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PET検査と安静
- 2019/07/30(Tue) -
自分のがん検診の一環として、今年も「PET-CT」検査を、去年と同じ済生会病院で受けて来ました。

この検査でからだに注射する、ブドウ糖に似た「18F-FDG」という物質は、半減期110分の放射性物質です。
比較的短い半減期なので、使用する直前に製造しなければ使い物になりません。
私に投与されたのは、久留米市の某社で今朝製造されたばかりの薬だそうです。

経験者ならご存じの通り、注射の後は約1時間、FDGが細胞に取り込まれるのを待ちます。
がん細胞は増殖が盛んなためブドウ糖をたくさん消費しており、FDGも他の細胞よりも多く取り込まれます。

からだを動かすと筋肉細胞にもFDGが取り込まれてしまうので、じっと安静にして待つのが大事です。
待っている間にケータイ等で電話すると、手や口にFDGが集積し、口腔などのがんを見つけにくくなります。
暗い待機室で、横になって目を閉じて、体をなるべく動かさず、なんなら寝て待つぐらいが良いのです。

そうそう、その待機室なんですが、壁際に置かれたリクライニングチェアがちょっと問題でした。
横になってイスが少し動いた時、左手の小指がイスと壁に挟まれてしまい、ひどい激痛に見舞われました。
イスと壁の間隔が2センチ程度で、イスが自由に回転するという、指を挟まない方がおかしい配置なのです。

注射後はしばらく安静にしておく必要があるのに、出だしから激痛に悶える羽目になりました。

その約1時間後、突然、撮影時間が来た旨を告げるインターホンがなりました。
爆睡していた私は驚いて身を起こし、しまった、激しく動いてはいかんと思い出して再び仰臥位になる。
ところがその瞬間、またまた左手の小指を激しく挟んで悶絶。痛みに耐えながらの撮影開始となりました。

痛みに気を取られていたため、撮影台上での体位に気を遣う余裕がなく、あちこちに不具合が起きました。
とくに背中の皮膚(皮下脂肪?)の「たくれ」を修正せぬまま体を固定されたのが、いちばん不本意でした。

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風疹対策ようやく始動
- 2019/07/29(Mon) -
風疹(風しん)の追加的対策」は、熊本市では7月末までズレ込みましたが、ようやく始動したようです。

本対策の政令が施行したのは2月1日。熊本市ではその実施までに約半年を要したわけです。
初年度の対象者(昭和47年4月2日〜昭和54年4月1日生まれ)に、熊本市からクーポンが届き始めています。
そして昨日は、当院第1号の対象者が、風しん抗体検査を受けるために来院されました。

そうかと思えば今日は、他の自治体での検査結果をふまえて、ワクチン接種のために来院した方もいます。
おそらくその自治体では、熊本市よりはだいぶ早い時期に、クーポンの送付が始まっていたのでしょう。

このように、本対策の開始時期には自治体間で差があり、風疹対策への意気込みの違いを感じてしまいます。

そういえば、消費税増税に際しての「キャッシュレス・消費者還元事業」の方も、だいぶ遅れてますね。
どの店で買えば5%のポイント還元が受けられるか、私はその情報を早く知りたくてウズウズしているのに。

経産省のサイトによれば、対象中小店舗の公表は7月下旬に行われるというスケジュールになっています。
ところがもう7月29日になったというのに「近日公開予定」のまま。7月はあと2日しかないですよ。

いてもたってもいられず、今日の昼休みに経産省の「ポイント還元窓口 消費者向け」に電話してみました。

この手の窓口はかなり待たされるだろうと思いきや、1コールですぐにオペレーターが出たので慌てました。
オペレーターを大幅に増員して待機しているというよりも、たぶん、問い合わせ自体が少ないのでしょう。

「いったい、いつになったら公開するのか」と問いただしましたが、「まだなんです」との返答のみ。
ただ、そのオペレーターの女性がアニメ声だったので、なんとなく私も強気になれず、電話を切ったのでした。

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7月に日本脳炎注意報
- 2019/07/26(Fri) -
梅雨が明けたと思ったら、昨日は「日本脳炎注意報」が熊本県で発令されました。
定期的に調べているブタの血液中に、最近日本脳炎ウイルスに感染した証拠の抗体が検出されたからです。
そのようなブタの体内でウイルスが増幅すれば、そのブタを刺した蚊が、人への感染を媒介するのです。

日本脳炎注意報について昨年書いたのは、8月17日でした。発令日は8月15日です。
平成25年の発令日は9月2日でしたが、その後5年間はずっと、8月に(おもに中旬に)発令されています。

なので当院では例年、8月中には日本脳炎ワクチンを接種しましょう、なんて啓蒙してきました。
しかし今年は、もっと早めの接種が必要かもしれません。いつ接種すべきかといえば、今でしょう(古い)。

それにしても、7月に日本脳炎注意報が発令されるとは、ちょっと驚きます。
地球温暖化の影響でしょうか。いやそれは違うでしょうね。
平均気温の上昇なんて100年で2度程度。この数年で日本脳炎注意報が早まってきた理由にはなりません。

そういえば、暑すぎると蚊の活動が低下するなんて、昨年の猛暑の頃に言われましたよね。
となると、今年の夏はむしろ、昨年よりも少し気温が低いのかもしれません。

日本脳炎ウイルス感染対策としては、毎度同じことを言うようですが、次の3つです。
(1)蚊(コガタアカイエカ)に刺されないように心がけること:蚊の多い場所では長袖・長ズボンを着用
(2)休養、栄養、睡眠を十分にとり過労を避け、体力の保持に努めること
(3)日本脳炎ワクチンを接種すること

このうち(1)(2)はなかなか守れませんが(3)は簡単です。大人もワクチンを接種できます。ぜひ計画を。

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研修医が執刀
- 2019/06/08(Sat) -
沖縄の病院で、胃がんの手術を研修医が執刀し、術後合併症で患者が死亡したことで、訴訟になっています。
合併症の詳細はともかく、研修医の執刀が「約束違反」だという点も、問題になっているようです。

たしかに、研修医が手術を執刀し、何かうまくいかずに問題が起きるケースがあります。
術前の説明が十分だったか、という点が最大の問題でしょう。
しかし世間は、少なくともマスコミは、「研修医が執刀」という部分に食いつくんですよね。

研修医が執刀する場合、少なくともその術式を初めて執刀するときは、経験豊富な指導医が助手を務めます。
手術を指導をするだけでなく、研修医がミスをした場合に適切に対処・修復することこそ、指導医の仕事です。

その意味では、上級医師の指導下での手術の責任は、指導医にあると考えていいでしょう。

私自身の経験で言うなら、研修医の時の執刀は、極めて重要な危なっかしいものです。
もちろん指導医のカバーは必須ですが、執刀経験を積み重ねないと外科医は育ちません。

だからどうか、修練中の外科医が執刀すること自体は、大目に見てもらいたいですね。
そのかわり、指導医にはしっかりと監督していただきたい。

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史上最高額の医薬品登場
- 2019/05/29(Wed) -
3千万円を超える薬価の「キムリア」で先日は驚いたばかりですが、はるかに上を行く超高額薬が現れました。
1本が2億3千万円です。FDAに承認されたその薬は、脊髄性筋萎縮症(SMA)の治療薬「Zolgensma」です。

400万ドル以上になるという話もあった薬なので、今回決まった212万ドルはまさに「お値打ち価格」。
キムリアの時のように、日本で承認されたらかなり低価格になると思われますが、それでも億単位でしょう。

どうしてそこまで高額なのか、キムリアよりも10倍近くも高いのはなぜか。私にはよくわかりません。
キムリアは、患者の血液を原料にしてその中のT細胞の遺伝子を改変して増やし、それを体に戻す薬です。
高度な技術と手間ひまがかかることを考慮すれば、3千万円やむなし、みたいな気になります。

一方で今回のZolgensmaは、言ってみればただの注射薬です。静脈注射を1回するだけで、治療は完了します。

ただし、注射液の中身は「アデノ随伴ウイルス」というウイルスで、遺伝子の運び屋として使われています。
運ぶのは、SMAの異常遺伝子と置き換わるべく挿入された、正常な運動神経細胞生存遺伝子です。

このウイルスが病的な神経細胞に侵入して正常遺伝子を放出。それがDNAのしかるべき場所に入り込みます。
これによって、その病的細胞は正常な神経細胞となり、その働きも正常化するというわけです。

SMAのほか、さまざまな遺伝性疾患やがんの遺伝子治療が進みつつあります。医学の進歩には恐れ入ります。
でも、1本2億円のバイアル(薬瓶)って、うっかり落として割ったら大変ですね。私は扱いたくありません。

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医師自らの人体実験
- 2019/05/23(Thu) -
『Dr.夏秋の臨床図鑑 虫と皮膚炎』(夏秋優 著)という医学書を、何年か前に買いました。

そしたら、昨日のNHKの「ガッテン!」が、この本と夏秋先生を取り上げていたと聞きました。
さっそく録画を見てみましたが、夏秋先生って、自分でいろんな虫に刺されてその経過を撮影してたんですか。
どうりで、生々しい写真がたくさんあると思いました。まったく驚異的です。

そんな風に、自分が実験台になって病気になり、原因や病態や治療法を研究する人が、今でもいるんですね。

先日「日本住血吸虫症」に触れましたが、この病気の感染経路は、一人の医師が人体実験で証明しました。
ただし、皮膚感染を否定するために自己の体で実験したら、見事に感染してしまったという逆転劇でした。
動物実験も行われたのですが、それよりも自分で人体実験するところに、昔の医者の研究者魂を感じます。

野口英世が、研究していた「黄熱病」に罹って死亡したのは、91年前(1928年)の5月21日でした。
黄熱病の病原体をしばらくは誤認していた野口ですが、死亡する少し前に、その誤りに気づいたようです。
決して意図した感染ではないものの、感染を覚悟した研究であったことは間違いないでしょう。

野口英世の肖像を見ない日はありませんが、その千円札の肖像は北里柴三郎に変わることが決まっています。
北里柴三郎もかなりの偉人です。細菌学のみならず教育や実業にも携わり、医学界への貢献度は絶大です。

でも、子どもの頃に伝記で読んだ思い出が強く残っているのは、苦学して最後に殉死した野口英世の方ですね。

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日本紅斑熱
- 2019/05/16(Thu) -
天草市で、マダニに噛まれて「日本紅斑熱」を発症した女性が亡くなったそうです。
マダニが関与する病気では、数年前に「SFTS」が問題になりましたが、昔からあるのが日本紅斑熱です。

SFTSはマダニが媒介するウイルス感染症ですが、日本紅斑熱の病原体は「リケッチア」です。
そしてリケッチアによる感染症と言えば、この日本紅斑熱と発疹チフスとツツガムシ病が有名どころですね。

子どもの頃、百科事典のあちこちを眺めるのが好きでしたが、とくに病気の項目をよく読みあさっていました。
当時(昭和40年代前半)の私(小学生)が興味を持った病気といえば、やはり伝染病です。
原因となる病原体があり、もしくは原因不明で、独特の病状経過をたどり、人にうつるので恐れられます。

昔は、多くの薬害や公害が当初は伝染病と疑われたりして、隔離や差別につながった歴史があります。
しかしその反対に、原因不明の風土病が、特定の病原体による感染症であることが判明したケースもあります。

