10代のタミフル解禁へ
- 2018/05/17(Thu) -
インフルエンザ治療薬「タミフル」はこれまで、10代への使用が原則禁止とされてきました。
理由は、タミフルが「異常行動」を引き起こす可能性があると疑われたからです。

厚労省が2007年に、そのように決定したきっかけは、
「タミフル内服後の中学生がマンションから転落死した2件の事故」でした。

それが11年ぶりに、10代へのタミフル処方が解禁されることになった根拠は、
「タミフルを飲まなくても、インフルエンザにかかると異常行動が起きていた」ことがわかったからです。

もう何年も前から、タミフルが濡れ衣を着せられていることは、科学的データが示していました。
われわれ医療現場の者も、タミフル服用とは無関係に異常行動が起きたケースを、何人も見てきました。
そんなことはとっくにわかっていたのですが、ようやくこのたび厚労省が重い腰を上げたわけです。

これって、何かと似てませんか。そう、HPVワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)です。

厚労省は2013年に、HPVワクチン接種の積極的勧奨差し控えを決め、現在に至ります。そのきっかけは、
「ワクチン接種後に、痛みや運動障害を訴える症例が出現したこと」でした。

しかしたとえば2015年の名古屋市の疫学調査では、
「ワクチン接種者と非接種者の間で、さまざまな症状に差が無かった」ことがわかりました。

もう何年も前から、HPVワクチンが濡れ衣を着せられていることは、科学的データが示しています。
そんなことはとっくにわかっている厚労省ですが、いまだに積極的勧奨接種を再開しようとしません。
いったい何を待っているのでしょう。もう何も、新事実は出てきませんよ。決断するしかないのです。

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土俵上の心肺蘇生
- 2018/04/05(Thu) -
大相撲春巡業で、土俵の上で倒れた人に救命処置を施した女性が、土俵から下りるように放送で促された問題。
心肺蘇生の継続よりも、女人禁制の伝統を守ることの方が重要だと、アナウンスした行司は考えたのか。
土俵上にいた男性のうちの誰かが、救命処置を引き継いでくれるだろうと期待していたのかもしれません。

残念ながら、女性よりも先に土俵に上がっていた数人の男性は、何もせず患者を取り囲んでいただけでした。
見るに見かねて女性は土俵に上がり、その数秒後には心臓マッサージを開始しています。これは早い。

心肺蘇生において重要なのは、躊躇しないことです。
救命処置を開始するまでのわずか10秒20秒のためらいが、患者の救命率を下げると考えなければなりません。
あの衆人環視の土俵上で、ただちに心臓マッサージを開始した女性の判断力と行動力には、感服します。

たとえ医療従事者でも、通りすがりの救急処置を行うことに際しては、いくつものハードルがあるものです。

本当に蘇生が必要な状況なんだろうかという迷いがあると、考えているうちに時間がどんどん過ぎていきます。
心臓マッサージによって、肋骨や肺などを損傷する危険があり、後になって問題化しかねません。
まったく不要で的外れの心肺蘇生を行ってしまえば、あとで大恥をかくどころか、訴訟のリスクもあります。

倒れた舞鶴市長はくも膜下出血で手術したそうですが、救急処置の甲斐もあってか、命には別状ないとのこと。
これがもしも救命できていなければ、処置が不適切だったと、女性はメディアに非難されたかもしれません。
女だてらに土俵に上がるから、結局このざまだ、などと心ない言われ方をしたかもしれません。
今回の場合、まず非難されるべきは、土俵の上で何もせずに患者を取り巻いていた、男性陣の方でしょう。

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手術器械の再使用
- 2018/04/03(Tue) -
大阪母子医療センターで、再使用が禁じられている機器を小児の心臓手術に使い回していたと報じられました。
まったく困ったものです。何が困ったものかって、その薄っぺらな報道ですよ。報じられているのは次の2点。

(1)子どもの心臓手術で、細い血管を一時的に遮断するために、脳動脈瘤用のクリップが便利なので流用した
(2)メーカーは再使用を禁止しているが、滅菌処理すれば利用可能と担当医らは考えて再使用していた

