したらインフルとコロナが陽性。さて、コロナの発症日はいつでしょう。
もしかすると、コロナはまだ発症すらしていないかもしれません。
・・・などという面倒な話も、5月8日からコロナ感染者の行動制限が無くなれば解消するのでしょうかね。

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コロナの定点医療機関は、インフルの定点が「兼任」
- 2023/02/09(Thu) -
新型コロナ「5類」移行後の感染動向把握は、インフルエンザの「定点医療機関」が担うことに決まりました。

このことは、昨年9月の「全数届出の見直し」の頃には、すでに具体的な議論が始まっていたようです。
どのような定点を設定すれば「全数届出」を反映するか、「HER-SYSデータ」を用いて検討されました。

少数のデータによって全体を推測するためには、「平均的な」医療機関を定点としなければなりません。
ところがコロナは、特定の医療機関に受診者や感染者が集中する傾向があります。

第5波頃には、10%の医療機関が、コロナ全体の80〜100%(地域により異なる)を診療していたようです。
これが第6波では60〜80%、第7波では30〜60%程度にまで下がって来たと分析されています。
つまり、コロナを診療する医療機関が広がって来たわけで、定点での把握が可能な状況になったと言えます。

当院は、インフルの定点医療機関ではないので、コロナの定点にもならないはずです。
ただし、医療提供体制の実情に応じて定点を調整するそうですが、当院を選ぶと偏るのでダメですよ。

もしも当院がコロナの定点なら、今年第1週からの報告数は、60→61→45→39→23という推移になります。
同様にインフルの場合だと、8→17→17→13→32という報告数になるので、たぶん平均的ではありません。

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インフルがコロナを駆逐する?
- 2023/02/05(Sun) -
「潮目が変わった」とはこういうことでしょうか。今日の発熱外来は「インフル一色」でした。
隣の薬局の「抗インフルエンザ薬」の在庫が心配になるほどでした。
コロナの検査(NEAR法)30人中で陽性わずか3人(10%)に対し、インフルは25人中18人(72%)が陽性。
当院の発熱外来で、インフル陽性者数がコロナ陽性者数を上回ったのは今日が初めてです。
上回ったどころか圧倒的にインフル優位となるという、いきなりの大逆転です。

先週1週間のコロナ陽性者は31人でインフル陽性者は15人だったので、これはホントに急な変化だと思います。
コロナかインフルか不明だけど学級閉鎖中、というお子さんはみな、コロナではなくインフルでした。

人の移動が増えたというのにコロナは減り、一方でインフルが激増しているのはなぜでしょう。
いや逆に、インフルが増えたからこそコロナが減ったと考えることもできます。

もしかすると、インフルがコロナを駆逐する、2年前とは逆パターンの「ウイルス干渉」かもしれません。
このままコロナがすっかり終息するようなことでもあれば、インフルのおかげ、っていうことになりますか。
映画『宇宙戦争』で、人類に対して猛威を振るう宇宙人が地球の「風邪」に倒れた最後を思い出しました。
コロナが完全に消え去るとは思いませんが、もしや大きな転換点ではと、いま少し期待してもいるのです。

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インフルエンザは注意報レベルでコロナと同程度
- 2023/02/01(Wed) -
発熱外来受診者は一頃よりもずいぶん減ってきましたが、インフルエンザが増えましたね。

熊本市の定点あたりインフル報告数は、今年第2週(1/9〜15)に10を超え、注意報レベルに達しています。
ただし、第2週の11.96に対して、第3週は11.52なので、爆発的大流行に向かっている雰囲気ではありません。

本日の発熱外来受診者21人のうち、コロナ陽性者6人、インフル陽性は5人。インフルはすべてA型でした。
インフルエンザの方は全員38度以上の発熱を認めましたが、コロナの6人のうち2人は微熱でした。

あらためて先月中旬のインフル陽性者34人を調べてみると、熱の最高値が38度未満はわずかに3人(8.8%)。
一方で同じ時期のコロナ陽性者110人では、26人(23.6%)が微熱でした。
コロナには軽症者や無症状者も多いですが、インフルエンザではほとんどの方が高熱でグッタリです。
その点だけを見れば、コロナはすでに、季節性インフルエンザよりも症状の軽い感染症なのかもしれません。

近隣の小学校では、学級閉鎖も出ています。
しかし当事者に尋ねると、コロナかインフルか、どちらが原因の学級閉鎖かわからないと言います。
休んでいる児童の数は多いけど、その病名が正確に把握できていないのでしょう。

コロナと思ったらインフル、あるいはその逆の方が、今日もいました。
家庭や職場で出ている感染症とは違う方が陽性に出るようだと、今後の混合感染が心配になります。
少なくともしばらくの間は、コロナとインフルはなるべく同時検査すべきでしょう。

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「マスクは不要」と言うけれど
- 2023/01/20(Fri) -
新型コロナ感染者に限らず、健康で症状が何もなくても、これまで日本ではマスクの着用が「必要」でした。
多くの場所でマスクを着けるのがマナーであり、実質的に義務でした。そのマスク着用の目的は2つ。

(1)自分が感染するのを防ぐため
(2)他人に感染させるのを防ぐため

それがこの春からは、屋外はもとより屋内でも、マスク着用を「原則不要」とする方針に転換するようです。
もちろん、今後もマスクを着けるのは自由です。とくに次のような思いが強いなら、着用を考慮すべきです。

(1A)できるだけ感染したくない
(2A)できるだけ感染させたくない

とは言え、マスクが「原則不要」ともなれば、着用しない自由がこれまで以上に尊重されることになります。
極論するなら、次のような考え方も、ある程度は許容しなければならないということです。

(1B)感染してもしょうがない
(2B)感染させてもしょうがない

その結果、感染したくない方と、感染させてもしょうがないと考える方が、世の中に混在することになります。
マスクの効果は限定的となり、あちこちでいさかいを生みかねませんが、それもしょうがないのでしょう。
ただし、公共交通機関や医療機関等では例外的に、従来通りのマスク着用が当面は続けられると考えられます。
しかしそのような場所ではなくても、(1A)の方が守られるような「モラル」が醸成されることを願います。

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感染者数が多いから、死亡者数も多いのです
- 2023/01/14(Sat) -
新型コロナの全国の1日あたり死亡者数が500人を超えました。
感染者数は過去最多ではないのに、死亡者数が過去最多を更新し続けているのは、なぜでしょう。

いまの流行株の死亡率がどんどん高くなっている、という話は聞きません。この先はわかりませんが。
となれば、感染者数が過去最多を更新し続けている、と考えるしかありません。

尾見会長は、「感染者の届け出の方法が変わったことが背景にあると見られる」と婉曲に説明しています。

そうでしょうとも。昨年9月26日の「全数届出廃止」以来、感染者数が正確に把握できなくなっているのです。
基礎疾患の無い軽症者は医療機関を受診しないのが原則なので、医療機関が感染者を把握しにくくなりました。
社会経済を回す方向に国が舵を切ったので、仕事を休まないためにも、検査を受けない方がおおぜいいます。
入院給付金が出なくなった方々にとっては、検査して診断を受ける意義も薄れてしまいました。

発症しても医療機関を受診せず、まずは自宅で抗原検査をする、というのが国の勧める対処法です。
これによって、偽陰性の多い抗原検査で済ませてしまうことが多くなり、潜在感染者が激増しているのです。

当院の発熱外来でも、症状が軽い方を念のため検査したら陽性、というケースが増えています。
今週から「NEAR法」による検査装置を導入して、陽性率の高さには驚く毎日です。感染者数は多いのです。

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ワクチン接種後の急変には、反射的に「アドレナリン筋注」を
- 2022/11/12(Sat) -
新型コロナワクチンの接種直後に体調が急変した女性が死亡するという、衝撃的な事例が報じられました。
この場合、まず「アナフィラキシー」を疑います。メディアも概ねその論調で、次の様に報じています。

・接種の5分後に咳、さらに呼吸苦が出現、呼吸停止となり心肺蘇生、救急搬送されたが1時間半後に死亡した
・医師は肺出血と考えたが、(アナフィラキシー治療に用いる)アドレナリン注射はしなかった
・県医師会長「アナフィラキシーショックの可能性があり、現場での対応に問題がなかったか検証する」

医師がアナフィラキシーに対する初期治療を誤り死なせたと、まるでそのように受け取られる報道です。
しかし、医師が提出した報告を読むと、単なるアナフィラキシーでは片付けられない難しい事例だと思います。