伝染病の原因究明と治療法開発の苦労が描かれた科学読み物や医学者の伝記などは、たくさん読みました。
そうそう、Wikipediaをあまり好評価するのもナンですが、「日本住血吸虫症」の項は力作。よく書けてます。

熊本地震よりも前、私は豊後街道の痕跡を辿るべく、自転車で阿蘇の山中をバカみたいによく走ったものです。
現在豊後街道だとされている舗装道路は、実際には本来の豊後街道(旧道)とは少しズレています。
とくに阿蘇山中の旧道は、今では痕跡だけが残っているけもの道。その薄暗い道を進むのもまた楽しいのです。

石ころや滑りやすい落ち葉やコケや木の枝に注意しながら、時に転倒しつつ、マウンテンバイクで走ります。
でもあの時、露出したスネや腕や頭にマダニが取り付かなくて良かったと、後になって胸をなで下ろしました。
SFTSの話を聞いて以来、私は森には入らなくなりました。今ではサイクリング自体をほとんどしていません。
仕方ないこととはいえ、感染症やケガを恐れれば恐れるほど、冒険っぽいことができなくなりますね。

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ゾフルーザ耐性大問題
- 2019/03/28(Thu) -
新しいインフルエンザ治療薬「ゾフルーザ」の耐性変異ウイルスの出現が、思いのほか大問題になっています。
なにしろ、ゾフルーザに耐性を持つウイルスが、この薬を服用していない患者から検出されたからです。
つまりこれは、耐性変異ウイルスがヒトからヒトへ感染したことを意味します。

耐性が出やすいことは発売前からわかってはいたのですが、半年前ごろの私は次のように理解していました。
(1)成人の場合、耐性ウイルス出現率は9%程度であり、それほど多くはない
(2)耐性ウイルスが出現したとしても、熱がやや遷延する程度だろう
(3)その耐性ウイルスは、他人に感染するとは言われていない

今シーズン中は、おもに成人患者に対して、しかもゾフルーザを希望する方にのみ、私は処方してきました。
感覚的には、わりとよく効いたと思いますが、たしかに一部の方は、やや治りが悪い印象でした。
ただしそれが、耐性ウイルスの出現によるものかどうかは不明です。
昨年までよく使われていた(私も使っている)イナビルだって、似たような経過をとることがありますから。

しかし、ここまで耐性変異ウイルスが出やすく、しかも感染力があるとなれば、話は別です。

当院では、いまでも毎日2,3人ほど、新たなインフルエンザ(全てA型)患者を診断しています。
今回の耐性ウイルス問題を受けて、今後しばらく私はゾフルーザを処方することはないでしょう。

とか言いながら、万一自分がインフルエンザに罹ったら、さて、どの薬で治療しましょうかね。
「ゾフルーザとタミフルの同時投与」なんて、実はちょっと魅力的なんですけどね(内服は自己責任で)。

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溶連菌には抗生剤十分に
- 2019/03/20(Wed) -
「抗生剤の内服を2,3日でやめてしまうのは問題」と書いた昨日のブログについて、質問がありました。
「症状がすっかり改善してしまっても、抗生剤は処方された分だけ飲みきらなければならないのか」と。

申し訳ありません。昨日のブログの書き方が中途半端で説明不足でした。
諸般の事情により昨夜は、執筆するための時間と意識レベルが足りず、舌足らずな文章になってしまいました。

たいていの風邪はウイルス感染なので、そもそも抗生剤が必要ありません。抗生剤を飲んでも無効です。
しかし、普通感冒と似た症状であっても、細菌感染症の場合には抗生剤による治療が必要かつ有効です。
また、基礎疾患等によっては、予防的に抗生剤を飲む必要があるようなケースもあるでしょう。

一般の外来でよく遭遇する、必ず抗生剤による治療が必要な疾患のひとつが、昨日書いた「溶連菌感染」です。
たいていの細菌感染症では、病状が十分に改善したことが確認できれば、抗生剤の内服を終了するものです。
しかし溶連菌感染の場合は、1週間〜10日間抗生剤を飲んで、溶連菌を徹底的に退治する必要があります。

溶連菌は、さまざまな顔つき(多様な血清型)を持っているので、免疫が作用しにくく何度でも感染します。
おまけのその顔つきを、ヒトの心筋や神経や関節滑膜などの細胞に似せるという、トラップを仕掛けています。
これによって、溶連菌を攻撃するはずの抗体が、誤って心臓や神経を攻撃してしまうリスクが生じます。
これが「リウマチ熱」です。昭和の時代には大勢の方が、溶連菌感染が元で心臓病(弁膜症)になりました。

溶連菌感染に対する徹底した抗生剤治療が、リウマチ熱を激減させたことは言うまでもありません。
だからこそ、抗生剤を2,3日飲んだら治ったので内服をやめた、というのがいちばん怖いのです。

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溶連菌感染流行中
- 2019/03/19(Tue) -
春めいてきました。ていうか春です。インフルエンザの流行は、ほぼ終わったと思って間違いないでしょう。
まだ時々一部にインフルエンザが出ていますが、それもほぼわずか。
高熱が続いてぐったりの方も減ったので、念のため検査することもほぼ、なくなりました。

いま思えば、今シーズンのインフルエンザの流行はとても短期間でした。
しかも、ほとんどA型。B型の流行はごくわずかでした。
昨年の大流行で罹患した人が多かったので、今年の患者数が少なかったのかもしれません。

最近流行しているのは、溶連菌感染ですね。熱があるか、ノドが痛い場合は、いちどは疑ってください。
その咽頭所見は、かなり特徴的です。

まず、のどの「手前」が赤い。腫れてなくてもベタッと赤い。
あるいは、扁桃が腫れて赤い。アデノウイルス感染とは異なり、咽頭後壁はそれほど赤くない。

溶連菌感染は抗生剤がよく効きますが、しっかりと1週間以上は抗生剤を内服する必要があります。
その診断がついてない場合、抗生剤の内服を2,3日でやめてしまうことも多く、問題です。
咽頭痛があって妙に赤みが強い方は、自己判断で治療せず、必ずいちど医療機関を受診してください。

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医薬部外品問題
- 2019/03/12(Tue) -
何年も前から、場合によっては子どもの頃から、ずっと疑問に感じていていることって、ありますよね。
その特徴を考えてみると、
・学校で習うとか、大人になれば自然とわかるという性質のものではない
・気になって仕方がないから調べよう、と思うほどの緊急性も必要性も感じない

ところが近年、ていうかだいぶ前から、ネット検索という強力な武器が出現し、疑問解決を容易にしています。
なので、いまだに未解決の疑問の特徴を考えてみると、(次のスライドをお願いします)のいずれかです。
(1)あれこれ工夫して検索しても、どうしても的確な答が見つからない(難問)
(2)ググるのも面倒に思えるほど、その疑問を解決する必要性を感じない(愚問)
(3)ネット検索ごときで簡単には解決したくない

たとえば前に書いた「ロール・ベール・ラップ・サイロ」は、安易な解決を望まない、まさしく(3)でした。

さて今日は「医薬部外品」です。その概念はわかります。「医薬品」と「化粧品」の中間なんでしょう?
ただ私の疑問は、どこで区切るのか、という点です。「医薬・部外品」なのか、「医薬部・外品」なのか。
この数十年間、折に触れて頭をもたげたものの、なんとか自力で答を導きたくて、悩み続けてきた疑問です。
いや、ウソです。(3)ではなくて多分(2)ですね。医薬・部外品でも医薬部・外品でも、どっちでもいい。

ところが長年そう思ってきたのに、今日突然、この問題を今すぐに解決せねばならない気分になりました。
悔しいですがこういう時、薬学部の先生に尋ねたり図書館に行くのではなく、まず頼るのはグーグル先生です。

「医薬 部外品です。薬では無いですよ〜という意味なので」
「医薬で区切るのがすっきりでしょう。医薬部なんてクラブ聞いたこともないし(以下略)」

すみません。怖いもの見たさに「YAHOO! 知恵袋」を覗いてみたら、このような軽快な回答集でした。
がしかし、知恵袋を笑ってはおれません。「医薬部外品区切り問題」は意外なほどの難問(1)だったのです。

業界や官公庁のサイトもあちこち見ましたが、区切り位置について解説してくれるものではありませんでした。
やむを得ず、最終手段に打って出ました。「独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)」に電話です。
「医薬品、医薬部外品、化粧品に関するご質問」を受け付けている部署の担当者の回答は、こうでした。
「医薬部外品で1つの言葉なんですが、しいて言えば、医薬で区切るんでしょうかね」←ほぼほぼ知恵袋と同じ

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不可抗力のドーピング
- 2019/03/10(Sun) -
ドーピング検査で禁止薬物が陽性だった男子レスリングの阪部創選手の資格停止処分は、取り消されました。
阪部選手に過失がないことが立証されたからですが、これまでに聞いたこともない顛末でした。

禁止薬物が含まれていないはずの胃腸薬に、メーカーの不手際で、禁止薬物が混入したというからです。
これはちょうど先日書いた、高血圧治療薬に発がん物質が混入していた事案と同様の経緯によります。

ドーピングが禁じられている理由は、おもに次の2つでしょう。
・スポーツのフェアプレー精神に反する
・競技者の健康を損ねる

しかしそのドーピングの「悪質度」には、いくつかの段階があり、明確に区別されるべきです。

(1)故意(ドーピングするつもりで、意図的に禁止薬物を摂取した)
(2)過失(薬剤や飲食物等の成分確認を怠り、あるいは勘違いして、うっかり摂取した)
(3)不可抗力(問題ないとされている薬に、メーカーの不手際等で禁止薬物が混入していた)
(4)冤罪(選手をドーピング違反に陥れるために、第三者が禁止薬物を飲食物に混入した)

このうち(1)はもちろん(2)も、明確にドーピング違反として、厳しく罰せられるのは当然です。
しかし、今回の阪部選手の場合は(3)でしょう。どれだけ注意しても避けようがなかったからです。

ただし、資格停止処分は取り消されたものの、選手権での準優勝という成績までは回復されませんでした。
たとえ本人に落ち度はなかったとしても、競技自体は「ドーピング下」で行われたという解釈でしょうか。

本件の責任は製薬会社にあると思いますが、失った競技の機会と成績を「賠償」することは不可能です。
オリンピックレベルの世界的な大会において、このようなアクシデントが起きたら、取り返しが付きません。

問題の胃薬は、田辺製薬が先発品を作っている胃薬のジェネリック(沢井製薬製)でした。
その原薬が問題なのでしょうけど、結果的には、ジェネリックへの信頼感をも失わせる事件となりました。
選手がどうしても薬を飲むときは、先発品を選ぶのが無難ということですかね。

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透析中止で死亡
- 2019/03/07(Thu) -
東京都の病院で、人工透析治療の中止を選択した腎臓病患者の女性が死亡した件が、波紋を広げています。

事実上の延命治療であった透析の、その中止を患者が求め、医師がそれに従い、患者は死亡しました。
医師は事前に十分に説明し、女性は透析中止の意思確認書に署名し、その夫も透析中止に納得していました。

透析を中止すれば「死に直結する」という厳しい説明に対して、女性は文書で同意していたわけです。
しかし、説明によって「死」を選ばせることの是非は、今後議論を深めなければならない重要部分でしょう。

予想されたように、透析中止によって死に向かった女性は、体調が悪化して苦しみ出します。
その苦しみの中で、女性が透析再開を希望する意思を示し始めますが、主治医は透析を再開しませんでした。