心臓外科手術では、血管を一時的に遮断する際には、さまざまな形や強さやサイズの鉗子を使い分けています。
とくに小さな血管を挟むときには、ブルドック鉗子とかクレンメと呼ばれる、小さくて精密な鉗子を使います。
しかし脳外科用のクリップの方が、奥深い場所に挿入しやすく、とても小さく便利にできています。
こういっちゃナンですが、私も何度か使ったことがあります。より繊細な手術操作のために有用だからです。

単純な構造の金属(チタン)クリップなので、通常の手術器械同様に、容易に滅菌できるはずです。
もしもクリップを滅菌しても感染のおそれが残るというのなら、ピンセットやハサミや鉗子だって同じです。
滅菌可能な手術器械は、再滅菌して再使用するのが原則であり、すべてを使い捨てにするわけにはいきません。

ただし脳動脈瘤用のクリップは、いちど挟んだら永久に挟み続ける、その安定性が求められます。
だから、再滅菌を繰り返すことによるクリップの劣化を危惧して、再使用が禁じられているのでしょう。

しかし心臓手術で一時的な血管遮断に使うのであれば、クリップの劣化はそれほど問題にはなりません。
挟んでみてイマイチなら、その場で別のクリップで挟みなおせばいいからです。

クリップの流用にも滅菌にも何の問題もないのに、規則違反だったということだけで、ひどい報じようです。
難易度の高い手術を成功させるために創意工夫をしたことが、どうしてここまで叩かれるのでしょう。

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妊婦加算
- 2018/03/31(Sat) -
某雑誌が、「4月の『一斉値上げ』丸わかり表」というのを掲載しているのが、ネットでウケてます。
その栄えある第一番目にあげられているのが、「一部医療機関の初診料800円値上げ」という項目。

記事の詳細は読んでませんが、800円と言えばアレでしょう、「機能強化加算」!

「かかりつけ医」にかかると、初診料が800円ほど上乗せされるという、こんどの診療報酬改定の目玉の一つ。
制度拡充のためのインセンティブの800円なのですが、儲かるのは医者で、患者から見れば単なる値上げです。
新たな仕組みを創設して広めようとすると、どうしてもこのような、ちぐはぐな仕組みになってしまいます。

さて、明日4月1日から、その改定された診療報酬に基づく診療が始まります。

昨日の休診日には、電子カルテのシステムをバージョンアップするために、準備作業を行いました。
そして今日の診療終了後、電子カルテの設定変更を行いました。
明日は日曜日ですが当院は診療日なので、今日のうちに最終調整しておく必要があったのです。

「妊婦加算」なんていう仕組みも、今回から導入されます。産婦人科でもない当院でも、算定できます。

「妊娠の継続や胎児に配慮した適切な診療を評価する観点」から新設されたもので、初診料が増額されます。
この加算の場合も、医者の診療報酬の増額分750円は、妊婦本人などが負担する仕組みです。

心身共に辛く、しかも何かと物入りな妊婦が、医者にかかればいちいち医療費がよけいにかかるわけです。
「妊娠の継続や胎児に配慮」する主旨とは裏腹に、むしろ妊婦の負担を加算してしまうかもしれません。

ところで妊婦加算の算定においては、患者が妊婦であるかどうか、明確な根拠を確認する必要はなさそうです。
ならば、妊娠の可能性が否定できない状況の女性であれば誰でも、妊婦加算の算定対象になるんでしょうね。
だって、妊娠の可能性が少しでもあれば、「妊娠の継続や胎児に配慮した適切な診療」が必要なわけですから。

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ベタなネーミング
- 2018/03/29(Thu) -
糖尿病治療薬の、新たな配合剤が製造販売承認を取得し、5月には発売される見込みです。
よく飲む組み合わせの医薬品2剤(ときに3剤)の、成分を合わせて1剤(1錠)にしたのが配合剤(配合錠)。

私はこれまでに、配合剤の命名法については厳しい指摘をしてきました。とにかく、わかりにくいのです。
たとえば、「ディオバン」と「アムロジン」の配合剤が、なぜ「エックスフォージ」なのかと。
「アジルバ」と「アムロジン」の配合剤だと「ザクラス」ですよ。クレジットカードじゃないんだから。

配合している内容が一目瞭然の名称にしてくれと、ずっと言ってきました。そしたらついに、出ましたね。

このたび発売されるのは、「スーグラ」と「ジャヌビア」を配合して、「スージャヌ」!
ベタですねー。小林製薬ですか。そんなネーミングを、よく担当役員が許しましたね。

いえいえ、非難しているのではありません。むしろ好評価しています。なんなら称えてます。グッジョブ!
今年のベスト・ネーミング・ドラッグ・アワードに推奨したいぐらいです(そんなのがあれば)。