・接種10分後に呼吸苦あるも、粘膜・皮膚に異常なし、その後、泡状のピンクの血痰を多量に排出し呼吸停止

これは「肺水腫」(急性心不全)の症状です。一般的なアナフィラキシーの病状とはかなり異なります。
ただし、アナフィラキシーがきっかけとなって急性心不全を併発した可能性まで否定することはできません。
やはり、接種直後の急変ではアナフィラキシーを疑うべきです。悩んでる時間が命取りになりますから。

なのでこの事例では、ためらうことなく、ただちに「アドレナリン」を筋注すべきでした。
まず、脊髄反射的にアドレナリン。それで救命できるか、まったく的外れか、それはあとでわかります。
もしも、その反射的な処置が後に医療過誤だと責められるようであれば、もうワクチン接種などできませんよ。

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「糖尿病」の名称変更
- 2022/11/08(Tue) -
「糖尿病」という病名について、「日本糖尿病協会」が名称変更の検討を進める方針とのこと。
「糖尿病の病名自体が、負のレッテルを表すスティグマになっているのではないか」と同協会の理事。

「スティグマ」って何でしたっけ?というのが私の最初の感想ですが、「汚名」とか「烙印」の意味でしたね。

協会が行ったアンケート調査によると、患者の約9割が病名について抵抗感・不快感を抱いているとのこと。
ですがこれは新しい問題ではなく、たとえば30年前にも「日本糖尿病学会」で同様の調査が行われたようです。

では、どのような名称に変更することになるのでしょう。
「高血圧症」にならうなら「高血糖症」ですね。「脂質異常症」的に「耐糖能異常症」かもしれません。
いずれにも共通するのは、「病態の重要兆候」をそのまま病名にした点です。

病名の変更ですぐ思い出すのは、「痴呆」をやめて「認知症」にしたことです。
「痴呆」がそれこそ「スティグマ」になるので、大幅に表現を改め、その結果意味不明な病名になりました。
「認知障害」のある方を「認知症」と言うのは、「視覚障害」のある方を「視覚症」と言うぐらいに変です。
今となっては「認知症」も定着し、さらに「わたしゃ『認知』かもしれん」みたいな略し方も耳にします。

どんな病名に変えたところで、病気そのものに対する差別意識があれば、新しい病名がまた偏見を生みます。
その本質的問題は放置して表面的な病名だけを変えるのは、一種の「言葉狩り」だと私は思います。
とは言え、「尿」の文字が付くのはイヤだ、という方もいるので、とりあえず今回の病名変更はアリでしょう。

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異次元の増加パターンに転じてます
- 2022/07/21(Thu) -
日曜祝日に、当院の発熱外来受診者が多いのならわかります。
ところが今週は、平日でもPCR検査希望者が殺到しています。
朝9時台のうちに夕方までの予約枠が埋まります。これまで、平日ではあまり見なかった現象です。

熊本県の新規感染者数は、昨日の3千人超えは予想していましたが、今日の4千人台は全く想定外。異常です。
経験上、感染者報告数がもっとも少ないのは月曜、多いのは火曜でした。その理由は前に書いた通りです。
今週は日・月が連休だったので、最少は火曜、最多は水曜と予測できたわけです。でも実態は違いました。

かつては概ね、火>水>木>金>土、のパターンでしたが、7月に入ってそれが崩れてきました。
ついに先週は、火<水<木<金<土、となっています。完全に増加フェーズに転じたことがわかります。

日本全体では今日、18万人超の感染者が報告され、東京でも3万人を超えました。全国各地で過去最多です。
やがて東京は1日5万人に達するだろうと偉い先生方は言ってます。その時熊本は1日6千人程度でしょうか。
東京の5万人は、先週聞いた時はちょっと懐疑的でしたが、今では疑いようのない予測に思えてきました。

感染が確定した後の患者さんが、翌日や翌々日にまた受診するケースも目立ちます。
PCR検査をした最初の来院日よりも、熱が上がったり、咳がひどくなったりする方が少なくありません。
そしてその方と一緒に、ご家族がPCR検査を受けにくるという、そんな同伴パターンが今とても多いですね。

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心配蘇生はとにかく、ためらわないこと
- 2022/07/16(Sat) -
安倍元総理大臣が銃で撃たれた時、現場路上では心臓マッサージとAEDによる救命処置が行われました。

「どんな状況でも心停止を疑ったら直ちにAEDを使用して指示に従ってほしい」と言うのが日本AED財団。
AEDがその場に届いたとしても、いざ使うとなるとためらいがあるかもしれません。
患者さんの衣服をはがすことへの抵抗や、AEDを正しく使える自信がないという方も、多いはずです。
必要のない方にAEDを使ってしまったり、使い方を誤って患者さんを傷つける可能性を怖れるのです。

大丈夫です。AEDは患者さんの心電状況を判定し、AEDを作動させるべきかどうかを指示してくれます。
その指示に従ってスイッチを押しさえすればいいので、使い方を誤って後で責任を問われることはありません。
問題になる可能性があるとすれば、「そこにAEDがあるのに使わなかった」という場合です。

心臓マッサージ(心マ)も同様で、そこに意識の無い方がいれば、すぐに心マすることが救命の決め手です。
ただ、必要のない方に心マして、かえって患者さんにダメージを与える可能性がどうしても気になります。

しかし躊躇している間に救命率がどんどん低下します。心肺蘇生が必要と思うなら、ともかく始めることです。
そのような観点から、迅速な救命行為によって患者さんに与えた不利益は、免責されなければなりません。
残念ながら日本では、その免責を認めるいわゆる「善きサマリア人の法」は、明確には規定されていません。

今回の事件を機に、AEDや心マ実施のハードルを下げる動きがもっと乗り上がってほしいと思っています。

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「4回目接種」の対象がようやく拡大へ
- 2022/07/13(Wed) -
熊本に限らず、全国すべての都道府県で、新型コロナの新規感染者数が前の週を上回っています。

この感染拡大は、オミクロン株の亜系統「BA.5」への置き換わりが進んでいるためだと考えられています。
「BA.5」は「ビーエーファイブ」と読みます。ニュースでそれを聞くたびに、「VO5」を思い出します。

オミクロン株という変異株が登場したのは昨年11月。日本に上陸したのは年末でした。
その後、さらに感染力が強く、一部の検査法では検出されにくい「ステルスオミクロン」が登場しました。
この亜系統は「BA.2」とも呼ばれ、オリジナルのオミクロンは「BA.1」という名称になりました。

その後、私はよく把握していませんが「BA.3」や「BA.4」を経て現在、「BA.5」が猛威を振るっています。
さらに昨日、「BA.2」の亜種である「BA.2.75」が国内で初めて確認されました。
「ビーエーツーセブンファイブ」と読むそうです。スケートボードのトリックかと思うような名称です。
もしも「BA.5.40」という亜種が出現したら、「ビーエーファイブフォーティー」ということになるでしょう。

「BA.5」はワクチンが効きにくいと言われますが、打たないよりマシなので、接種が推奨されています。
今後、高齢者など以外に医療従事者や高齢者施設職員などにも、4回目接種の対象を拡大する方向のようです。

接種の目的は「重症化予防」だとしてきた方針を変更して、いまさら「感染予防」も加えようとするものです。
医学的に正しい判断かどうかはともかく、感染リスクの高い医療現場には好意的に受け止められるはずです。
希望者だけが接種を受けるワクチンなので、対象を拡大して選択の幅を広げるのは、良いことでしょう。

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今年はインフルが流行するはず(3度目の正直)
- 2022/06/25(Sat) -
「今年はインフルエンザが流行する」
昨日今日の話題は、なんと言ってもコレでしょう。現に、流行の兆しは出始めています。
東京の(横田基地に程近い)小学校では学年閉鎖ですか。オーストラリアでは3年ぶりの大流行だとか。

2年前、コロナとインフルが同時流行しては大変と、インフルワクチンの接種は例年以上の盛り上がりでした。
しかしインフルは、まったく流行しませんでした。ウイルス干渉とか、いろんな説明がなされました。

昨年、前年にインフルが流行しなかった翌年は大流行になる、という話もあり、ワクチン接種者は多数。
しかしインフルは、まったく流行しませんでした。マスクなどのコロナ対策が奏功していると考えられました。

さて今年、世界中がポストコロナへと意識を転換しつつあり、街は3年前のような活況を呈してきました。
そこへ付け入るようにインフルが大流行するのも、やむを得ません。何しろ皆んなに免疫がないのですから。

インフル大流行を迎えた際に困るのは、2年前と同じく、インフルとコロナの区別がつかないことです。
2年前は実質的にインフルはいませんでしたが、今シーズンはインフルとコロナとの同時流行もあり得ます。