医師は、患者が苦しみ始めてから表明した意思よりも、「正気のときの固い意思」を尊重したといいます。
その背景には、終末期の腎不全患者の透析は「無益で偏った延命措置」であるという考えがあったようです。

この考え方こそ偏っているというのが世間一般的な論調でしょうけど、個別にはそれぞれ苦悩があるはず。
私は専門医ではなく、透析治療を主導した経験もないので、ここでは一般論を述べますが、こう思います。

(1)どのような治療も、医師からの十分な説明を受けた上での患者の意思に基づくべきである
(2)その意思表示はいつでも撤回できるものであり、医師はつねに患者の「最新の意思」に従うべきである

とは言え、断末魔の苦しみに際しての患者の「翻意」が本当に「本意」なのか、その見極めは難しいでしょう。
女性や家族の長年の苦悩と、透析の再開をあえて決断しなかった医師の思いを、私はもっと知りたい。
メディアには、医師を単純に糾弾するような浅い論じ方だけはしないでいただきたいものです。

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薬に発がん物質混入
- 2019/02/14(Thu) -
ファイザー製の高血圧治療薬「アムバロ配合錠」から発がん物質が検出され、自主回収が始まっています。
どうしてそんなことになるのか。血圧下げて癌になったのではたまりませんね。

アムバロ配合錠には、2種類の降圧剤「アムロジピン」と「バルサルタン」が「配合」されています。
そのうちのバルサルタンの「原薬」から、発がん物質NDEAとNDMAが検出されたようです。
この原薬は、ジェネリックメーカーの世界最大手「マイラン」のインド工場で製造されたとのこと。

バルサルタンというのは、数年前に論文不正問題で有名になった、あの薬(商品名「ディオバン」)ですね。

そのバルサルタンの発がん物質混入騒動と言えば、実は「あすか製薬」が先輩格です。
昨年7月、あすか製薬の「バルサルタン錠」にNDMAが混入していたため、販売中止・自主回収となりました。

そこで厚労省が他社にも品質管理を確認させたら、ファイザーの薬からも見つかったというのが経緯です。
となると、あすか製薬とファイザーは同一の原薬を使っていたのか、と考えるのが自然ですね。

ところが、あすか製薬のサイトを見ると、原薬の製造元は中国の「浙江華海薬業股彬有限公司」とあります。
ファイザーの原薬は「インド製」ですが、あすかは「中国製」。別会社だったか。
いやいや、中国インド国境未確定地域に存在する工場なら、インド製とも中国製とも言えるじゃないですか。

残念ながら、浙江華海薬業を調べてみると、原薬工場は浙江省と江蘇省の2カ所。いずれも東シナ海沿岸部。
う〜む。中印国境未確定地域説、崩れたり。
それらの工場を「視察」しようと、グーグルマップを見たんですけど、ストリートビュー不可でした。
中国国内はストリートビューでは見れないんですね。そのことに今日はいちばん驚きました。

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ゾフルーザ首位
- 2019/02/05(Tue) -
抗インフルエンザ薬「ゾフルーザ」の、昨年10〜12月の国内販売シェアが47%だと聞いて、驚きました。
当院での処方人数の割合は、正確に集計したわけではありませんが、イナビルとタミフルが大半だからです。
子どもへの処方が当院では多いこともあって、現時点で錠剤しかないゾフルーザの処方割合は多くないのです。

抗インフルエンザ薬として何を処方するかには医師の裁量が大きく、患者の選択は医師に誘導されがちです。

「今シーズンは1回飲むだけで済む新薬が人気ですね。実際、早く良く効く印象がありますが、どうします?」
と勧められたら、ゾフルーザを選ぶ方が多いでしょうし、
「新薬は値段が高いのと、耐性ウイルスが出て薬の効きが悪い問題も報じられてますが、どうします?」
と説明されたら、従来の薬でお願いします、となるかもしれません。

患者さんがどの薬を希望しているかを察知し、その薬がまさにオススメです的な説明をするのが最善ですかね。

ゾフルーザの値段だけが引っかかるという方には、イナビルとの差額は3割負担で150円です、と説明します。
体重80キロ未満の方なら、両者に大きな価格差はないのです。ていうか、もともとイナビルも高いのです。

効くのなら安い方がいいな、という方なら、迷うことなくタミフルのジェネリックをお勧めします。
もしも80キロ以上の方なら、ゾフルーザとの価格差は7倍以上、3割負担で2400円以上の差が生じます。
でも逆に、80キロ以上の方がよく効く薬をくれと言うのなら、体重比例で処方できるゾフルーザが有利かも。

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発熱と受診のタイミング
- 2019/02/01(Fri) -
インフルエンザ患者の1医療機関当たり全国報告数が、集計が始まった1999年以降最多を記録しました。
熊本ではピークは越えたようですが、ただしB型が出始めているようです。B型が流行ると長引きます。

日頃、インフルエンザの疑いがあって受診する方のタイミング、とくに発熱からの経過時間はさまざまです。

(1)高熱が出て、おおむね24時間後以降
インフルエンザの検査で陽性反応が確実に出ると、一般に思われている時期ですが、それはケースバイケース。
高熱でひどくグッタリしている方が、丸一日も待つのはお勧めできません。まあ元気なら、かまいませんが。

(2)高熱が出てから半日〜1日程度
受診のタイミングとしては最も多く、陽性反応も比較的出やすく、治療開始時期としても比較的適切です。

(2)高熱が出てから数時間程度
念のため検査するか、未検査のまま治療を開始するか、経過観察とするかを、病状等によって判断します。

(3)微熱だけど心配
インフルエンザでも微熱の方がいます。状況や全身状態等を考慮して、必要なら検査をします。

(4)高熱が何日も続いている
前日や前々日に他院でインフルエンザの検査をして、陰性だった方も含まれます。
場合によってはインフルエンザの検査もしますが、むしろ別の疾患による発熱を考慮すべきケースです。

インフルエンザが、突然の高熱で発症するとは限りません。
別の風邪を引いて熱や咳などが出ている最中にインフルエンザを併発した場合、熱型も症状も複雑です。
「いつ発熱したか」という点だけで判断したのでは、インフルエンザの発症時期を見誤ることもあります。

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ゾフルーザ耐性出現
- 2019/01/25(Fri) -
インフルエンザが全国的に大流行しています。
今年第3週(1/14-20)の定点当たり報告数は、全国の45都府県で第2週よりも増加していたようです。
増加が45都府県ということは、例外的に減少していたところが2つあるわけで、それが北海道と熊本県でした。
とはいえ、熊本県の報告数56.3は、前の週の58.8からの減少幅も小さく、まだ全国第16位の流行レベルです。

そのインフル治療薬としていま話題の「ゾフルーザ」ですが、耐性ウイルスが検出されたと報告されました。
A/H3N2亜型(いわゆるA香港型)の、解析した21株のうち2株に耐性変異を認めたので、その率は9.5%。
その21株の中に、タミフルなど従来の抗インフルエンザ薬の耐性株は無かったとのこと。

通常であれば、21例中の2例などという数値は、私なら模様眺めで済ませるような統計学的データです。
しかし、ゾフルーザに耐性ウイルスが生じやすいことは、臨床試験の段階からわかっていたことでした。
そして試験での耐性変異率は、370例中の36例(9.7%)でした。これが今回の9.5%と妙に符合するのです。

となると気になるのは、12歳未満に限ると、臨床試験での耐性ウイルス検出率が23.4%だったという点です。
さらに、耐性ウイルスが出た場合は、無治療の場合よりもむしろ治りが悪かったという結果も出ています。

ゾフルーザを実際に使ってみて、とてもよく効いたケースが多いですが、それほどでもない場合もありました。
これまでメディアはゾフルーザを持ち上げる一方でしたが、そろそろ少し反省する時期かもしれませんね。
その点もしっかり報じていただければ、処方する側としても助かります。

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インフルによる悲劇
- 2019/01/23(Wed) -
淡路市の養護老人ホームでインフルエンザの集団感染が発生し、入所者7人が亡くなりました。
感染拡大を防ぐための、入所者全員へのタミフルの予防投与が行われなかったことが、問題視されています。
いたましい出来事ですが、私はこの件には違和感があります。
日頃はタミフルを使いすぎだと非難するメディアが、今度はタミフルの予防投与を支持する論調だからです。

インフルエンザに感染していた37歳の女性が昨日、駅で線路に転落して電車にはねられて死亡しました。
事故の3日前から体調不良を訴えながらも病院を受診せず、無理して職場へ出勤中の方でした。
たとえ若い方でも、たぶんインフルエンザによって、このような悲劇が起きるのです。
どのような方に対しても早期診断・早期治療を行った方が、患者個人のためには有益と言えるかもしれません。

小学4年生の男児が、インフルエンザ脳症で亡くなりました。
男児の基礎疾患や予防接種歴などの詳細は不明ですが、病状経過と治療歴が気になります。
少なくとも、インフルエンザ脳症を起こす可能性を減らすには、ワクチンと早期治療に尽きると思います。

インフルエンザは、薬を飲まなくても十分に栄養と休養をとれば治ると、日頃まことしやかに言われます。
その理屈は正しいかもしれませんが、自己中心的とも言えます。周囲への感染拡大を考慮してないからです。
学校や職場や地域社会への感染拡大を防ぐためには、十分な期間、周囲から隔離されている必要があります。
抗インフルエンザ薬で治療して体内のウイルス量を早く減らすことは、その隔離期間を減らす効果があります。

インフルエンザによる悲劇が報じられるたびに、やはり予防接種と早期治療が重要に思えてなりません。

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インフルいきなり警報
- 2019/01/18(Fri) -
熊本市のインフルエンザは、先週時点ですでに警報レベルに達しています。この2週で急な伸びです。
12月から流行が始まった昨シーズンを除けば、1月第2週からの警報到達は平均的な流行よりも早い方です。
どうしてこのような、インフルエンザ流行真っただ中にセンター試験をぶつけるのか、毎年疑問に思います。

それはともかく、今日気になるのは麻疹(はしか)の流行(の恐れ)でしょうか。
麻疹を発症した10代の男性が、京セラドームで開催されたAKB48の握手会などに参加していた件です。
1月5日に発症(咳、鼻水)、6日に握手会、8日に発熱・発疹、10日に麻疹と診断されたようです。

まず疑問は、どこで感染し、なぜ感染したのか、ということです。
なにしろ10代といえば、麻疹/風疹混合(MR)ワクチンの定期接種を、2度受けているはずの年齢だからです。

大阪市や三重県のサイトによると、津市内の「民間団体」施設内の研修会で、この男性は感染したようです。
研修会参加者49人のうち29人が感染しており、しかもほとんどの方に予防接種歴がないとのこと。
不思議なことに、NHKも他の主要メディアも、私が調べた限りではこの民間団体の詳細を報じていません。

信頼性には欠けますがネットでは、この民間団体とは某宗教団体だという話も出ていますが、真偽は不明です。
まさか、ワクチンではなく麻疹に罹って免疫をつけようという考えの「麻疹パーティー」じゃないでしょうね。
(この件では、これ以上の未確認情報は書かないでおきます)

ワクチン先進国の米国でも、局地的に麻疹が流行する話は、いまでもよく聞きます。
流行国からの持ち帰りが原因とされますが、流行の背景には「反ワクチン」を掲げる団体の存在があります。