ただ、「スージャヌ」という言葉は、日本語としては違和感がありますね。
辞書で調べると、語尾が「ゃぬ」の日本語は、皆無でした。どうりで聞き慣れないはずです。
どうかすると、「ジャズ」のことを「ズージャ」と言うのにも似た、業界用語的な響きすら感じます。
だからなのか、スージャヌのメーカーパンフの表紙には、ジャズマンが2人描かれています。
ただ私としては、「スージャヌ」よりも「ジャヌスー」の方が、もっと業界っぽくて良かったけど。

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時間配分の悪い講演
- 2018/03/27(Tue) -
熊本県立劇場で今夜、2年に1度の「診療報酬改定」の説明会が行われたので、その報告です。

各種団体による説明会が先週にも行われましたが、今日は医師会と厚生局が共催する、最重要説明会でした。
なにしろ厚生局の「集団指導」という名目付きなので、医療機関の人間はみな、ビビり上がって参加します。
すみません。大げさでした。

震災からの復旧後に県立劇場のコンサートホールに入るのは、考えてみると私は今日が初めてでした。
2年前の3月25日にも、前回の診療報酬改定説明会が行われました。あれは地震の20日前だったのですね。
壁や天井やシャンデリアを見上げながら、あの地震では天井の一部が落下したという話を思い出しました。

前回、説明会の前に県立劇場向かいの焼肉店「彩炉」で食事をしました。今日もそこで食べました。

で、説明会ですよ。19時ちょうどに始まったのはいいけれど、その後のお偉いさん2人の挨拶が、ちと長い。
次に医師会の理事の方が、きっかり60分で診療報酬の改定概要を説明。これはまあ、いいでしょう。

問題はその次。厚生局の指導医療官という、本来いちばん恐れるべき方なのですが、言わせてもらいます。
時間配分がなってない(失礼)。こんなこと書くと、あとで「指導」されるかもしれませんが、書きます。
140ページの冊子をチマチマと(じゃなくて丁寧に)説明していく亀のようなペースには、呆れました。
最初の方だけで大半の時間を費やしてしまい、途中から駆け足、最後はバタバタでした。
自分に与えられた60分という時間と、説明すべき分量との配分を、ちゃんと計算してないんじゃないの?

おかげでほら、肝心の診療報酬改定の内容に触れないうちに、今日のブログも尻切れトンボになったでしょ。

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医療機能情報の提供
- 2018/03/26(Mon) -
「熊本県医療機能情報提供制度に係る調査」の記入用紙が、今年も届きました。締め切りは今月末。
医療機関の診療曜日・時間や科目、実績、サービスを含め、そこそこ詳しく記載する必要があります。

その調査結果は、「熊本県総合医療情報システム くまもと医療ナビ」のサイトで閲覧することができます。
民間のサイトがマネできない点は、人員配置や外来患者数などの数値が、正確に表示してあることです。
これらはすべて、各医療機関が報告した数値であり、他の医療機関と比較することもできます。

いま、くまもと医療ナビを見て見ると、当院の1日当たりの外来患者数は、60.2人となっています。
これが多いとか少ないとかの議論はさておき、いったいいつの数値なのか、ということです。

「前年度(2016年)」とサイトには記載されていますが、間違えてはなりません。2015年度のデータです。
「前年度(2016年)」というのは、「2016年からみて前年度」という、お役所用語なんでしょうね。

いま平成30年だというのに、平成27年度のデータを最新データとして記載しているのは、問題があります。

今月届いた記入用紙には、患者数については平成28年度のデータを記載するようにと、注意書きがあります。
たしかに、今月末が提出期限なので、平成29年度のデータは記載できません。
くまもと医療ナビにおいて、次年度(平成30年度)に掲載される最新データは、平成28年度のものです。

調査用紙の提出期限を1カ月遅くして、最新の平成29年度のデータを提出させればいいと思うんですけどね。

平成28年度って、熊本地震の年ですよ。4月からしばらく患者数が激減した、あの苦しかった年度です。
今後1年間、くまもと医療ナビに掲載される医療機関の最新情報は、震災年度のデータです。
県民の皆さまにおかれましては、その点を十分に考慮の上での閲覧を、お願いします。