まずは、インフルワクチンの接種に力を入れる必要がありそうですが、果たして希望者は例年程度いるのか。
「コロナとインフルが同時に流行るぞ」と2年間言われ続けたのに、結果的にはコロナ単独の流行でした。
その2年連続の空振りが「オオカミ少年効果」にならなければ良いがと、心配しているところです。

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「サル痘」って、ネーミング的にも罹りたくない
- 2022/05/22(Sun) -
欧米で「サル痘」患者の確認が相次いでいます。昨日時点で世界で80人程度ですが、おそらく増えています。

天然痘」に似た症状だそうですが、そもそも天然痘をよく知らないので、ネットで調べることになります。
その類縁疾患の「水痘」とは、発疹の大きさや数や分布や、なによりも「見かけ」がずいぶん異なりますね。

水痘の発疹を見ても「豆」は連想しませんが、天然痘の発疹(の写真)はとても豆っぽく、艶があります。

調べてみると天然痘の発疹は、多数の発疹がほぼ一斉に、次のような経過をとるようです。
(1)丘疹:プクッとしたニキビのような盛り上がり
(2)疱疹:ニキビが水っぽく膨らんでくる
(3)膿疱:さらに大きく丸々と、強そうな、豆のようなデキモノになる
(4)痂皮:茶色く枯れる
水痘の場合は、(1)と(2)が混在し、あまり大きくならず(3)にもならず、順次(4)へ向かいます。

天然痘の発疹の分布は、顔にとても多く、四肢にも多くできて、躯幹(胴体)にはやや少ないのが特徴です。
一方で水痘は、躯幹がメインで顔や頭にも出来ますが、四肢にはそれほどできません。

サル痘の発疹は、水痘よりは天然痘にソックリで、もしも発症したら重症感が漂うイヤな印象でしょうね。
幸い「天然痘ワクチン」が有効らしいので、かつて「種痘」を受けた昭和50年生まれまでの方は、安心です。

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抗原検査は、陰性証明ではなく早期陽性診断にこそ使われるべき
- 2022/04/30(Sat) -
「PCR検査ではなく、結果が早くわかる抗原(定性)検査をしてもらえますか?」 よく頂戴するご要望です。

約1年前までは、抗原検査とPCR検査を同じ日に両方行っていたので、話は簡単でした。
「まず抗原検査を行い、それが陽性ならコロナ感染確定。陰性なら、より感度の高いPCR検査をしましょう」

ところがある時、PCR検査を抗原検査と同じ日には行ってはならない、と保険者からクレームが付きました。
抗原検査が陰性であった場合、翌日まで経過を見て、必要なら翌日PCR検査をすればよいのだと言うのです。

それ以来当院では、抗原検査実施例では原則としてPCR検査は翌日行う方針とし、結果判明が遅くなりました。
2日間の受診となり医療費も増えました。医療費削減を目論んだ保険者による規制が、裏目に出た格好です。

いま、冒頭のような質問を受けた場合、次のようなお答えをしています。
「自分が陽性だということを早く確定させたければ抗原検査を、陰性証明を得たければPCR検査が適切です」

たとえば低酸素血症のあるような、陽性かどうかを早く知りたいケースでは、すぐに抗原検査を行います。
そうでもなければ私は通常、唾液が採れる年齢の方にはPCR検査を第一選択とします。
陰性証明を得たい理由で抗原検査を希望する方には、その限界をしっかり説明しなければなりません。

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「ノババックス」承認へ
- 2022/04/18(Mon) -
「ノババックス」社の新型コロナワクチンが、日本で承認されることになりました。

「ファイザー」や「モデルナ」のような「mRNAワクチン」とは、まったく異なるメカニズムのワクチンです。
メカニズムは異なりますが、いずれも新型コロナウイルスの「スパイク蛋白」に対する免疫を付けるものです。

スパイク蛋白の「レシピ」を注射して体内でスパイク蛋白を作らせ、免疫反応させるのがmRNAワクチン。
一方でノババックスは、人工的に作ったスパイク蛋白の「完成品」を、体内に注射するものです。

レシピが体内に残存して、過剰なスパイク蛋白を作り続けないのか、というのがmRNAワクチンの懸念です。
そのようなことはない「はず」ですが、なにしろ人類初の試みですから、常に心配は付きまといます。

対するノババックスは、すでに実用化されている他のワクチンと同じ生産メカニズムなので、安心なのです。
しかも海外での臨床試験でも有効性が高く、副反応は少ないということまでわかっています。
副反応をことさらに嫌う日本人には、打って付けかもしれません。日本国内で製造される点も重要ポイント。

今後、mRNAワクチンと置き換わるのか、一定の棲み分けが起きるのか、まだ見当も付きません。
ただ、それでなくても接種率が低迷しているところへのノババックス参入は、一時的には混乱も起きそうです。
「ノババックス待ち」で若者などの接種控えが起きやしないか、私はそれがいちばん心配です。

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もはや「波」かどうかは重要ではないかも
- 2022/04/12(Tue) -
減りませんね、新型コロナ感染者数。むしろ増えてる。
今日の熊本の855人は、3月8日以来の800人台でした。その前の800人台は2月16日です。
直近1週間の人口当たり感染者数が多いのは、沖縄、東京、宮崎、佐賀、福岡と九州勢が並ぶのも不気味です。

ついに第6波が収束しないまま、なし崩し的に、第7波に突入しつつあるとみるべきでしょう。

欧米ではすでに、オミクロン株の変異株「BA.2」が大半を占め、日本の第7波もこれが主流になりそうです。
さらに「BA.2」よりも感染力の強い「XE」もとうとう、成田に上陸しました。第8波はこれでしょうか。

今後も、ますます感染力が強まった変異株の流行の波が、次々に連続して押し寄せ続けるのでしょう。
もはや独立した波ではなくなり、一定の水位を保った持続的な流行に移行するのかもしれません。

欧米諸国等は「with コロナ」モードに入っていますから、感染者数はしばらく減らないでしょう。
感染者が多ければ、感染者の体内で複数の株のコロナウイルスの「組換え」が起きる可能性も高まります。
そのようにして、「XE」のような変異株が次々に出現してくるのでしょう。

変異株が次々に出現し、さらに感染力も強まり、しかし弱毒化する、そんな方向に進むということでしょうか。
結局、最終的には「風邪」になるのかもしれません。願わくば、弱毒化のスピードが速まってほしいものです。

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エアロゾル感染を意識するなら、十分な換気を
- 2022/03/31(Thu) -
「新型コロナは『空気感染』すると感染研が認めた」
センセーショナルに報じられていますが、驚くほどでもないニュース。何を今さら、という反応が適切です。

たしかに以前は、新型コロナの感染経路は「飛沫感染」と「接触感染」だと感染研は言ってきました。
しかし最近になって、「エアロゾル感染」も否定できない、と言い始めました。
そして3日前に、主な経路は「エアロゾル感染」「飛沫感染」「接触感染」の3つであると改めたわけです。

「飛沫」は、感染者の口から飛び出した、ウイルスを含む液体の大きな粒子で、数分以内に床に落下します。
「エアロゾル」は、飛沫が乾燥した小さな粒子で、軽いので空中を長時間浮遊するとされています。

両者は、元をたどれば同じモノであり、飛沫の一部がエアロゾルとなって漂うことは、誰でも想像できます。
これまでに部屋の換気が推奨されてきたのもエアロゾル対策であって、飛沫対策ではなかったはず。
すでに分かっていたことを改めて感染研が認めたとしても、今からやるべき対策は変わらないのです。

ただし飛沫とエアロゾルでは、それぞれに適した対策をとるべきです。診療における私の基本的な考え方は、
(1)飛沫対策:感染者等と対面するときは、十分な防護具を装着し、距離をとり、真正面を避ける
(2)エアロゾル対策:感染者等が滞在している(いた)個室は、つねに十分に換気し、長時間の滞在を控える

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子どものオミクロン
- 2022/03/16(Wed) -
子どもの感染が増えていると言われる、新型コロナのオミクロン株ですが、当院でも小児例が増えています。

昨年1年間のPCRまたは抗原陽性例は97人で、うち15歳以下は18例 (19%)、11歳以下は10例 (10%)でした。
ところが今年はこれまでの陽性例449例のうち、15歳以下は121例 (27%)、11歳以下は104例 (23%)でした。

当院の0歳児の陽性例も、昨年1年間で1人でしたが、今年はすでに3人ほど出ています。すべて8カ月児です。
1人は、38度台の熱以外に症状もなく元気で、突発性発疹かと思いましたが念のため検査したら、陽性。
2人目は、38度台の熱と鼻水。兄弟がコロナに罹患していたので検査したら、陽性。
3人目は、熱も無く下痢のみ。両親がともに風邪を引いている状況を怪しみ、念のため検査したら、陽性。