いくら医学が進歩しても、その最新医学に懐疑的な人はいます。メディアの情報に惑わされている方もいます。
インフルエンザに罹患しても、お子さんへのタミフル処方を絶対拒否する親御さんに、たまに出会います。
説明は尽くすのですが最終的に、治療薬も予防薬も信頼関係の下にしか処方することができません。

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インフル大爆発
- 2019/01/13(Sun) -
たぶん「警報レベル」に達したな、と実感するような、今日は「インフルエンザ大爆発」な日でした。
この3連休を診療している当院には、もう、診療予約が殺到して大わらわです。ほぼほぼキャパ一杯です。

夕方17時までの診療を標榜していますが、朝9時前にはすでに、17時までの予約枠が埋まってしまいました。
さらに昼頃には18時台までの予約が入り、もはや午後の予約がほとんど受けられない状況になりました。

14時過ぎに、ネット予約サイト「アイチケット」のトップページに、次のようなメッセージを掲示しました。

「今日は診療予約がとても多く、夜まで予約がいっぱいです。
 アイチケットによる予約受付は、終了しています。
 早々と受付を終了することで、皆様にはご迷惑をおかけ致します。
 まことに申し訳ありませんが、どうぞご了承ください。
 なお、とくに具合の悪い方は、電話でご相談ください。」

そのように書いておきながら、電話での予約の多くを、実はお断りせざるを得ませんでした。
高熱の方などは、私が直接電話で病状を聞いた上で、来院してもらう必要があるかどうか判断しました。
明日は祝日なので今日のうちに受診したい気持ちはわかりますが、大丈夫。うちは明日もやってますから。

とは言いながらも、ヤマ場は明日ですね。日曜よりも祝日の方が混み合うことは、経験済みです。
明日の朝9時の時点で19時ごろまで予約が埋まるようなことになったら、いったいどうしましょうかね。

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ついにゾフルーザ処方
- 2019/01/10(Thu) -
今頃ですかと言われそうですが、当院では今日初めて抗インフルエンザ薬「ゾフルーザ」を処方しました。

その有効性や安全性を疑っているわけではありませんが、この新薬には、あえて手を出さないできました。
今年のインフルエンザウイルスが特殊なわけではないので、従来薬でも従来通りの効果があると思うからです。

しかしこの数日、インフルエンザが全国的に流行する中、テレビではゾフルーザの話で持ちきりです。
従来の薬と比べて下熱が早いだの、ウイルス消失が早いだのと、コメンテーターらはしきりに持ち上げます。
唯一の欠点は薬が高額なことですが、3割負担で数百円の違い「しか」ない、という論調です。
ここまで報じられるともう私も、ゾフルーザを避けて通るわけにはいきません。

ところで、報道番組等ではよく、3割負担の場合の薬価(薬の価格)について、次のように比較表示します。

成人で3割負担の場合、タミフルの816円、イナビル1284円に対して、ゾフルーザは1437円だと。
しかし実際には、それ以上に価格差が開く場合があることも付け加えておくべきでしょう。

タミフルはジェネリックなら408円ですが、ゾフルーザは体重が80キロ以上だと2874円に跳ね上がります。
これは大きな差です。なので私は、80キロ以上の方に限っては、ひとこと薬価の話もするようにしています。
でも、「新薬は高いけど使います?」みたいな確認をすることが、医学的に正しいのかは疑問です。

あと、前にも書きましたが、40キロ以上は2錠、80キロ以上は4錠という用量設定も、いかがなものか。
もっともよく遭遇する、60〜80キロ未満の方には3錠処方したいところですが、規定では2錠なんですよね。
この用量設定は、早急に改定されるべき点だと思います。

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流感は普感を駆逐する
- 2019/01/06(Sun) -
「流感」とは、「流行性感冒」つまりインフルエンザのことですが、この言葉、最近はあまり使いませんね。
「普感」とは、「普通感冒(普通の風邪)」のことを略していま私が作った言葉です。無理がありますか。

インフルエンザが全国的に流行しています。
熊本市でもおそらく、今週あたり「注意報レベル(週に10人以上)」になるものと推測(体感)します。
少なくとも当院では、すでにこの土日で、「警報レベル(週に30人以上)」のペースに達しています。

インフル高感度検査装置はフル回転です。検査が追いつかず、従来の迅速検査キットも同時使用しています。
病状と状況から疑いが濃厚な場合、検査はしばしば省略しますが、それでも検査件数は相当数に上ります。

毎年思うのは、インフルエンザが流行し始めると、インフルエンザ以外の感染症が減るということです。
もちろん実際には今日も、溶連菌感染や水痘や急性胃腸炎の患者も来院しました。
しかし少なくとも普通の風邪の方は、先月までよりも減っています。こんなに寒いのに。

どうやらこの時期、軽微な風邪で安易に病院を受診するのを控える人が多いようです。
それは、病院で「インフルエンザをもらう」リスクがあると考えるからです。ある意味、正しい考え方です。
そんな理由で受診を控える程度の病状なら、そもそも最初から受診する必要はないと考えてもよいでしょう。
インフルエンザの流行期が終わっても、同じ考え方でよいはずです。

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インフルの検査と治療
- 2019/01/05(Sat) -
年が明けて、当院は今日から診療を開始しましたが、インフルエンザは年末からの流行が止まっていません。
近隣の救急病院等の情報でも、今年に入ってインフルエンザ患者がとても増えているようです。
さらに、今シーズンに限った話ではありませんが、熱や症状だけでは判断できないケースが多いですね。

極端なのが、熱の出ない(まったく平熱の)インフルエンザ。症状は軽い風邪症状のみ。けっこう元気。
インフルエンザに罹っている家族がいるということで、念のため検査したらA型陽性。
検査しなければインフルとは疑わず、本人にもその自覚がないので、周囲への感染源となります。

インフルエンザの疑いのなさそうな方に、保育園や職場の事情で「念のため検査」を行うのには反対です。
しかし、疑うべき医学的状況があれば、念のために検査をする意義はあります。その判断は難しいですけど。

インフルエンザに罹っても、必ずしも抗インフルエンザ薬で治療する必要は無い、という考え方があります。
たしかに、2001年にタミフルが発売されるまでは、そのような便利な薬はこの世にはありませんでした。
たいていの場合、タミフルを飲まなくてもインフルエンザは治ります。
しかしそれでも、私がほぼすべてのインフルエンザ患者に抗インフルエンザ薬を処方する理由は、

・少しでも早く治し、社会復帰を早める
・少しでも合併症を減らし、生命予後を改善する
・少しでも周囲への感染力を減らし、流行の拡大を抑える

どれも少しの違いですが、一定の評価を得ている薬がある以上、使わない手はない、というのが私の考え方。
ただしインフルエンザかどうかを確定させてから薬を使いたいので、検査もできるだけ行う方向なのです。

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インフル流行しない?
- 2018/11/18(Sun) -
休日当番医の今日、朝6時半に出勤し、医院周囲を清掃し、チオビタを飲み、気合いを入れて臨みました。
ところが、来院者数は日頃の日曜日よりもずっと少なかったのです。まさか市長選挙の影響じゃないでしょ?

昨年は大流行したインフルエンザですが、今シーズンは妙に大人しいようです、いまのところ。
当番医の今日ですら、高熱の方は何人も来ましたが、インフルエンザの迅速検査で陽性の方はゼロでした。
なぜか溶連菌感染がとても多く、点滴を要するような胃腸炎の方も目立ちました。

今シーズン、インフルエンザが流行するかどうかを占うための、重要な情報(資料)が出回っています。
それはオーストラリアにおける、過去数年間のインフルエンザの流行情報(折れ線グラフ)です。
南半球の冬のインフルエンザ流行状況が、その半年後の北半球の冬の流行状況と相関するというわけです。

そしてその資料が示すのは、近年まれに見るほど、今年の南半球ではインフルエンザが流行しなかったこと。
てことは、北半球でも今シーズンは、インフルエンザは流行しないってわけ?

いや待てよ。昨年日本ではそこそこ流行したのに、その半年後の南半球で流行しなかったのはなぜ?
「南→北」の相関があるなら、「北→南」の相関はないのでしょうか。その説明を、誰かしてくれませんかね。

いずれにせよ油断大敵です。インフルエンザは例年12月から流行が始まり、ピークは1月以降ですから。

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風疹対策の進次郎節
- 2018/11/07(Wed) -
わが国のワクチン行政の不備や遅れの問題については、以前から何度も書いてきたところです。
ワクチン後進国」という汚名を返上すべく、ここ数年、いくつかのワクチンの定期接種が始まりました。

しかし、何年たっても議論が続くばかりで定期接種になってないのが、おたふくかぜとロタウイルスワクチン。
さらにHPVワクチンも、わが国では事実上止まっており、諸外国からおおいに非難されています。

日本の後進性がとくに問題だった麻疹・風疹の予防接種は、2006年から第1・2期定期接種が始まりました。
さらに2008年からは第3・4期定期接種が、5年間の時限措置として、中高生に対して実施されました。

しかし、その対象年齢を超える者(1989年度生まれ以上)に対しては、何の配慮もなされませんでした。
つまり、現在おおむね28歳7カ月以上の方々は、ワクチンの接種回数が足りない世代です。
さらに39歳7カ月以上の男性と56歳7カ月以上の女性は、定期接種の機会がまったくなかった世代です。

風疹にかかって問題となるのは妊婦ですが、その感染源としては30代以上の、とくに男性が危険な存在です。
したがって、先天性風疹症候群を減らすためには、30〜50代男性へのワクチン接種が必要とされています。

「風疹をなくそうの会『hand in hand』」の代表者らが一昨日、小泉進次郎氏に要望書を手渡しました。
自民党厚生労働部会長という、ワクチン行政に強い影響力のある立場にある小泉氏は、次のように述べました。

「風疹は排除できるにも関わらず、日本が実現できていないということは何かが足りないはずだ」

私に言わせれば、厚生官僚の科学的・客観的判断力、あるいは覚悟が足りなかったと言うことでしょう。
副反応を疑う事例に振り回され、大事な積極的勧奨をすぐ止めてしまうような弱腰が、もっとも問題なのです。

小泉氏が、過去の政策に疑問を呈し、風疹対策に取り組む姿勢を明言してくれたことは、大いに評価します。
他の議員たちとは異なり、リップサービスだけで終わらせるような人ではないと、期待もしています。

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BCGにヒ素混入
- 2018/11/03(Sat) -
BCGワクチンの溶解液(生理食塩液)から、基準を超えるヒ素が検出されたと報じられました。
出荷は停止されましたが、ヒ素が健康に問題無い量であるということで、ワクチンの回収には至っていません。
現在流通しているのは、薬品卸の在庫分であり、そのまま接種をしてもよいということになっています。

当院では、現時点で数名のBCG接種の予約が入っており、保護者によく説明した上で接種を続ける予定です。

問題は、わずかなヒ素が混入していたということよりも、それを厚労省が3カ月間公表してなかったことです。
安全性に問題が無いから、わざわざ発表するまでも無いだろうとタカをくくっていたのでしょう。
しかし、それこそが、危機管理意識の欠除の現れだと思います。

このような事実は、とにかく早めに公表すべきです。あとで情報が漏れたのでは、結果が大違いなのです。
これは、豊洲問題を見れば明らかです。都合の悪いデータを隠せば、メディアが飛びつき混乱するばかりです。
有害物質が検出されて大騒ぎした豊洲ですが、築地よりはずっと衛生的であることは誰にだってわかります。