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インフル綿棒挿入奥義
- 2018/03/24(Sat) -
インフルエンザはまだ、しつこく出てはいますが、おおむね下火になってきました。
第11週(3/12〜18)の定点当たり報告数は、熊本市4.68、熊本県5.04と、第10週よりさらに減っています。

鼻腔の奥の方に綿棒を入れて鼻汁を採取する、あのイヤな検査も、この数日はあまりやらなくなりました。
綿棒の出し入れで鼻腔を擦るので、とくに鼻水の少ない方や鼻づまりの方は、とても痛いですよね。
幸か不幸か花粉症のこの時期、多量の鼻水が出ている方が多く、綿棒の滑りの良い方が多いですけどね。

インフルエンザの迅速検査で綿棒を鼻腔に入れるときには、私がとくに気を付けていることが2つあります。

(1)鼻孔を観察して、よく湿っている方(または鼻水が出ている方)から挿入する
両方から鼻水ダラダラの人もいますが、一方だけから鼻水が出ている人も、けっこう多い。
その場合、鼻水が出てない方は詰まっていると考えるべきです。そっちに綿棒を入れてしまうと、とても痛い。
健康時の鼻腔にも、左右の鼻粘膜が2,3時間おきに交互に腫れる「鼻サイクル」が、生理的に存在します。
風邪や鼻炎などの時には、この鼻粘膜腫脹が増強し、どちらか一方に強い鼻づまりが起きやすくなります。
どちらが詰まっているのかを見分けるために、鼻孔の濡れ具合(または鼻水の垂れ具合)を観察するわけです。

(2)ひどく痛がるときは、すぐ止める
鼻中隔の彎曲など、別の理由で綿棒が入りづらい場合もあるでしょう。けっして無理してはいけません。
挿入を中止して、ひと休み。あらためて反対側で試みると、驚くほどあっさり入ることが多いです。

ていうか、痛みがなくて検出率の高い、しかも安価で迅速なインフルエンザ検査法はありませんかね。

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KMバイオロジクス
- 2018/03/14(Wed) -
「化血研(化学及血清療法研究所)」は、ご存じのように、「明治ホールディングス」の傘下に入ります。
実際に化血研の事業を引き継ぐのは、熊本に本拠を置くことになる「KMバイオロジクス」という新会社です。

小耳に挟んだ情報に寄れば、KMバイオロジクスの「K」は「熊本」「M」は「明治」から来ているとか。

この時期に思い出すのは、かつて明治製菓が持って来てくれた、バレンタインデーチョコの詰め合わせです。
当時は、お菓子メーカーの明治製菓が、医薬品も製造していたのです(いまは別会社)。
明治のMRさん(営業の方)が毎年、明治製菓のお菓子をどっさりと箱に詰め込んで、持って来てくれました。

もっとさかのぼるなら、研修医時代。明治のプロパーさん(営業の方)が、毎日のように現れました。
彼は研修医部屋(通称タコ部屋)の冷蔵庫に、ギッシリと明治のジュースを詰め込んで帰って行くのです。
来る日も来る日もひたすら、何も喋らず黙々と淡々と、冷蔵庫をジュースで一杯にすることが彼の仕事でした。

当時は他の製薬会社も、それぞれのやり方で、医者を接待するのが常でした。
規制が緩く、おまけに80年代後半のバブル期のことです。研修医ですら、接待攻撃の対象だったのです。

ところがバブル崩壊後、製薬業界の態度が一変します。
まずは、公立病院の勤務医の接待が止まり、大学病院も厳しくなり、やがてすべての接待がなくなります。
もちろん今は、私立病院や開業医も例外ではありません。その点は誤解無きようお願いします。

各社が一斉に接待をやめれば、どの会社も不利にならないという業界の示し合わせ、いうなれば談合ですか。
まあ、いいですけどね。薬剤の情報や話題については、いまやネットで十分な情報を得ることができますから。
医者が使う薬の選択を営業が左右する時代は、終わりつつあるんでしょうね。

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インフル新薬かなり高額
- 2018/03/07(Wed) -
1回内服するだけの、しかも新しい作用機序の抗インフルエンザ薬「ゾフルーザ」の薬価が決まりました。
10mg錠は1507.5円、20mg錠は2394.5円。「薬価」というのは、診療報酬上の薬の価格のことです。