このように、風邪か胃腸炎か突発性発疹かと思うような、比較的元気なケースが、コロナでした。

日本小児科学会が最近、過去2年間の国内の小児新型コロナ感染者5,129例の調査結果をまとめました。
コロナ流行初期と、デルタ株流行期と、オミクロン株流行期の症状などを比較分析したものです。

その結果オミクロンでは、発熱・咽頭炎・頭痛・嘔吐の割合が多いことがわかり、私の経験にも一致します。
すなわちオミクロン株感染は、上気道炎や胃腸炎など、普通の風邪に近い症状に向かいつつあるようです。

岸田首相は今日の会見で、一般の事業所での濃厚接触者の特定をやめる方針を示しました。
マンボウも解除されるし、もうそろそろ隔離一辺倒な対応は見直す時期かもしれませんね。

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ワクチン打っても罹るとしても、重症化は予防できるはず(期待)
- 2022/03/10(Thu) -
発熱外来の受診者は減ってきた印象がありますが、PCR陽性率がまだ高く、油断なりません。

家庭内で1人感染者が出ると、通常はその他の同居家族全員が「濃厚接触者」ということになります。
このとき、感染者だけ隔離して、他の濃厚接触者全員は一緒に暮らして良いのか、という疑問をよく聞きます。

そうなのです。ひとくちに濃厚接触者と言っても、誰が感染者で誰が非感染者かわかりません。
ひとりでも感染者がいたなら、濃厚接触者同士がまとまって暮らすことで、感染が拡大するリスクがあります。

なので濃厚接触者同士が互いに濃厚接触してはならないのですが、実際にそれを徹底するのは難しいものです。
濃厚接触者が数名、1台の車で発熱外来を受診されたりしますが、感染拡大の観点からは心苦しい限りです。

多くの家庭で家族内に感染が広がり、ついには感染者の方が多数派、非感染者が少数派になっていきます。
最初は感染者を隔離していたのが、数日後には、非感染者の方を隔離することになります。
いっそのこと、家族全員が感染した方が、むしろ暮らしやすくなったりもします。

感染者の中には、ワクチンをしっかり2回接種、あるいは3回接種した方もしばしばいます。
私の経験だけで3回接種の感染予防効果を云々はできませんが、ともかく、3回打っても罹ります。
おそらく、3回打てば重症化しにくいんだろうなと期待はしますが、私の経験数ではその評価も下せません。
でも、これだけ感染が広がっているいま、個人として何ができるかと言えば、やはりワクチン接種でしょうね。

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「交互接種」推進運動
- 2022/02/19(Sat) -
ファイザー→ファイザーと打ってきたら、3回目はモデルナに切り替えた方が、より強い免疫が付くという話。
抗体価の上昇が、ファイザー54倍に対してモデルナで68倍だったという、国内データが出ました。
どっちも悪くないけど、モデルナの上昇率にはそそられますね、副反応の頻度が多かったとしても。

そのようなデータもあって、最近「交互接種」を推進する情報・報道が目立ちます。

接種するワクチンは選択できるはずですが、実際にはファイザーが足りないという「台所事情」があります。
しかし政府はそう言わず、「強さを求めるならモデルナ」「悩むならモデルナ」と喧伝・誘導するわけです。

ところが現実には、「安心を求めるならファイザー」「悩むならファイザー」のような考えの方が圧倒的です。
日本人が、副反応をことのほか恐れる気質であることは、HPVワクチン問題などの事例からもあきらかです。
「ワクチンを変えたばっかりに」と後悔する姿を、モデルナを打つ前から想像してしまうのでしょう。

ワクチンの副反応を避けるためなら、子宮頸がんになるリスクはやむを得ないとまで考えてきた日本人。
ところが新型コロナでは、少々副反応があってもワクチンを打って感染を防ぎたい、という考えが支配的です。
つまり日本人は、目の前の恐怖に弱いわけです。先々の利益と天秤にかける客観性がないのです。
その結果、より強い免疫が付くモデルナよりも、副反応がより弱いファイザーを好むのでしょう。

熊本市では来週、多くの市民に接種券が郵送される予定です。週の後半には予約が殺到することでしょう。
ファイザー枠はあっという間に埋まり、「モデルナならすぐ打てますよ」ということになりそうです。
いまの状況では、ワクチンは早く接種した方が良いし、選べるならモデルナの方が良いと私は思っています。

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マッターホルン型よりも富士山型
- 2022/02/13(Sun) -
発熱外来の受診希望者が、いっこうに減りません。とくに日曜日はひどく混み合います。
今日は新型コロナワクチンの3回目や子どもの予防接種の予約も一切入れず、発熱外来に時間を割きました。

しかし、結局いつもの日曜日と同様に、朝9時半までには夕方までの受診予約が埋まってしまいました。
なので「熊本県新型コロナウイルス感染症専用相談窓口」には、早々と紹介ストップの電話を入れました。
当院が受入を止めたら、相談窓口はどの医療機関を紹介するのかわかりませんが、やむを得ません。

第6波は、第5波に比べて急峻に立ち上がったので、逆にむしろ早期の収束を私も期待していました。
ところが、仮にピークアウトしても、その後の急激な「立ち下がり」が期待できない雰囲気になっていますね。

このピークを山にたとえた質問に対して、「マッターホルンよりも富士山型、あるいはもう少し」と尾身会長。

富士山だと、立ち上がりもなだらかなはずですが、そこには言及しないようです。
ともかく、ピークが思いのほか長くなるという意味なのでしょうけど、ほんとに富士山で済むのでしょうか。
延々とピークが続いたら、次は何と表現するんでしょう。デカン高原ですか、なんならギアナ高地ですか。

ピークが小刻みに増減を繰り返す場合には、根子岳型と呼ぶのが分かり易いですね、熊本県人には。
ていうか、たとえ話って、つい話の「上手さ」とか「辻褄」に気を取られて、本筋を忘れてしまいます。

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濃厚接触者の自宅待機期間の短縮は妥当
- 2022/01/14(Fri) -
オミクロン株は重症化しにくいと言われても、この感染者の増え方はどうしたもんですかね。それはさておき、

濃厚接触者の宿泊施設や自宅での待機期間が、現在の14日間から10日間に短縮されることになりました。
もちろんこれは、医学的なリスクを冒してでも社会経済活動を優先させよう、というわけではありません。
医学的に許容される範囲での、妥当な判断です。これまでの規定ではムダに用心しすぎだというわけですね。

医学的根拠があれば、隔離・待機時間は短縮しても良い、むしろそうすべきだと私も以前から思っていました。
ただし問題が2つ。

ひとつは、今回の変更が適用できる対象はオミクロン株であって、デルタ株には問題があるかもしれません。
オミクロン株への置き換わりが前提の、現実的な方針転換だとは思いますが、感染は少し増えるでしょうね。

もう一つ。エッセンシャルワーカーに限り、6日目の検査で陰性なら復職可という部分には、疑問を感じます。
警察・消防・教育・介護は社会にとって重要だから、感染リスクがあっても出勤して良いわけじゃありません。
6日間待機した上で検査して陰性なら、感染の可能性は無いとみなせるから職場復帰を認めるわけです。

でもそれならば、エッセンシャルワーカー以外の職業だって、医学的観点からの出勤要件は同じでしょう。

濃厚接触者の隔離・自粛期間は、社会的理由で決めるのではなく、純粋に医学的理由で決めるべきもの。
この際、医学的根拠をきちんと詰めて、職業を問わず濃厚接触者全員の行動規制の緩和を打ち出すときです。

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爆発的な第6波の予感
- 2022/01/07(Fri) -
3連休を前に、新型コロナのオミクロン株が日本中で猛威を振るい始めています。
今日の東京の新規感染者数は922人。昨日の641人の1.44倍でした。
沖縄はなんと1414人。奇しくも昨日の981人の1.44倍です。まさしく、2日で2倍のペースじゃないですか。

熊本も油断できません。一昨日の5人から昨日24人に増えたと思ったら、今日はもう31人。
もしも今後2日で2倍のペースで増え続けるなら、1カ月後には熊本県民が全員感染してしまう計算になります。

それは無いとしても、欧米のように日本全国で毎日数十万人の感染者が出る日が来る可能性はあります。
オミクロン株は軽症のようですが、感染者数がとても多ければ、一定数の重症者や死亡例も出ることでしょう。