これからBCGの接種を受けたり、すでに接種済のお子さんの保護者の方には、次の点を協調しておきます。
(1)検出されたヒ素は、健康に問題を起こす量よりもはるかに少ない量であり、医学的には問題ないこと
(2)だからこそ、薬の回収命令は出ておらず、現時点で流通しているBCGを接種しても、問題ないこと
(3)今月、新たなBCGが出荷される予定であり、ご心配な方は、新ロットの流通を待つこともできること

この3点を、厚労省が3カ月前に自主的に公表していたら、何も問題なかったはず。隠すのは、ダメですね。

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風呂とユンケル
- 2018/10/28(Sun) -
昨夕は突然、ひどい寒気に見舞われましたが、このような場合の私の対処法は、ほぼ定着しています。
(1)熱い風呂
(2)ユンケル黄帝液

発熱の不快感は、熱が上がりきったときの暑さではなく、発熱直前から熱の上昇中にかけて感じる悪寒です。
そしてその発熱の目的は、免疫系を活性化することです。
ならば、早く熱を上げてしまえばいい。だから寒気がしたらすぐに、熱い(かなり熱い)風呂に浸かるのです。
そうして体温が上がれば、体はそれ以上熱を上げる必要がなくなり、寒気も消え、気分が改善します。

ユンケル黄帝液と言えば、値段が高いぶん効果がありそうなドリンク剤ですね。私の経験上、効きます。
中国古代の「黄帝」にちなんで「黄帝液」です。「皇帝液」じゃありません。「口蹄疫」でもない。

黄帝というのは、私の好きな古代中国史に出てくる「夏・殷・周」王朝時代よりも前の、神話時代の帝王です。
「殷」は、20世紀になってその実在が証明された王朝であり、中国の最初の王朝だと私は学校で習いました。
今では「夏」が実在したことも証明されつつありますが、さすがに黄帝の時代はどうなのでしょう。

「黄帝を実在の人物と考えている人は、神武天皇を実在の人物と考えている人よりも少ないのではないか」
陳舜臣氏がそのように書いていました。
そんな伝説中の存在ですが、文字・衣服・家屋・暦・医学などの人類文化を創造した人物とされています。

東洋医学において、黄帝は始祖的な位置付けであり、ユンケルに名を冠する理由はそれでしょう。
ちなみに西洋医学の父といえば「ヒポクラテス」です。
ヒポクラテスは紀元前400年ごろの人ですが、黄帝はそれより2千年前の人物。そこが中国のすごさですね。

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インフルぼちぼち
- 2018/10/27(Sat) -
インフルエンザは、まだ大流行とは言えないものの、今日も2名の来院がありました。
このような事を書くと、インフルがうつるとイヤだから軽い風邪で医者にかかるのは控えとこう、となります。
それが正解。もともと、軽い風邪でいちいち医者にかかるべきではないのです。

高熱が出た患者さんなどは、隔離のできる部屋(当院では4部屋設定可能)で診察します。
裏口からその部屋に入るまでの間に、別の患者さんと接触しないように、その動線には気を配ります。
こっちが入ったらあっちを出す、みたいな、なかなかアクロバティックな誘導が、毎回繰り広げられています。

インフルエンザの迅速検査は、2種類の検査キットを使い分けています。
発症して間もない場合は高感度の検査装置、24時間以上を経過したような方なら従来のキットで検査します。
今年はまだ高感度の方で陽性が出たためしがなく、出るのはいつも従来の方式。まったく期待外れです。

今シーズンこれまでに処方した抗インフルエンザ薬は、タミフルかイナビル。ゾフルーザの出番はまだです。
「1回飲むだけで効く新薬が出てますよ」と提案しても、どの方も慣れた薬を選ばれます。
今後流行期に入れば、ゾフルーザも全国でそれなりに処方されるようになり、その評価が定まることでしょう。

1日2回で5日間飲むタミフルとは異なり、ゾフルーザは薬が余ることがありません。最初の1回で終了です。
薬が余らなければ、使い回すことができません。実はこれは重要なことだと思います。

「妻のタミフルを2日間飲んだので、あと3日分処方して欲しい」などという方にときどき遭遇します。
しかしそのようなケースでは、副作用が出た場合の責任の所在が曖昧だし、保険診療としても問題です。
その意味でも私は、1日1回のゾフルーザには大いに期待しているところです。

ちなみに、「旦那も使うので湿布は多めに下さい」と真顔でおっしゃる方もいます。たぶん悪気はないのです。

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罹って免疫をつける
- 2018/10/25(Thu) -
「感染症は、罹って免疫をつけるもの」という考え方は矛盾していると、昨日書きました。
すると今日、そのことについて、もう少し詳しく説明して欲しいとのご意見を頂戴しました。
では、おたふくかぜを例にとって、想定問答をしてみます。

「おたふくかぜに罹って免疫をつけたいとお考えのようですが、その理由は何ですか?」
「実際に罹ったほうが、ワクチンを接種するよりも強い免疫がつくからです」
「では、強い免疫を付ける目的は何ですか?」

もしもその目的が、「2度目のおたふくかぜに罹らないようにするため」なら、おかしな話です。
2度目に罹らないために、1回罹っておくなど、本末転倒と言わざるを得ません。
難聴や髄膜炎や精巣炎などの合併症が心配なら、おたふくかぜには最初から罹らないようにすべきなのです。

毎年100万人が罹患するありきたりの感染症だった水痘は、定期予防接種によって発生数が激減しています。
「罹って免疫を付ける」派の方は、今後は水痘に感染しにくくなって免疫を獲得しにくい時代を迎えます。
幼稚園や学校で水痘に感染する機会を逃し、ついには水痘に罹らないまま成人になる方も増えることでしょう。

成人の水痘って、けっこう重症です。発疹がやたら多いし、肺炎になることもあります。
妊婦さんが感染するともっと大変で、とくに周産期の感染では、新生児の致死率がかなり高くなります。

おたふくかぜも水痘も患者数が減っており、「罹って免疫を付ける」こと自体がもう現実的ではないのです。

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個性的な医薬品名
- 2018/10/21(Sun) -
当院初診の高血圧の患者さんが、前医で「アテレック」という降圧剤の処方を受けていました。
私はこの薬を処方したことが過去に一度もなかったので、新鮮というか、どうにも違和感がぬぐえません。
なぜなら、日頃よく処方する抗アレルギー薬「アレロック」に、名前が似ているからです。

「アレロック」は、アレルギー症状をブロックする、という意味から命名されています。わかりやすい。
一方で「アテレック」は、「動脈硬化(arteriosclerosis)」が由来だそうですが、ちょっとピンときません。

それよりも、「無気肺(atelectasis)」の意味で、「アテレク」という言葉を医療現場ではよく使います。
なので「アテレック」という薬が、気管支拡張剤だったら、しっくりくるんですけどね。
そう言えば昔、「アロテック」という気管支拡張剤がありました(今は販売中止)。これも名前が似てます。

調べてみると実際に、「アレロック」と「アテレック」の処方の取り違え事例もあるようです。
単に「ア」と「レ」と「ク」が共通しているだけでなく、「ンンンック」ていう構造も似てますよね。

医薬品に限らず、世の中には「ンンンック」がずいぶん多い気がします。だから妙に落ち着くんですかね。
アイマック、クラシック、マニアック、エスニック、カトリック、SIMロック、紙パック、四苦八苦・・・

薬の取り違えでは、薬剤名の冒頭の2文字とか3文字が同じ場合などが問題にされます。
とくに「一般名」は似た名称だらけです。同一系統の薬物はみな、似たような一般名なのでしかたありません。
たとえば抗生剤「セフカペンピボキシル」と「セフジトレンピボキシル」は、ややこしい上に似ています。
でもそれらを商品名(先発品名)にすれば、「フロモックス」と「メイアクト」です。個性的で覚えやすい。

後発医薬品が増える中で、先発品のネーミングセンスこそが、取り違え事故を防ぐための要かもしれません。

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佐薬のもどかしさ
- 2018/10/09(Tue) -
子どもに抗生剤を投与するときには、たいていは整腸剤を混ぜた形で処方します。
抗生剤を飲むことで下痢をする可能性があるので、その予防のために、最初から整腸剤を加えておくわけです。

副作用を防ぐために、あらかじめ胃薬や整腸剤を処方しておくことは、保険診療上も認められています。
このように同時投与しておく薬を「佐薬(さやく)」といいます。「佐」は「助ける」の意味です。

佐薬と似て非なるものに、ていうか私には厳密には区別がつきませんが、消炎鎮痛剤と胃薬の問題があります。

アスピリンとかロキソニンとかイブなどの薬を、非ステロイド消炎鎮痛剤(NSAIDs)といいます。
これらの薬は胃粘膜の血流を障害し、胃潰瘍を引き起こす場合があります。
なのですでに胃潰瘍がある方には、熱や頭痛があっても、NSAIDsを処方できないキマリ(禁忌)です。

NSAIDsを飲み過ぎてひとたび胃潰瘍になった方は、胃潰瘍が治るまでは頭痛薬の処方はストップです。
いやいや、NSAIDsと一緒に胃潰瘍の薬を飲めばいいんじゃないの、って思いますよね。
私もそう思いますが、ダメなんです。いったんNSAIDsを中止して、胃潰瘍を治さなければなりません。

そののちNSAIDsの処方を再開したとき、胃潰瘍が再発するのを防ぐためなら、胃潰瘍治療薬を処方できます。
しかし、もしも胃潰瘍がぶり返してきたら、またNSAIDsの処方ができなくなります。この繰り返しです。
それぞれが必要な薬なのだから、用法用量を調節しながらでも同時処方させてもらえると助かるんですけどね。

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首都圏で風疹流行中
- 2018/08/28(Tue) -
首都圏で、風疹の患者数が急に増えています。いまの状況は、5年前の大流行の時の前兆に似ているそうです。

風疹で怖いのは、免疫のない妊婦が感染することによる、先天性風疹症候群(CRS)の発生です。
妊娠後の血液検査で風疹の免疫が無いことが判明しても、妊婦さんは生ワクチンを接種することができません。
夫やその他の同居者が、あわててワクチンを接種することになります。

しかし妊婦さんが外出すれば感染の危険があるわけで、妊娠20週ごろまではずっと心配が続きます。
「風疹患者に接しないように」と言われても、症状の軽い患者ならそこらのスーパーにいるかもしれません。
症状が出ない「不顕性感染」という状態の方もいます。症状がなくても周囲への感染力はあるから困ります。
どっちみち、発症する1週間ぐらい前から感染力があるので、どうにも避けようがありません。

だからこそ、妊娠前に、風疹抗体価の検査や、必要ならワクチンの接種をしておかなければならないのです。
今後妊娠する可能性のある方。悪いことは言いません。自信が無ければ、検査か接種を受けてください。
無料検査を受けるには一定の条件があるので、保健所等に問い合わせるか、医療機関で相談してみてください。

風疹とはまた別ですが、今年の春には、沖縄や愛知、福岡などで麻疹の発生(局地的流行)がありました。
当時、麻疹を予防する目的で多くの方がワクチンを接種しました。
麻疹単独のワクチンはほとんど流通していないので、接種したのは麻疹/風疹混合(MR)ワクチンです。