この薬の用量は、体重によって決められています。
(1)10kg以上20kg未満:10mg錠1錠(1507.5円)
(2)20kg以上40kg未満:20mg錠1錠(2394.5円)
(3)40kg以上80kg未満:20mg錠2錠(4789円)
(4)80kg以上:20mg錠4錠(9578円)

60kgから80kg未満の方には、20mg錠3錠が適切だと思うのですが、そのような用量設定はありません。
その設定で治験を行っていないためです。60〜80kgの成人って、結構多いと思うんですけどね。私もそう。

従来の抗インフルエンザ薬の薬価がどうかというと、成人の場合、体重に関係なく、
タミフル」1日2回、5日分で2830円。
「リレンザ」1日2回、5日分で3058円。
「イナビル」1回のみで4280円。

ゾフルーザはかなり高額なので(とくに80kg以上の方)、患者さんと相談して処方する必要がありそうです。
先日、今後の抗インフルエンザ薬は、ゾフルーザの一人勝ちになると書きましたが、違うかもしれませんね。

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ゾフルーザ発売間近
- 2018/03/05(Mon) -
「1回だけ飲んで効く薬があるんでしょう?」
インフルエンザの患者さんから、そのように尋ねられました。新薬「ゾフルーザ」のことですね。
塩野義製薬が開発し、先月製造販売承認を取得した薬ですが、残念ながらまだ、発売されていません。

抗インフルエンザウイルス薬は、現時点で4つ。ゾフルーザで5つ目となります。
タミフル」1日2回、5日間内服する薬。異常行動の濡れ衣によって、10代への処方が原則禁止です。
「リレンザ」1日2回、5日間吸入する薬。10代でも使えます。吸入法がやや面倒。効果は強い。
「イナビル」1回吸入するだけの薬。効果がやや弱いという意見もありますが、とにかく簡便なので私は好き。
「ラピアクタ」点滴薬。効果は早い。でも点滴が必要。脱水を伴うインフルエンザ患者には使いやすい。
「ゾフルーザ」まったく新しい作用機序。効果も強い(らしい)。1回飲むだけ。

こう書いてみると、ヘタしたら今後の抗インフルエンザ薬は、ゾフルーザの一人勝ちになりそうな気もします。

さて、ゾフルーザの添付文書を見ると、安全性に関してはいくつかの注意喚起がなされています。
(1)警告:本剤の必要性を慎重に検討すること
必要と思うから処方するんですよね。それをわざわざ警告する意味ある?、この手の警告、形骸化してません?
(2)禁忌:本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者には投与しないこと
この世に初めて登場した新薬なのに、「本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者」って、いるんですか?

今月中には発売されそうです。新しもの好きなので、速攻処方して、効果のほどを確認したいですね。

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タミフル安くなります
- 2018/02/23(Fri) -
抗インフルエンザ薬「タミフル」の後発品(ジェネリック医薬品)が初めて、製造販売承認されました。

沢井製薬から6月に発売される、「オセルタミビルカプセル75mg「サワイ」」という、長い名前の薬です。
後発品は原則として、有効成分の名前である一般名(generic name)+「会社名」で名乗るきまりなのです。

現在の、医療費としてのタミフル(先発品)の価格、いわゆる「薬価」は、1カプセル283円です。
後発品が初めて収載され、しかも沢井製薬1社だけなので、薬価はたぶん先発品の5割になるのだと思います。

1日2カプセル(朝晩)を5日間内服するとして、医療費の差は約1,400円、3割負担なら400円ぐらいです。
実際の薬局での支払には、調剤料やら指導料やら加算などが加わって、400程度の差は埋没しますけどね。

それに抗インフルエンザ薬なんて、生活習慣病の薬のように1年中内服するわけでもありません。
だから人気がなかったのか、このたびジェネリックを発売することになったのは、沢井製薬1社だけでした。

一方で、降圧剤(高血圧治療薬)の「アイミクス」は、20社から後発品が発売されることになりました。
やはりこの手の生活習慣病治療薬は、大人気のようです。しかも最近はやりの「配合錠」ですしね。

2種類の降圧剤「アムロジピン」と「イルベサルタン」をミックスした薬なので「アイミクス」です。
その一般名「イルベサルタン/アムロジピンベシル酸塩」は長すぎるので、後発品名は「イルアミクス」です。