しかし、今年1年間の日本の感染者数が1千万人に達することになったとしても、驚くことはありません。
いまは影を潜めている季節性インフルエンザの感染者数が、2年前までは毎年ほぼ1千万人だったからです。
そのインフルエンザの死亡数は約1万人だったので、死亡率は0.1%。
新型コロナは、インフルエンザに近いか、それよりも軽い感染症に落ち着こうとしているようにも見えます。

両者の大きな違いがあるとすれば、治療薬がまだ十分に普及していない点でしょう。
経口薬の「モルヌピラビル(商品名ラゲブリオ)」は、ようやく一部の医療機関で処方が始まったばかりです。
当院でも処方できるように手続きはしていますが、まだ準備段階です。いや、もう処方できるのかな?
今日はその薬の「市販後調査」に関するWeb説明会が「Zoom」で行われたので参加しました。

どうやら当面は、副作用等の報告を定期的に(2週間毎に!)行うことになります。なかなか面倒臭いです。
いまのところは、インフルエンザに対するタミフルのように、気軽にホイホイ処方できる薬ではなさそうです。

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日本もついにオミクロン株が激増か
- 2022/01/05(Wed) -
新型コロナの新規感染者数が、沖縄623人、東京390人と発表され、一気に危機感が高まった気がします。
去年の正月は大変だったけど、今年はわりと平穏だなぁと思っていた自分を、訂正しなければなりません。

当院は今日が、新年最初の診療日でした。昨日の火曜日は当院の定期休診日だったためです。
「2月、3月には第6波を迎えるでしょう」と、職員を前にのんきな話をしたのは、つい今朝のこと。
欧米で感染者が激増していますが、すぐに日本に当てはまることでもなかろうと思っていたのでした。

オミクロン株に置き換わったがゆえの、指数関数的な増え方と考えられます。今後の予測もつきません。
東京の新規感染者の半数以上は、ワクチンを2回接種済だったといいます。もう接種歴はアテになりません。

もちろん、オミクロン株は比較的軽症ということだし、接種歴だってあながち無意味じゃないでしょう。
また、3回目の接種や経口薬に期待することもできます。
しかし当面、指数関数的な感染者数の増加に、迅速かつ効果的なブレーキをかける術はないでしょう。
マンボウとか緊急事態宣言という「劇薬」を使うとしたら、こんどは副作用の方が心配になります。

これまでの感染者数が欧米に比べて圧倒的に少なかったのが日本の奇跡だとしても、今後はわかりません。
デルタ株には比較的強かった日本人が、オミクロン株にはからっきし弱い、なんてことだってあり得ますから。

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「アルコール消毒」だけでは感染性胃腸炎は防げません
- 2021/12/27(Mon) -
「感染性胃腸炎」が多いですね。このことは1カ月前にも書きましたが、それからずっと、一貫して多いです。

熊本市の「感染症発生動向週報」では、感染性胃腸炎が断トツで、RSウイルス感染症も増加気味。
先月と同様に、ロタウイルスによる感染性胃腸炎は、ほぼゼロ状態。いま多いのはノロウイルスのようです。
野呂さんには申し訳ないですが、お役所にならって、私も略称の「ノロ」を使わせていただきます)

ノロに限らずロタもアデノも、胃腸炎ウイルスの多くは「ノンエンベロープウイルス」です。
これは、ウイルスの本体である核酸を包む殻が、脂質の膜「エンベロープ」に包まれていないウイルスです。

コロナウイルスのような「エンベロープウイルス」はアルコールで失活するので、アルコール消毒が有効です。
一方で「ノンエンベロープウイルス」は、アルコールに強いのが特徴であり問題です。

いま、どのご家庭にもアルコール消毒薬が完備されているでしょうけど、感染性胃腸炎には役に立ちません。
手指消毒は速乾性のアルコール消毒薬が便利なので、つい手洗いを怠りますが、それが問題なのです。
昨日も今日も一昨日も、感染性胃腸炎で「全滅」したご家族が、何組か受診されました。
手軽なアルコール消毒を過信して、胃腸炎ウイルスが家庭内にまん延することになったのかもしれません。

このことについては、役所やメディアや、もちろん医療者が、市民に正しい知識を広めなければなりません。
とは言え、この時期に感染性胃腸炎が多いのは例年並です。熊本市の資料では2016年とほぼ同じです。
なので、「アルコール消毒過信説」は、もっともらしいけど違うかもしれません。
考えてみたら、ロタウイルスによる感染性胃腸炎がまったく発生していないことにも、説明がつきませんしね。

でも私は、胃腸炎診療の後は、アルコール消毒→石けん・流水で手洗い、の2段構えです。面倒です。

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オミクロン株流行までの時間稼ぎする間に、前倒し接種を進めなきゃ
- 2021/12/24(Fri) -
あ〜あ、とうとう出ちゃいましたか。熊本では40日ぶりに新型コロナ感染者が確認されました。ガッカリです。
大阪府在住の方のようで、まさかオミちゃんじゃなかろうかと、ちょっと気になります。

その大阪や京都に加えて、今日は東京でも、オミクロン株の市中感染例が出ました。しかもクリニックの医師。
この医師の濃厚接触者は5人。いまのところ全員陰性、と聞いて私が思ったのは、たったの5人?、てこと。
どうやら、診察の際にはマスクとフェースガードを着用しており、患者は濃厚接触者には該当しないのだと。

念のため都は、クリニックの職員と受診患者の合計約100人に検査を受けるよう呼びかけているようです。
しかし、その100人の検査は任意だし、隔離もされず、普通の社会生活を送っているのでしょう。
てことは、マスクとフェイスガードを着用すれば、診療行為で患者に感染させることはないとの判断ですか。

であるなら、万一私が感染しても、マスクとフェイスガード装着で診療はできるのでしょうか?、まさかね。

入国者に対する水際対策が極めて厳しい割に、市中感染者の濃厚接触者の少なさはどうしても気になります。
あるいは濃厚接触者と認定されても、その全てが宿泊施設等への隔離に同意しているわけではありません。

今後また感染者が大幅に増えることは間違いなく、いま行っている対策はそれを遅らせる効果しかありません。
その時間稼ぎの間に、できるだけ速やかに、ワクチンの追加接種や内服薬の準備を行わなければなりません。

ところが、熊本市から医療機関に正式に前倒し接種方針の連絡が来たのは、つい今日の夕方のことです。
私や当院職員は、1月ではなく11月には接種できたはずですが、今頃言われてももはや前倒しは不可能です。

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大人も子どもも、胃腸炎がやたら多い
- 2021/11/29(Mon) -
ひところは手足口病が多かったのですが、最近は胃腸炎が増えています。
下痢は軽く嘔吐が主体で、それも1日ぐらいで改善する例が多く、風邪症状を伴っている方も目立ちます。
保育園などで流行していて、それが家庭に持ち込まれて大人にまで広まるケースが多い印象です。

熊本市の「感染症発生動向速報・疾患別グラフ」を久々に見てみると、今年はかなり特徴的で驚きました。

まずインフルエンザは、今年1月からずっと、報告数がゼロです。あり得ないほどゼロの連続です。
地球上のインフルウイルスが増殖する機会を逸して、なんなら絶滅しつつあるんじゃなかろうかと思えるほど。

驚いたことに、乳幼児の感染性胃腸炎のボス格とも言えるロタウイルス感染も、ほとんど発生していません。
いま流行している胃腸炎は、たぶん風邪のウイルスによる胃腸炎症状ということなのでしょう。

さらに、リンゴ病、おたふくかぜ、クラミジア肺炎、マイコプラズマ肺炎なども、今年は激減しています。
このような変化も全部、新型コロナウイルス感染対策の「副産物」なのでしょうか。

一方で、突発性発疹やプール熱はほぼ例年通りで、手足口病やRSウイルス感染は例年以上に大流行しました。
マスクや手洗いが徹底しにくい乳幼児がメインの感染症だからでしょうか。

ならば、新型コロナが乳幼児の間に広まりやすいように変異すると、これはもう一大事ということになります。
ワクチンはもちろんですが、インフルに使うタミフルのような、子どもでも使える特効薬が早く欲しいですね。

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「尾身苦労」なんて言ってる場合じゃないかも
- 2021/11/28(Sun) -
南アフリカで確認され、欧州に広がりつつある新型コロナ変異ウイルス「オミクロン株」が不気味ですね。
感染力が強く、ブレイクスルー感染が多いというのも気になります。