MRワクチンによって、麻疹だけでなく風疹の免疫も獲得できるという副産物も、実は期待していました。
ところが、麻疹流行から数カ月を経たこのタイミングで風疹が流行するとは、どういうことなんでしょう。
今後さらに、MRワクチンの接種の啓蒙活動が必要なのかもしれません。

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帯状疱疹から水痘
- 2018/07/31(Tue) -
帯状疱疹から水痘がうつった事例が、最近もFacebookで紹介されていましたが、たしかに時々見かけますね。

ほんの5年前までは、水痘は毎年100万人(=おおむね1学年分)が罹る、ありきたりの感染症でした。
ところが約4年前から水痘ワクチンの定期接種が始まり、水痘患者は劇的に減りました。

水痘ワクチンは副作用が少なく、勧奨接種が中止されているHPVワクチンを尻目に、順調に普及しました。
ワクチンを2回接種したお子さんの水痘発症率は、ゼロではありませんが極めて低い印象です。
1回しか接種していないお子さんは、ときどき水痘を発症して来院されますが、その数も今は減りました。

一方で、世の中から水痘が減ることで、逆に今後増えることが危惧されている病気があります。
かつて水痘に罹った方が、長年の間に免疫力が低下した末に発症する、帯状疱疹です。

水痘の免疫力を維持するためには、ときどき水痘ウイルスに接触して、免疫刺激を受けるのが効果的です。
一年中水痘が流行していた5年前までは、日本中がそのような刺激に満ちていたのです。

ところが、水痘ワクチンの定期接種化によって患者が激減したため、水痘ウイルスへの接触機会も減りました。
そのために免疫が維持できず、帯状疱疹を発症する可能性が高まっているというわけです。
帯状疱疹を予防するためには、水痘ワクチンの接種によって免疫を維持することが必要な時代になりました。

そして帯状疱疹の患者が増えると、こんどはその発疹に接触して水痘を発症するお子さんが出始めています。
帯状疱疹を発症した祖父と、一緒にお風呂に入って感染したお子さんもいました。
珍しく帯状疱疹を発症した幼児が、幼稚園で感染を広めた例もありました。子どもはよく接触するものです。

水痘も帯状疱疹も、発症の初期はわかりにくいもの。いずれもワクチンの接種で予防するのがいちばんです。

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鼻炎も貼り薬
- 2018/07/26(Thu) -
「咳止めのシールもください」という要望をよく耳にすることは、以前も書きました。
気管支拡張薬「ホクナリンテープ」のことですね。ジェネリックなら「ツロブテロールテープ」です。
内服薬ではなく、皮膚に貼って、皮膚から吸収された成分が気管支に作用する「経皮吸収型製剤」です。

胸の中央に貼ってる方が多いですが、湿布とは異なり、皮膚から直接気管支に作用するわけじゃありません。
いったん血液中に吸収されて、心臓を経由した後に全身に送られ、その一部が気管支に作用するわけです。
なので気管支も拡張させますが、手がしびれたり動悸がしたりと、全身のあちこちで副作用が起こり得ます。

成分の「ツロブテロール」は、気管支平滑筋のアドレナリン受容体を刺激することで、気管支を拡張させます。
北陸製薬が開発したアドレナリン受容体刺激薬なので、「ホクナリン」と命名されました。

貼るだけで効くので、薬の内服が苦手なお子さんには、ホントに重宝しますね。
どうせなら、子ども用の薬全部、貼り薬で作って欲しいと、いつも思います。
風邪薬や抗生剤がテープ剤だったら、どれだけ楽になることか。
実際には、薬物の分子量とか脂溶性とかの兼ね合いで、何でもかんでもテープにはできないようですけどね。

経皮吸収型の全身作用薬としては、狭心症治療薬(冠動脈拡張剤)が昔からあります。
あとは禁煙補助薬のニコチンパッチとか、ホルモン剤や鎮痛用の麻薬製剤もあります。

アレルギー性鼻炎治療薬としては、世界初の貼り薬「アレサガテープ」が最近発売されました。
1日1回、胸か腹か背中か上腕に貼るだけ。いまのところ子ども(15歳未満)に使えないのが惜しい。
作ったのは、佐賀に本社のある久光製薬です。貼り薬には強い会社ですね。
名称の由来を久光は公式には「特になし」としてますが、「アレルギー+佐賀+テープ」に決まってるでしょ。

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小児循環器学会
- 2018/07/06(Fri) -
横浜で開催されている、日本小児循環器学会総会・学術集会に参加してきました。

内科の分野では、循環器や消化器など臓器系統別に診療や研究・学会が細分化されていることはご存じの通り。
それと同じことは小児にもいえるわけで、小児の循環器疾患に特化した学会が、小児循環器学会なわけです。

成人には、加齢や動脈硬化に伴う疾患が多いかわりに、小児には、先天性の疾患がたくさんあります。
したがって、成人と小児の両方の循環器疾患の専門家です、と言う人はあまりいません。
前者は内科医出身の循環器内科医であり、後者は小児科医出身の小児循環器内科医だからです。

そのかわり、小児の循環器疾患を扱う、内科医と外科医は、とても密接で深い関係にあります。
前者は小児循環器医であり、後者は小児心臓外科医です。
この学会の会員数は約2千人。そのうち内科医が3/4、外科医が1/4だそうです。

成人の循環器内科医と心臓外科医がとても仲のよい病院もたくさんあると思います。
それ以上に、小児の心臓手術で際立った成績を上げている病院は例外なく、内科外科の連携が凄く良いです。
しかも必ず、小児循環器内科にすごい医者がいます。
そう考えると、外科医なんて所詮、内科医の指図で手術をやらされているようなものかもしれません。
まあ、それでいいのでしょう、両者のレベルが高いのであれば。

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医学誤用語
- 2018/06/02(Sat) -
胃腸炎で吐き気のある方に「頓服の吐き気止めを出しときましょうか」と言ったら、怪訝な顔をされました。
以前にも書きましたが、「頓服」=「解熱剤」と思う方は多いようです。

「必要な時に服用するという意味で、頓服と言ったのですけどね」と補足しました。
角が立たないように、でも今後のことも考えて、やんわりと説明しておくのが親切だと思ったからです。
しかし「頓服」がおもに解熱鎮痛剤で使われている現状を考えると、私の方が不適切だったのかもしれません。

「カイネツ剤もください」と言う方に、時々遭遇します。もちろん「解熱剤」のことです。
「解」を「ゲ」と呉音で発音するのは、「解脱」のような仏教用語や古い言葉が多いようです。
「解熱」のほかに「解毒」も呉音ですが、もしかすると両者は、元は仏教用語だったのかもしれません。

「解熱」は熱を下げることであり、熱が下がることは「下熱」と表記して、私は使い分けています。
「ゲネツ剤でやっとゲネツした」と言っても同じ発音ですが、私の中では別の言葉を喋っているつもりです。

両者を話し言葉でも区別できるように、解熱を「カイネツ」と言うことは、意外と悪くないかもしれません。
可能の「見られる」を「見れる」と「ら抜き」して、受身や尊敬の「見られる」と区別するようなものです。

漢方薬「麻子仁丸(マシニンガン)」のことを、毎回「マシンガン」と言う、ご年配の方がいます。
「今日はマシンガンもください」という言葉に、最初はドキッとしましたが、もう慣れました。
角が立たないように、「じゃあ、マシニンガン、出しときましょうね」とやんわり応じますが、効果なしです。

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MRワクチン今のうち
- 2018/05/22(Tue) -
麻疹(はしか)の全国患者数は、昨日までに170人を超えました。お隣の福岡県でも17人出ています。
熊本ではまだ感染者は報告されていないようですが、予防のためにワクチンを接種する方が急増しています。
もちろん麻疹単独ワクチンはもう入手困難なので、MR(麻疹・風疹混合)ワクチンで代用しています。

4月21日から5月20日までの30日間に、当院でMRワクチンを接種した方は79人でした。
このうち定期接種のお子さんは、1期4人、2期20人。任意接種は、0歳・5歳・7歳各1人、成人52人でした。

4月というのは、MRワクチンの第2期定期接種の対象になったばかりの年長児が、接種に訪れる月です。
幸か不幸か、対象期限に近い3月の駆け込み接種に比べると、例年4月の接種者はそう多くはありません。
しかしさすがに今年は、2期を早めに接種しようという方が多く、これ自体は悪い傾向ではありません。

問題は、全国的に接種が増えているMRワクチンの品不足です。
当院では、この事態の中での第1期定期接種対象者へのワクチンを確保すべく、早めに手を打ってきました。
しかし今のペースで毎日接種を続けると、6月初旬にはワクチンがいったんなくなるかもしれません。
薬品卸によれば、ワクチンの流通が改善するのは6月だといますが、6月のいつ?、そこがすごく大事。

ワクチンの在庫が減れば、第1期接種対象者を最優先させるために、成人の接種をお断りすることになります。

いま、いちばん恐れていることは、熊本での麻疹発生ですね。これはもうしかし、時間の問題かもしれません。
麻疹を疑う患者さんの診療も大変だろうし、予防接種も殺到することでしょう。
ワクチンの接種歴が2回未満の方は、まだ熊本で流行していない今のうちにぜひ、接種をお願いします。
ただ、福岡の麻疹患者のうち、ワクチン接種歴が2回ある20代が4人もいることが、ちょっと気になります。

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麻疹対策の更なる徹底
- 2018/05/01(Tue) -
「麻しん対策の更なる徹底について(協力依頼)」という通達が、厚労省から出されています。
「更なる」という文言からも、今まで以上の、もっとツッコんだ対策が求められているようです。

厚労省のサイトには、「ゴールデンウィークにおける海外での感染症予防について」というページがあります。
以前ご紹介した、「蚊意外にキケンあり」のようなダジャレ満載のポスターがダウンロードできるページです。
いま修正するなら「蚊以外にキケンあり」でしょうか。麻疹は人から直接、空気感染する病気です。

昨年7月に厚労省が作成した「みんなで目指そう『麻しんがゼロ』」のポスターが、いま再登板しています。
「マジンガーZ」をメインキャラクター(?)にしたそのポスターを、当院でも慌てて2カ所に貼りました。

昨年あれほど大騒ぎしたのに、今年もまた流行しているのは、一定の年齢層の予防接種率が低いからです。
だからいま、30代や40代の成人が、MRワクチンの接種のために毎日のように来院されます。

麻疹の撲滅を目指して、MRワクチンの2回の定期接種(1歳と年長)が始まったのは、平成18年度でした。
平成20年からは、2回の接種を受けられなかった世代を救済すべく、中1と高3へも暫定接種が行われました。
この5年間の暫定措置を経て、理論上は、いま27歳以下の方はMRワクチンを2回接種しているはずです。

ところが、当時の高3への第4期の接種率は、あまり高くありませんでした。
その定期接種を逃した方と、28歳以上で麻疹の罹患歴のない方々がいま、麻疹感染のリスクが高い世代です。
その意味では、30代でも40代でもそれ以上でもリスクは同じ。ワクチンの接種が必要です。

現実的な問題は、ワクチンの任意接種料金が高いことです。
比較的安価な麻疹単独ワクチンの流通量がきわめて少なく、代用のMRワクチンだと約1万円かかります。
「麻しんがゼロ」の更なる徹底を目指すなら、風疹同様に、国か自治体の助成制度を立ち上げるべきです。

(補足)医学的には普通「麻疹」と書きますが、お役所文書は「麻しん」表記なのでそのままにしています。
(蛇足)風疹抗体価が低い方は、風疹予防の名目でMRワクチンの助成を受けられる可能性(裏技)があります。