今後、デルタ株はどんどんオミクロン株に置き換えられていくのでしょう。喜ぶのはデルタ航空だけです。

「ゲームチェンジャー」だと期待してきたワクチンが、もしかすると役に立たなくなるかもしれません。
今度はオミクロン株の方が、新たな(悪い方向への)ゲームチェンジャーになるんでしょうか。
日本の奇跡が、絶妙なタイミングで一気に接種が進んだワクチンのおかげだとしたら、その威光も消えます。

ギリシャ文字のアルファベット順に命名していた変異株名を、WHOは2つ飛ばして「オミクロン」としました。
以前私が「予言」していた「クサイ」が、なぜ飛ばされたのか。何か臭いますね。ネットもその話で持ちきり。

WHOは、「クサイ」の英語表記「xi」が人名に使われるので、ガイドラインに基づいて避けたとしています。
でもはっきり言えば、習○平の「習 (xi) 」と同じ表記なので、WHOが中国に配慮したということですよね。

ちなみに「クサイ」の日本語表記は「臭」です。ふざけて「臭○平」なんて書いたら、絶対怒られます。

(おことわり)本日のブログが中国共産党のネット検閲組織に見つかったら困るので、一部伏せ字にしました。

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思春期の心雑音
- 2021/11/06(Sat) -
学校検診をしていると、しばしば心雑音が聞こえる子に遭遇します。
小学校の高学年で初めて指摘された心雑音では、心臓病は希で、たいていは貧血による「機能性心雑音」です。
よく尋ねてみると、立ちくらみがするとか、体力が落ちたとか、朝起きるのが辛くなった等の訴えがあります。
あるいはまた、微熱や舌の荒れなどの、明らかな貧血兆候が出ているお子さんもいます。

眼瞼結膜がまっ白な貧血例は多くなく、血液検査でわかる程度の軽い貧血と鉄欠乏を認めます。
あるいは、ヘモグロビンは正常だけど貯蔵鉄量を示す「フェリチン」が低値のケースにもよく遭遇します。
体内の鉄分が少ないと、すでに貧血の症状が出てきます。これが「潜在性鉄欠乏」です。
一般的な血液検査では貧血とは診断されないので、見逃されることも多いようです。

小学高学年から中学生は、からだの発育や運動量の増加によって、鉄やその他の栄養素が欠乏しがちです。
急に身長が伸びつつある時期や、部活で激しく運動しているお子さんは、しばしば鉄欠乏になっています。
それに加えて思春期は、月経が始まったりメンタル不安定だったりダイエットしたりと、鉄欠乏の要因だらけ。

鉄欠乏症状のお子さんの体調は、造血剤によって目に見えて改善し、たとえば部活の成績が向上したりします。
ただし薬の副作用で、下痢や便秘、食欲不振や吐き気を起こし、薬の中断を余儀なくされることもあります。
日頃から、鉄分を多く含む食品(たとえば赤みの肉や魚)を多く摂るような食生活を心がけるのが肝要です。

ちなみに私が中学生の頃、今風に言うと「鉄分が濃い」時期がありました。鉄道ファンだったということです。
そんな私も市民病院時代には、軽い貧血になったことがありました。4カ月で16キロ減量したときです。
いまでは「鉄分」(=鉄道への興味の度合い)はすっかり薄れていますが、体重は維持し貧血はありません。

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ワクチンの3回接種でコロナ収束を目指せるか
- 2021/09/18(Sat) -
新型コロナワクチンは、日本でも3回目の接種を行うことが正式に決まりそうです。歓迎します。
米国にならって、接種時期は2回目から8カ月後以降。私の場合は早くても来年1月ですか。

ブレークスルー感染が心配なので、3回目の接種で格段に抗体価が上がるという報告には、そそられます。
抗体価だけが免疫力の指標ではありませんが、私はもう、3回目を打つ気まんまんです。なぜなら、

・発熱外来をしており感染のリスクが高い(発熱者の一部が実際に感染者であるが、診療中にはわからない)
・自分の感染が周囲に及ぼす影響が大きい(発症前の無症状で感染力のある時期に、一般診療をしてしまう)
・ワクチンの接種を推進している立場でもある(副反応の心配よりも、感染防御の方が大事と力説している)
・3回接種率が高くなって初めて、集団免疫が成立すると信じている(つまりコロナが収束する有力な手段)

考え方は人それぞれで誰にも強制はしませんが、ワクチン接種には一定の公共性があると、私は思っています。

ニューヨークフィルの公演では、いかなる理由があっても未接種者は入場できないとしたことも理解できます。
医学的理由や思想信条の自由はあっても、感染予防のためには制限される人権もあるのです。少なくとも今は。

もちろん、接種していない人でも分け隔て無く社会活動ができる日が、一日も早く来て欲しいと願っています。

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もはや「集団免疫」の成立は無理なのか
- 2021/09/08(Wed) -
緊急事態宣言は、多くの都道府県で今月30日まで延長されることになりました。熊本のマンボウも延長です。
新規感染者数は減少傾向があっても重症者数が多く、医療体制の厳しい状況が続いているという判断でしょう。

そんな中で、ワクチンの接種による「集団免疫」の獲得は難しいと指摘され始めています。
従来言われてきた人口の6,7割の接種率では、デルタ株の感染力には太刀打ち出来ないとわかったからです。
「8,9割接種しても大丈夫か分からない」と専門家会議の脇田座長。じゃあ実質的に無理じゃん、て話です。

「やがて集団免疫が成立したら、あなたは周囲の人から守られますから、接種しなくても心配要りませんよ」
私はこれまでに、どうしてもワクチンを接種したくない方には無理強いせず、そのように説明してきました。

しかしどうやら、集団免疫に過度な期待はできないようです。自分の身を守るためには接種が必要なのです。

もちろん、何らかの理由でワクチンをどうしても接種したくない(できない)方もいるでしょう。
もしも可能なら、その方の家族や職場など、すぐ周囲の方のワクチン接種を強く推奨する手もあります。
周囲の社会での接種率が十分に高ければ、局所的には集団免疫が機能するでしょうから。
接種可能な年齢の家族がみな接種をすることで、接種のできない小さなお子さんを守ることもできるわけです。

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この機会に「名古屋スタディ」を取り上げるメディアはあるか
- 2021/09/01(Wed) -
名古屋市の河村たかし市長が新型コロナウイルスに感染したことが、今夜の話題です。
東京五輪で金メダルを獲得した選手の、その輝かしい金メダルに「ガブリ」とかみついた、無神経な御仁です。

あと1カ月時間がずれていたら、ウイルスだらけの唾液が金メダルに付着したのかと思うと、ゾッとします。

性格的にだいぶヤバい人だと私は思いますが、その河村氏で思い出すのは、「名古屋スタディ」でしょう。
HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)について6年前に行われた、国内初の大規模調査研究のことです。

名古屋市の、小学6年から高校3年までの女子に対するアンケート調査で、約3万人のデータが解析されました。
この調査の目的は、ワクチンの接種後に起きた「副反応」とワクチンとの因果関係を立証するためでした。
「薬害問題」に関心のある河村氏が、「ワクチン被害者団体」からの要望を受けて行ったものです。

被害者団体から提示された24の症状について、接種を受けた人と受けていない人での比較が行われました。
その結果、ワクチン接種の有無とそれらの「症状」とは無関係である、ということが明らかになりました。

当時私は、その結果を聞いて驚きましたが、いちばん驚いたのは被害者団体と河村市長本人でしょう。

画期的なその調査速報は、いったん名古屋市のサイトで公開されましたが、すぐに削除されました。
不都合な結果を認めたくない方面からの圧力によって、科学的な研究結果が事実上もみ消されたわけです。
結果の「生データ」は現時点でも掲載されていますが、それを踏まえた「考察」はなされていません。

さいわい、研究を主導した学者が独自に論文発表したので、名古屋スタディは日の目を見ることになりました。
それと同時に、河村市長や被害者団体の理不尽で非科学的な態度が、明らかになったのでした。

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ワクチンを接種しても感染することはあるので誤解なきように
- 2021/07/04(Sun) -
新型コロナワクチンの接種後に発熱が続いたと思ったら、新型コロナウイルスに感染してた!
そんな有名人の事例が報道されるので、副反応と発症とはどのように区別するんだ、って話になっています。
たとえば接種の6日後に発熱した額賀元財務相や、2日後に熱が出た気象予報士の依田さんのことです。

このような報道はしかし、誤解を招かぬよう、もう一歩踏み込んでほしいものです。

というのも、「ワクチンを打ったらコロナに罹ってしまうことがあるんですね」と言う方が最近いたからです。
「ワクチンを打っても」じゃなくて、「ワクチンを打ったら」てところが問題。
つまり「ワクチンから感染することがあるんですね」という意味なのです。これは誤解です。