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また麻疹の輸入と拡散
- 2018/04/14(Sat) -
「排除」されたはずの麻疹(はしか)ですが、今でもときどき集団発生します。今回も海外からの輸入です。

東南アジアで麻疹に感染して、日本に麻疹ウイルス持ち込んだ人が「発端者」となりました。
その方が沖縄を訪れ、医療機関で麻疹と診断されて隔離されるまでの3日間に、沖縄で感染が広がりました。
ちなみにその頃に私はたまたま沖縄に行ったのですが、十分な免疫を持っているのでまったく心配ありません。

さて、いま新たな問題は、沖縄旅行後に麻疹を発症した二次感染者の少年のケースです。まとめると、

(1)発端者(台湾人):東南アジア旅行後、3/14に台湾で発症(発熱)し、3/17〜19に沖縄を観光
(2)一次感染者(40人以上):発端者の宿泊先や発端者が訪れた商業施設で感染
(3)二次感染者(少年):3/28〜4/2に沖縄旅行し、4/6に発症、4/7に新幹線で移動、4/11に診断確定

どの感染者も、発症(発熱)してから特徴的な発疹が出るまでの数日間は、まさか自分が麻疹とは思いません。
だから最初のうちは、無理して登校したり出勤したり、コンサートに行ったり新幹線に乗ったりするのです。

麻疹は感染力がきわめて強いので、十分な免疫がないと、同じ部屋や同じ車両にいるだけで感染します。
少年と同じ新幹線に乗った人などが、来週頃に三次感染者として発症する可能性は、おおいにあります。

輸入麻疹からの集団発生を防ぐには、ワクチンの接種率を上げて、免疫の無い人間を減らすしかありません。

新年度が始まり、麻しん/風しん混合(MR)ワクチン第2期接種の対象は、今月年長さんになったお子さんです。
もうすでに接種を済ませた方もいる一方で、年度末になって慌てて接種をする方も多いのが現状です。
単純な啓蒙活動だけでなく、何かインセンティブをつけて接種を促す方法はないものでしょうかね。

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ノイエスを求めて
- 2018/04/06(Fri) -
東京国際フォーラムで開催されている日本外科学会学術集会に、日帰りで参加してきました。
今日は熊大名誉教授の満屋裕明先生の特別講演があったようですが、残念ながら聴きのがしました。
昨日は櫻井よしこ氏が、「教育が拓く未来」という講演をしたそうです。外科との関連性は不明です。

「外科学の新知見を求めて」というのが今回の学術集会のテーマです。
國土典宏会長は、この「新知見」に「ノイエス」という読み仮名をふっています。

思えば大学で研究をしていた頃、教授や指導医にいつも、「ノイエスはあるのか?」と言われていました。
研究というのは結局、ノイエス探しなわけで、学会もたいてい「新」や「未来」や「創造」がテーマです。

2年前の外科学会は、4月14日〜16日に開催されましたが、その真っ最中に、熊本地震が起きたんですね。
地震のために学会発表ができなかった会員は、のちに紙上発表という特別措置が講じられました。

学会の学術集会は一般に、多数の会員が一堂に会して、講演したり議論を戦わせたりするものです。
しかし今回の外科学会とか、先々週の循環器学会のような巨大な学会では、参加者と発表演題数が多すぎます。

今日の場合だと、大小37カ所のホールや会議室や展示会場で同時に、研究発表と質疑応答が行われました。
からだは一つしかないので、参加するフォーラムやセッションを、1カ所だけに絞り込まなければなりません。
とくに私の場合は学会場滞在時間も短かく、ごく一部のセッションをチラ見しただけでした。

顔見知りの先生にも何人か出会いましたが、互いに時間もないので、会釈してすれ違う程度で終わりました。
学会のもうひとつの楽しみ、旧知の方々との語らいと懇親会は、日帰り参加ではなかなか堪能できませんね。

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山中教授は関西人
- 2018/03/23(Fri) -
大阪で開催されている、日本循環器学会学術集会に参加してきました。
会長の、大阪大学心臓外科の澤芳樹教授は、昔は多少面識もあった方ですが、いまや雲の上の人です。
なにしろ、iPS細胞を用いた心筋細胞シートを使った研究で、いまや世界の最先端を独走しています。

そしてその心筋細胞シート用の細胞を提供しているのが、iPS細胞の生みの親、京都大学の山中伸弥教授です。
そのようなつながりがあって、今日の記念講演が行われたというわけです。

山中教授は、若い頃からこれまでの全研究経過を、きわめて興味深く、しかも面白く話してくれました。
そのあとで講演した桂文枝師匠にも負けないほどの、関西人らしいノリでした。こういう講演を聴きたかった。

ノーベル賞受賞後、これまでに何度も語られてきた一般向けの発言や記事とは、ひと味違いました。
医学研究者である山中教授が、同じ医学研究者に講演するので、その内容は実に詳細で興味深いものでした。

彼の最初の実験で、その結果がもくろみとは真逆になったことがきっかけで、研究にのめり込んだそうです。
次の実験で、また予想外の結果が出ると、そっちの方に興味が移る。しかもとことん追求する。そういう性格。
するとまた別の副産物が出る。こんどはそっちを探求する。どんどん興味がずれていく、より面白い方に。
悪く言えば移り気、良く言えば柔軟。気が付けばiPS細胞を発見していたと、ザッと言えばそうなりますか。

多分、天才的なひらめきがあるんでしょうね。面白いものを見逃さず、つかむ。そこが凡人とは違うのです。

「iPS細胞」の「 i 」だけ、なぜ小文字なのか。山中教授の口から、その理由があらためて明かされました。

もともとは、「ES細胞」と対等に「○S細胞」と命名したかった。でも目新しい「2文字」が見つからない。
最終的に「IPS細胞」にしたけど2文字っぽさを残そうと、「 I 」を小文字にして「iPS細胞」にしたとのこと。
Appleの「iPod」を意識したのは本当ですが、あくまで「 I 」の存在感を弱めるためだったんですね。

あるときAppleの幹部に「iPodのマネしてiPSにしたけど」と言ったら、「ええんちゃう?」と言われたとか。
そのくだりがなんとも、関西人。

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山中伸弥と桂文枝
- 2018/03/22(Thu) -
「日本循環器学会」の会員の方なら、タイトルを見てピンときたでしょう。
明日から3日間、大阪で開催される「日本循環器学会学術集会」に、初日の明日だけ、参加してきます。
休診日を利用した日帰り参加なので、始発で大阪に飛んで夕方帰熊するという強行軍です。

日本循環器学会の学術集会と言えば、私が最初に「参加」したのは、昭和59年の春でした。
学生アルバイトとして、スライド受付係をしただけなので、本来の意味での学会参加ではありません。

当時の学会発表では、35mmポジフィルムをケースにマウントした、「スライド」を使っていました。
これを10枚ほど装填した細長いホルダーを、プロジェクターの横から差し込んで、順次映写するのです。
現物を見たことない方には、何のことやらサッパリ想像もつかないでしょうね。

いまや、ほとんどの医学系学会の口演発表が、PCを使った映写になりました。
明日の学会も、WindowsのPowerPointを使ったプレゼンが原則で、原稿はUSBで持ち込むことになります。
Macで発表したければ、自分のMacと変換アダプタを持ち込んで、それを使って映写しなければなりません。

世の中、Macに冷たいのです。ひところは、医者の間でMacは結構なシェアを占めてたんですけどね。
いまやWindowsでの発表に限定している学会もあるので、日本循環器学会はまだ理解のある方なのでしょう。

さて、一般的に学会の内容は、「一般演題」と「特別講演」の2つに、ザックリ分けることができます。
前者は、多くの会員たちが研究の成果を数分単位で報告・発表し、活発な議論を戦わせるものです。
後者は、一流の研究者らが重要テーマをじっくり語るものであり、聴く価値がきわめて高いとも言えます。
明日は午前中に山中伸弥氏の「記念講演」と、午後には桂文枝による「特別講演」があるのが楽しみです。

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心房細動週間
- 2018/03/19(Mon) -
昨年も書いたように3月9日は「脈の日」、その日から始まる1週間(3/9〜15)は「心房細動週間」でした。
このことから、脈についての最も関心をもつべき疾患は「心房細動」だと言うこともできます。

心房細動とは、心房の電気的活動が細かく不規則になり、心房が震えるように収縮する(細動)状態です。
その不規則な興奮が心室に伝導する過程で、一定の制御がかかるので、心室までが細動することはありません。
しかし心室の拍動(心拍)は不規則となり、手首で触れる脈はひどく乱れています。

このように心房細動は、脈だけでほぼ診断がつきます。だから心房細動週間は、脈の日から始まるのでしょう。

心房細動では動悸や心機能低下も起きますが、最も重要なのは心房内での血液の「うっ滞(よどみ)」です。
血液というのは、よどむと凝固して血栓ができやすくなるのです。
左心房内にできた血栓が、左心室に入り、大動脈へ拍出され、どこかに流れていくと、血管に詰まります。
それが脳の血管に詰まった場合には、脳梗塞(脳塞栓)を起こしてしまいます。

このような、心臓が原因で起きる脳梗塞を「心原性脳塞栓」といい、脳梗塞全体の2,3割を占めます。
脳血管の動脈硬化が原因で脳内で血栓ができる「脳血栓」に比べて、心原性の方が血栓が大きいのが問題。
同じ脳梗塞でも、心原性の方がより広範囲の脳が障害されるので、重篤な後遺症が残りやすいのです。

ですから心房細動の治療では、不整脈を止めることよりも、心原性脳塞栓症を防ぐことが最重要となります。
まずは、脳を守るために抗凝固薬を飲む。その次に、可能なら脈そのものを落ち着ける治療が検討されます。

抗凝固薬は、以前は「ワーファリン」だけでしたが、最近は「NOAC」という種類の新薬もよく使われます。
ワーファリンは投与量の調節のためにたびたび採血が必要で、納豆厳禁となりますが、とても安価な薬です。
一方でNOACは、用量調節不要で納豆OKですが、半減期が短いので飲み忘れると大変。しかも高額な薬です。

いずれにしても、ほぼ無症状の方に一生飲んでもらう大事な薬なので、処方の際には丁寧な説明が不可欠です。
残念ながら世の中には、心房細動なのに無治療の方がとても多いそうです。皆さん、ときどき脈を診ましょう。

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A型インフルまた流行?
- 2018/03/18(Sun) -
熊本では昨日、去年よりも15日早く、桜の開花宣言が出ました。開花が早いのは全国的な傾向のようです。

真冬の寒さと春先の暖かさが開花を早めたのだと、気象予報士の方が説明していました。
休眠していた花の芽が、一定期間の真冬の寒さによって目覚め(休眠打破)、温かい春先に成長すると。

それにしてもこのところ、昼間はそこそこ暖かいのに、朝だけはひどく寒い日が多いですね。
朝晩の血圧記録のグラフが、ひどくギザギザしている(朝が高い)患者さんが、ここにきて増えています。

おまけに、終息していたかと思っていたインフルエンザがこの数日、また流行の兆しです。
今日1日だけでも、新規のインフルエンザ患者が8名来院。すべてA型でした。
もしも当院がインフルエンザの定点医療機関なら、過去1週間の報告数は優に警報レベルを超えますけどね。

昨年11月頃、A型が出始めたかと思ったらすぐB型も流行し、1月からはB型が主流になって、いまはA型。
いったいどうなってるのか、国立感染症研究所の「ウイルス分離・検出状況」を見て、謎が解けました。
年末のA型がほとんど「A(H1)pdm09」だったのに対して、今のA型は「A(H3)」に切り替わっています。
前者はいわゆる「新型(ブタインフルエンザ)」で、後者は昔からの「季節性(A香港型)」です。

こういう流行のしかたって、最近では珍しいパターンです。
前シーズンのA型はほぼすべてA(H3)だったし、その前はすべてA(H1)pdm09で、その前はA(H3)のみ。
1年毎に交互にA(H3)とA(H1)pdm09が流行してきたのに、今期は正月をまたいで両方が流行しているのです。
もしかするとA(H3)は、前に危惧(予言)したように、米国からの輸入かもしれません。

今シーズン、A型とB型の両方に罹るだけでなく、A型に2回罹る方も増えるかもしれませんね。ご用心を。

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スギ花粉症がピーク
- 2018/03/16(Fri) -
第10週(3/5〜3/11)の定点あたりインフルエンザ報告数は、第9週と比べると、さらに減っていました。
熊本市:10.96→7.04、熊本県:12.70→7.78と、熊本では警報レベルが解除される10以下となりました。
北日本ではまだ報告数が多いようですが、全国的にはようやく、流行が終息しそうです。

インフル流行期には、普通の風邪の方は受診を控える傾向があります。感染を警戒してのことでしょう。
しかし今週は、熱や上気道炎症状で来院される方が、インフルエンザではないケースが増えてきました。

そしてそれ以上に、スギ花粉症と思われる、くしゃみ・鼻水・鼻づまり・目の痒みで困ってる方がとても多い。

「花粉症のようですね」と私が告げると、
「えっ、私は花粉症じゃありませんよ」と否定する方がいます。
「では、今年から花粉症なのかもしれませんね」と説明すると、なおさら困惑されることになります。

花粉症は、アレルギー体質(素因)の方が、長い年月をかけて花粉を浴びることによって起きます。
体内に、花粉に対する十分な強さの抗体が出来て初めて、花粉症の症状が出始めめるわけです。
だからスギ花粉症が50代で始まっても、何の不思議もありません。ようやくその歳になったということです。

スギのほとんどは、戦後に植林されたものだといいます。
これからは花粉の少ないスギを植林する方法によって、遠い将来、スギ花粉症は激減するかもしれません。
しかし、今後しばらく(数十年?)は、スギ花粉の飛散量は増える一方だとも言われます。悲惨です。

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インフルとマスク
- 2018/03/04(Sun) -
日頃の診察中や検査中には、患者さんの咳のしぶきをモロに顔面に浴びることが、しばしばあります。
なのでインフルエンザの流行期に入って以来、診療中にはマスクを装着しています。
マスクをたびたび着脱すると、その操作によって不潔になりやすいので、マスクは常時つけっぱなしです。

もちろん、そのような状況で、ウイルス感染をマスクだけで予防できるとは考えていません。
頻繁に手洗いをします。顔や頭髪はたびたび洗うわけにもいきませんが、メガネは時々洗います。

しかし考えてみると、もう私の免疫は十分できていて、マスク等で予防することなど不要かもしれません。
この数カ月で、千人以上の患者さんからのウイルス曝露(咳・くしゃみ攻撃)を受けてきたはずだからです。

インフルエンザウイルスは、口や鼻から侵入すると、気道の粘膜細胞に感染しようとします。
すると、気道粘膜上に分泌されている「分泌型IgA抗体」が、まず最初の防御因子として働き始めます。

一方で、ワクチンの接種によって誘導されるのは、「IgG抗体」という、血液中の防御因子です。
IgG抗体はウイルス感染の最初の防波堤にはなり得ません。最前線で働くのは、あくまで分泌型IgA抗体です。

何度もウイルスを浴びてきた私の場合、この分泌型IgA抗体が、極めて発達した状態にあると考えられます。
だからもう、私は十分な免疫を獲得しているので、そろそろマスクをやめてもいい時期かと思うわけです。

それに「iPhone X」を使う時、いちいちマスクを外さないと「顔認証」ができないのも、ストレスなのです。

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がんを予防する自由
- 2018/02/28(Wed) -
HPVワクチンは、副反応を疑う事象が問題となって積極的勧奨が中止され、接種は実質的に止まっています。
このことについて、某医師系サイトが行った日米医師の意識調査の結果は、なかなか興味深いものでした。

「日本は接種を勧奨すべきだ」とする産婦人科医の割合は、日本の78%に対して、米国では意外にも57%。
一方で「接種者が個別に判断すればよい」とする産婦人科医の割合は、日本の14%に対して米国では41%。

つまり米国の医師は、ワクチンを接種するかどうかは国ではなく個人が決めることだ、という考えなんですね。
医学的な判断はどうあれ、最終的には個人の意思を尊重するというのが、いかにも米国的です。

ひるがえってわが国の、接種率がほぼゼロという現状は、はたして個人の意思によるものなのでしょうか。
全国民がそれぞれ自分の判断で、HPVワクチンを否定した結果なのでしょうか。
メディアの執拗なネガティブキャンペーンに惑わされ、思考停止に陥ってるのではないのでしょうか。

そのメディアが作った世論に負けて、大事なワクチンの接種を事実上停止させてしまうという、弱腰の厚労省。
しかし積極的には勧めないくせに定期接種のままにしておくのは、あとで言い逃れするためのずるい伏線です。

医学的根拠に乏しいとされるのに繰り返し放送された、あの少女の映像こそが、HPVワクチン問題の始まり。
ワクチンが予防しようとしている病魔の恐ろしさの方に国民の目を向けさせるためには、どうしたらいいのか。
がんを予防しようという気にさせる、効果的な方法はあるのでしょうか。

私は、子宮頸がんの統計、病状、手術シーン、摘出臓器など、あらゆる現実を、映像で流すべきだと思います。
ワクチンの副反応だとする映像にはいまだに議論がありますが、子宮頸がんの惨状に議論の余地はありません。
毎年3,000人が子宮頸がんで亡くなっているという現実から、目を背けてはなりません。

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感染症は感染する
- 2018/02/25(Sun) -
インフルエンザの定点当たり報告数が、大幅に減少しています。
第6→7週(2/12-18)の変化は、全国:45.38→29.65、熊本県:49.64→31.35、熊本市:38.24→26.80。
このペースだと第9週(明日からの週)には、警報レベル解除基準(1定点あたり10)まで減りそうです。

今シーズンは、A型とB型の両方に罹る方だけでなく、同じ型のインフルに2回罹った子にも遭遇しました。
さらに今日などは、今期3回目のインフルエンザ(A型2回、B型1回)と診断した方もいて驚きました。

インフルエンザに罹ったお子さんは、最も経過が良い場合でも、登校・登園ができるのは発症の6日後です。
このとき、いつが発症日なのか、その解釈がとても重要になりますが、それはしばしばアバウトです。
学校保健安全法を遵守して、登校・登園日を決めるわけですが、そこには「さじ加減」の余地もあるわけです。

急性胃腸炎(嘔吐・下痢)のお子さんがいつから登園できるかは、病状をみて決めることになります。
ノロやロタやアデノウイルス感染症のような、いわゆる「感染性腸炎」の場合は、とくに厳格に対処します。
一方で、原因不明の胃腸炎、たぶんウイルス性?、ぐらいの病状だと、もう少し緩い対応になります。

「胃腸炎ですね」と親御さんに説明すると、「感染性でしょうか」という質問をしばしば受けます。
「感染力の強い胃腸炎ではないと思いますが・・・感染性か感染性じゃないかで言えば、感染性です」
と応えると、親御さんはたいてい、ガッカリされます。まるで「伝染病」と言われたような反応です。

そんな時は、「おなかの風邪みたいなものです。風邪でも感染するでしょう?」と言って理解を求めます。
保育園や幼稚園が感染症に過敏になりすぎているので、親御さんに伝える病名には気を遣いますね。

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インフル中間総括
- 2018/02/19(Mon) -
インフルエンザの流行はそろそろ、終息です。第6週(2/5〜2/11)の定点当たり報告数を第5週と比べると、
全国:54.33→45.38、熊本県:55.06→49.64、熊本市:51.84→38.24と、明らかにピークを過ぎました。

幼稚園から検査するように言われたと来院する発熱者の、その半分はインフルエンザではなくなりました。
しかし、例年なら検査しないような軽症例でも、懇願されて検査したら陽性が出たりするので油断できません。

今年は「隠れインフル」が多いと報じられているため、軽症でも求められたら検査を断れない面があります。
職場から検査を求められて来院する、微熱の成人もいます。そして実際、調べてみたら陽性だったりします。

なかには、「高熱なのにインフルなんですか?」などとオカシナことを言う、B型インフルの方もいます。

嘔吐や下痢など、胃腸炎症状主体のインフルエンザが今年は多いことも、知れ渡っています。
「下痢をしたのでインフルだと思って来ました」などと言う、明らかに普通のウイルス性胃腸炎の方もいます。

インフルエンザの非典型的症状ばかりが報じられやすく、一般の方の目もそちらに向いてしまいがちです。
しかし、従来通り高熱でぐったりした、いかにもインフルエンザっぽい方も多いのです。
B型でそのような重症例はたいてい、これまでにインフルエンザに罹ったことがない、と言う方です。
正確な集計はできませんでしたが、やはりワクチン未接種の場合、インフルエンザに罹りやすいようです。

来年こそは、ワクチン接種とインフル罹患との関係を統計学的に解析して(報告して)みたいものです。

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先駆けインフル薬
- 2018/02/08(Thu) -
大流行中のインフルエンザに関連して、明るい話題と言えば、新しい治療薬「ゾフルーザ」の登場でしょう。

タミフルなどの抗インフルエンザ薬は、細胞内で増殖したウイルスが細胞外に出るのをブロックする薬です。
一方でゾフルーザは、ウイルスが細胞内で増殖するのを、その初期段階で食い止めます。
単独では増殖できないインフルエンザウイルスが人の細胞内の「道具」を利用するのを、ブロックするのです。

増殖したウイルスを細胞内に閉じ込めるタミフルに対して、ゾフルーザはウイルスを増殖させない薬です。
その作用機序の違いによって、タミフルよりもウイルスを早く減らす効果があると期待されています。

先週厚労省の部会の審査で了承されたので、3月には承認され、5月ごろまでには発売される見込みです。
もしかすると、現流行シーズンの終わり頃には、処方ができるかもしれません。

ゾフルーザは、厚労省が優先的に審査する「先駆け審査制度」の対象品目として指定されていました。
画期的新薬を世界に先駆けて承認する「先駆け薬」としての指定要件をおおざっぱに言えば、次の4つ。
(1)画期性:新しく画期的な作用機序であること
(2)重篤性:生命に重大な影響がある疾患の治療薬であること
(3)有効性:既存薬に比べて有効性が高いと見込まれること
(4)日本製:世界に先駆けて日本で開発・申請されたこと

急いで導入するのはいいけど、もしも重篤な副作用が出たら、マスコミの格好の餌食になるでしょうね。
そのような場合でも、厚労省におかれましては、おかしな処方制限などを付けたりしないでいただきたい。
日本発の新薬が、日本以外の国だけで評価されるようなことのないように、お願いします。

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