新型コロナウイルスワクチンの成分で新型コロナウイルスに感染することは、あり得ません。

ここでワクチンのおさらい。
・生ワクチン:病原体を弱めて接種し、感染した時と同じような体の免疫反応を起こさせるもの
・不活化ワクチン:病原体を無毒化したもの(の一部)を接種して、からだに病原体の特徴を覚え込ませるもの
・mRNAワクチン:病原体の一部の設計図を接種して体内でそれを作らせ、その特徴を覚え込ませるもの

mRNAワクチンは人類未体験の新しいメカニズムの薬ですから、未知の副反応が絶対ないとは断言できません。
それでも接種が推奨されているのは、新型コロナに罹患することのリスクと天秤にかけた上での判断です。
基本的には接種推進派の私ですが、接種をためらう人には強くは勧めません。それが私の精一杯の良識です。

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新型コロナの「抗原検査」にも、いろいろあります
- 2021/06/20(Sun) -
東京五輪出場のために来日したウガンダ代表選手団9人のうち1人で、新型コロナ感染が確認されました。
成田空港到着時の抗原検査で陽性だった1人に、PCRで再検査を行ったら陽性だった、という経緯です。

「抗原定量検査『陽性』→PCR検査で確認」というのが、五輪海外選手らの来日時や滞在中の検査の流れです。
時間的制約や選手の負担を考慮したものでしょう。同じ唾液検体を用いて検査できるのが利点です。

「抗原定性検査『陰性』→PCR検査で確認」というのが、病状にもよりますが当院発熱外来での検査方針です。
鼻腔ぬぐい液を用いるこの検査法は簡便で判定時間も短いので、感染者の早期発見のためにはとても有用です。

同じ「抗原検査」ですが、定量検査はPCR検査並に感度が高いとされ、一方定性検査の感度はイマイチです。
なので抗原定性検査は、陰性証明のためには使えません。あくまで、陽性判定のために使う簡易ツールです。

とは言え、とりあえず抗原検査だけやってみましょうかというケースは、不本意ながら当院でも多いですね。
少なくとも発熱外来レベルでは、どのような検査も本人の承諾なしには行えません。
抗原検査なら応じるけどPCRはイヤ、という方に対して、PCR検査を無理強いすることはできません。

その「感度が低い」とされる抗原定性検査なので、もしも陽性だったら、もうPCRはせずコロナ確定です。
なので今回の五輪選手のような「抗原陽性→PCR検査」という報道があると、現場はやりにくくなるのです。

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熊本市の「高齢者の接種は7月末完了見込み」だそうです
- 2021/05/13(Thu) -
神戸市で、新型コロナワクチン960回分を誤って最長3時間ほど常温に置き、使用できなくなった件。

3時間は論外としても、5分や10分ほど放置した後に冷蔵するようなケースは、今後もあるかもしれません。
ワクチンの効果が減弱または消失しかねないようなルーズな管理に、現場の誰かが気づくかどうかです。

960回分がムダになったことよりも、温度管理の重要性と現場の認識の甘さが露呈した一件だと思います。
誰も気づかなければ、問題のワクチンはそのまま接種に使われます。見た目には何の異変もありませんから。

やっと接種出来た希望のワクチンが、じつは手違いで効果の無いものだったとなれば、なんと罪深いことか。

その意味では、ワクチンの希釈を間違えて、うっかり生理食塩水を注射してしまった奈良の事案も同じ事です。
使用後のバイアルに生食を注入した時点で、もはやこの液体がワクチンかどうかは見た目ではわかりません。

誰にも気付かれないまま、効果の無い液体が注射されたケースが他にないかどうか、確かめようもありません。

通常の予防接種でミスが起きにくいのは、準備から接種までの手順が確立し、作業が安定しているからです。
一方で新型コロナワクチンは、管理が難しく接種方法も新しいという、強い緊張を強いられる接種作業です。
それなのに、7月末までに接種を終えよ、などと無理筋な指示を受け、安全な接種が脅かされているのです。

昨日、各医療機関の9月初めまでの毎週の接種計画数を尋ねるFAXが、熊本市から届きました。
7月末までの接種数の総計で、熊本市の高齢者全員が2回接種できるか、調査したいのでしょう。
ただしその回答期限を待たず、熊本市は「高齢者の接種は7月末完了見込み」と発表してますけどね。

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新型コロナワクチンへの、期待と不安
- 2021/04/24(Sat) -
「屋外であっても、無風で密集していたら、マスクなしではコロナの感染リスクは高い」
スパコン「富岳」によるシミュレーションで、屋外での飲食でも油断できないことが判明したとのこと。

でもこれ、60x120cmのテーブルを10人で囲むという、いまどき誰もやらないような設定ですけどね。
まあともかく、屋外でも無風の時は密集するな、マスクを着けよ、ということなんでしょうね。

敢えて言わせていただければ、そんなコトよりも、富岳は治療薬に開発のために集中的に使っていただきたい。
と私が言わなくても、もちろん、あらゆる研究所や大学や企業が、いま全力で開発中だとは思います。
できれば日本から、画期的な特効薬を出したいですね。ワクチン開発では完全に、遅れをとりましたから。

それはともかく、とりあえずはワクチンですが、接種率はまだ低い上に、副反応への懸念もぬぐえません。
1日でも早く接種を受けたい人がいる反面、接種をためらう方も多く、考え方方はさまざまです。
予防接種のメリットとデメリットを天秤に掛けるようことを、全国民に無理強いするわけにもいきません。

少しでも心配な方は、あわてて接種せずに、国民の一定割合が接種を済ませた頃に考えれば良いと思います。
ものすごく心配な方は、国民の大多数が接種するまで待っても良いのです。
集団免疫が成立すれば、未接種の方も感染から守られる日が来ます。その考え方も許容されると私は思います。

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二重マスクだからと油断しないこと
- 2021/04/04(Sun) -
「二重マスク」の人が増えていますね。
2カ月前頃からでしょうか、日本だけでなく、アメリカのニュース映像を見ても、多くの方が二重です。
以前、マスクはファッションじゃない、などと河野大臣の二重マスクを批判的に書きましたが、訂正します。

基本性能に優れる不織布マスクと、オシャレな布マスク。二重マスクはいいとこ取りができますからね。

となるともちろん、内側が不織布で、外側が布になるように着けなければなりません。
もしもその反対に装着すると、隙間はあくし、見た目も不格好で、二重マスクのメリットがゼロです。

二重にすれば、二枚のマスクを貫いて正面に抜ける呼気の抵抗が増します。
その分、マスクの上下左右の隙間から逃げ出る呼気が増えやすくなります。だからフィットは重要です。
逆に、内側の不織布マスクが完璧に装着してあれば、感染防御の観点からは、一重でも十分とも言えます。

そう言いながら実は、最近私は診療中に、不織布のサージカルマスクを二重に着けています。
外側のマスクを、内側のマスクよりも数ミリ頭側にずらして着け、鼻の脇の隙間を完璧に塞ぐ魂胆です。

そのような二重マスクに加えて、発熱者等の診察では必ずゴーグルかフェイスシールドも着けています。
コロナの疑いが少しでもあれば、これにガウンと手袋と、場合によってはキャップも加わります。

そんなに物々しく防護を重ねていますが、私がいちんばん注意しているのは、最初の内側のマスクの装着です。
感染防護具として重要なのは、内側の不織布マスクが隙間なく装着されているかどうか、それに尽きます。
二重に着けていることで油断して、顔へのフィットをおろそかにすることは絶対避けなければなりません。

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季節はずれのRSウイルス感染症大流行
- 2021/03/23(Tue) -
「RSウイルス感染症」がいま、熊本で大流行しています。
この感染症は例年、秋口から冬に流行し、インフルエンザが流行り出すとまるで道を譲るように影を潜めます。
ところが今期は、そのライバルのインフル不在をいいことに、年明けからぐんぐん増えてきました。

いま3歳以下の、高熱+ひどい咳、のお子さんの大半は、RSウイルス感染症かもしれません。
いや、大きな子でも大人でも、病状は軽くてもRSウイルス感染による咳をしている方がいるかもしれません。
あちこちの保育園で流行しているので、「園で検査するように言われた」と来院する方が毎日何人もいます。

しかし、要望されたからといって検査(鼻咽腔ぬぐい液による迅速検査)するわけではありません。なぜなら、
(1)1歳以上では(原則として)検査に保険がきかない
(2)RSウイルス感染に特効薬はなく、RSであろうとなかろうと治療法は病状に応じた対症療法になる

ということで当院の場合、すぐに検査をするのは、0歳で高熱で呼吸音や顔色が悪い子などに限定しています。
3歳未満の子は医療費がタダなので、気軽に検査を希望する親御さんがいますが、そういう訳にはいきません。

1歳以上だと保険がきかないので自費診療となり、乳幼児医療の恩恵もなくなって窓口負担が生じます。
自費診療と保険診療を併用する「混合診療」は禁じられているので、規定により医療費は全額自費になります。
RSウイルスの検査をしたばっかりに、驚くほど高額な医療費を窓口で支払うことになりかねないのです。

そのような医療制度でありながらしかし、現実には必要に応じて1歳以上でもRSの検査を行うことはあります。
保険が利かないし、しかし混合診療にもできないので、結局、医療機関がサービスで検査しているのです。
園の要望だから検査するのではなく、その子の診断を確定させて納得して治療をしたいがための検査です。
当院に限らず多くの医師が、そのようなサービス検査をしているのが現状です。これは本当に問題なのです。

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優先接種の対象者は、見直さなくても良いのか
- 2021/02/25(Thu) -
「高齢者へは4月12日開始」という菅首相の発言に続いて、河野大臣が接種スケジュールを明らかにしました。

まず4/5の週に、東京・神奈川・大阪に4箱ずつ、他の道府県には2箱ずつ、計100箱を発送する予定だと。
このワクチンの接種を4/12から接種すれば、高齢者5万人の2回分の接種に相当するという説明です。

翌週は全国に500箱、その次の週にも500箱、ここまでがおそらく「4月中」に接種できる数量となります。
全部で1,100箱。全国3,600万人の高齢者のうちの55万人の、2回分の接種に相当する量です。

ずっとこの調子だと、高齢者の接種だけで2年以上かかりますけどね。5月からのペースアップを期待します。

「年寄りよりも、若い人が先に打ったらどうなの」
そう言う高齢者の方が時々いますね。誰も大きな声では言いませんが、私もそれには一理あると思います。

高齢者への接種を優先する理由は、高齢者がコロナに罹ると重症化しやすく、死亡する確率も高いからです。
一方で若者は、どちらかと言えば軽症で死なない。そのかわり感染拡大への関与が大きいとされています。

ワクチンに「重症化予防」を求めるなら高齢者優先であり、それは病床ひっ迫を軽減する意義もあるでしょう。
一方で「コロナ収束」が目的なら、若者など行動半径の広い人から接種する方が効率が良いはずです。

たとえば、活動的な人に優先的に接種して、しっかり経済を回してもらうって考え方はどうでしょう。
飲食店をよく利用する人とか、人前で喋る人(?)とか、そんな人が真っ先に接種したらいいんじゃないの。
せっかく感染者が減ってきたんだから、この機にワクチンを感染再拡大を防ぐ切り札にしたいものです。

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接種後のアナフィラキシーには、ビビらないこと
- 2021/02/21(Sun) -
米国CDCは、1カ月間に接種された新型コロナワクチンの、「接種後の健康への影響」を報告しました。
それによると、約1,380万回の接種後に、死亡した人が113人、アナフィラキシーは62件あったとのこと。

この数値を見て、アナフィラキシーどころか、死ぬ人が多いじゃん、ヤバくね?、と思う人もいるでしょうか。
死因を分析した結果、ワクチンとの「因果関係」はないことが判明しているので、そこは安心してください。
つまり、ワクチンを接種したあとで、たまたま別の原因(持病?)で亡くなったと、そういうことでしょう。

しかし、「前後関係」があるだけで関連性もあるかのような報道をしてきたのが、日本のメディアです。

例えばHPVワクチンは、ワクチン接種後に起きた異常な事象の映像を、テレビが繰り返し報じ続けました。
そこに因果関係があるかどうかの検証など無く、前後関係だけを強調して誤った情報を植えつける手法です。

ついには厚労省までが及び腰になり、積極的勧奨を中止してしまいました。それからもうじき8年になります。
この「失われた8年間 (以上?)」のせいで、将来何万人が子宮頸がんで死ぬのかと思うと、残念でなりません。

新型コロナワクチン接種後のアナフィラキシー発生率は、冒頭のCDC報告では100万回あたり約4.5件です。
日本でもその発生率なら、3月には毎週2,3人程度、アナフィラキシーが出てくることになります。

副反応騒ぎにすぐビビる厚労省が、新型コロナワクチンの接種を完遂できるのか、正直なところ私は不安です。
メディアの非科学的な扇情報道に惑わされず、あくまで科学的に、粛々と接種を進めてほしいものです。

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ワクチンへの「過度な期待」に対する警鐘
- 2021/01/25(Mon) -
ひとつのワクチンについて、国論を二分するような関心事になるとは、医者になって初めての経験です。
いつから、どこで、誰が、誰に、どのように接種するのか、実施計画はまだ、あらゆる段階で模索中です。

なかでもワクチンの効果や安全性については、日本ワクチン学会・岡田理事長の発言が波紋を広げています。
メディアはこぞって「過度な期待に対する警鐘」だと報じていますが、その報じ方自体が過度な印象です。

万一、日本での接種でアナフィラキシー等が起きたとき、メディアが張るキャンペーンがもう想像できます。
あの、HPVワクチンを巡る混乱と同じものが、また繰り返されるような気がしてなりません。

では、岡田先生の発言が問題なのかというと、私はそうだとは思いません。ここは謙虚に受け止めたい。
「(効果の持続性については)全くわからない」(全く新しい作用機序のワクチンですから)
「(各メーカーごとに)効き方も違うかもしれない」(まったく、その通りでしょう)
「100%有効で安全なワクチンはどこにもない」(ワクチンに限らず、すべての医薬品に言えることです)

ワクチン研究の第一人者が、この大事な時だからこそ、敢えて標準的な見解を念押ししているに過ぎません。
評論家やコメンテーターのようなヤカラが、聞きかじったことで論評するのとは、次元も重みも違います。

岡田先生の発言は、聞きようによっては「反ワクチン」的に受け取れ、それがメディアにはウケるのでしょう。
しかし彼は、反ワクチン発言をしているのではありません。強いて言うなら、反「過度な期待」発言か。
実績の無いワクチンなので、慎重の上にも慎重を期す必要があることは、言うまでもありません。

しかしメディアは、全体を見てバランス良く報じたりせず、面白そうな枝葉をつまみ食いするタチなのです。

コロナ禍の収束が何よりも優先するこの時期に、人々が浮かれないように、岡田先生は釘を刺しました。
ワクチンの導入が異例の早さなので、慎重に進めていきましょうという、至極まっとうなご意見なのです。

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新型コロナをおさらいしてみました
- 2021/01/03(Sun) -
長い連休をいただきましたが、明日から当院は、新年の診療を開始します。
今日はその準備の日として、新型コロナ関係のおさらい(最新情報の確認)に当てました。
途中、年賀状とかダーウィンとか麒麟が来たら中断です。

医療上の規定や通知は更新され続けているので、一次情報を中心に、ネットで確認していきます。
(1)厚労省の「医療機関向けの情報一覧(事務連絡等)」を、新しい方から2,3カ月分を読み返す
(2)自治体や医師会の資料は、最新分のみ再確認(多くは厚労省の情報とダブる)

学術的な情報の完成度は一般的に、書籍>雑誌>ネット、ですが、鮮度を優先すると順位は逆になります。
なので、学術機関・公的機関のサイトを中心に、最新のまとめを探します。
報道メディアのサイトにも新鮮な情報が掲載されていますが、飛ばしも混在しているので要注意です。
一方で、きわめて詳細な引用文献付のコロナまとめを随時更新している、素晴らしい個人ブログも見かけます。

厚労省が発行する「診療の手引き」は良くまとまっていて、最新版が出たばかり。一般の方も一読に値します。
そのほかにも、さまざまなまとめサイトがありますが、半年以上更新されていないものも目立ちます。
新型コロナに関しては、先がまったく読めないほどの展開を見せ続けているので、新しい情報が必要です。

とくにいま、私の注目点は次の3つ。
(1)ワクチンの、日本における接種開始時期や具体的な接種方法と、欧米における中期的安全性データ
(2)感染者数・重症者数の今後の推移と、緊急事態宣言を含む政策の動向
(3)変異株は、ただ感染しやすいだけではなく、子どもへの影響が大きい可能性があるのは本当か

ワクチンが完成した矢先に、人類をあざ笑うかのように出現した変異株がいま、猛威を振るい始めています。
高齢者だけでなく、いやむしろ、子どもにこそワクチンを優先接種しておくべきなのかもしれません。

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