10社以上から発売される後発品は、先発品の4割の薬価になるはずです。これは患者さんにはありがたい。

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かかりつけ医割増し
- 2018/02/18(Sun) -
「24時間、365日対応」「常勤医2人以上」
国が進めようとしている「かかりつけ医」制度には、このような基準が医療機関側に求められます。
基準は多少緩和されましたが、それでも、医者が私1人だけの当院は、かかりつけ医になれません。

そもそも、医師2人で24時間365日対応せよ、なんていうこと自体が、ブラックジョークとしか思えません。
「働き方改革」を進める厚労省が、医師に対しては、ブラック企業のような働き方を勧めているわけですから。

「かかりつけ医」の基準を満たした医療機関では、初診料が従来の2,820円から3,620円にアップします。
差額の800円は「機能強化加算」とよばれるもので、「かかりつけ医割増し」と言ってもいいでしょう。
上乗せされた分、医療費が上がります。たとえば3割負担の方なら、240円ほど支払いが増える計算です。

つまり「かかりつけ医」にかかると、そうじゃない医者にかかるよりも、患者負担は大きくなるのです。

問題は、「かかりつけ医」が個々の患者にとっての実際の「かかりつけ」かどうかは関係ないということです。
国が言う「かかりつけ医」というのは、「かかりつけ医機能取得医療機関」ともいうべき、一種の資格です。
この資格を取得した医療機関は、すべての受診患者に対して「かかりつけ医」となります。

したがって、その医療機関に初めてかかった患者にも、「かかりつけ医割増し」が800円上乗せされます。
逆に、毎月来院する生活習慣病等のかかりつけ患者からは、割増料金はとれません。初診ではないからです。

こう考えてみると、国が描いている「かかりつけ医」像は、かなりいびつです。
そしてその制度を誘導しようとして医者に与えるインセンティブは、結局、患者負担増が財源です。
そのことが裏目に出て、制度が思うように普及しないという、ありがちな結末を迎えそうな気がします。

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特定健診の趣旨
- 2018/02/12(Mon) -
「糖尿病・高血圧で治療中のあなたも年に1回は特定健診
そう書かれたポスターが、熊本県保険者協議会から届きました。

でも、日頃から生活習慣病で通院中の方に、あらためて「メタボ健診」を勧める意義って、あるんでしょうか。

保険者の方におかれましては、特定健診の趣旨を忘れて、健診率を上げることだけが目的になってませんか?
もちろん、健診率を上げなければ保険者が国からペナルティーを科される、という背景が問題なのですけど。

一般に生活習慣病の診療では、年に何度か血液検査を行って、脂質や糖質や肝機能等をチェックしています。
そのような方に、あえて特定健診を実施する場合、医療機関の対応はざっくりと言えば次の2つになります。

(1)日頃の定期的な診療・検査とは別の日に、単独で特定健診を受けてもらう
(2)日頃の定期的な診療・検査の日に、その検査の代用として特定健診を行う

「特定健診は診療ではないので混合診療とはならず、診療と同時に実施することは可能」と厚労省は言います。
しかし、(2)のように特定健診と同日に行った診療では、初再診料の保険請求ができなくなります。
特定健診は診療ではないけど、初再診料は特定健診に含まれるという、その理屈が私にはわかりません。

生活習慣病の方に、あえて特定健診を勧めるのであれば、これは(1)とすべきなのかもしれません。
もしも保険者協議会が(1)ではなく(2)を推奨するのであれば、それは医療行為に対する干渉です。

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インフルしつこい
- 2018/02/09(Fri) -
こればっかり書きたくないのですが、インフルエンザはまだ全国的に流行中。熊本でもしつこいようですね。
定点当たり報告数を、第3週→第4週→第5週(本日発表)の順で記載すると、

全国:51.93→52.35→54.33、熊本県:66.26→55.55→55.06、熊本市:68.00→55.96→51.84

インフルエンザの症状が多彩なので、受診するタイミングもさまざまです。主なパターンをあげると、
(1)高熱持続型:いきなり高熱→ずっと高熱→わりと早めに医療機関を受診
(2)微熱持続型:はじめは微熱→ずっと微熱→2日目ごろに医療機関を受診
(3)途中下熱型:はじめは高熱→翌朝微熱→その夜高熱→3日目に医療機関を受診

いったん下熱した方が自宅で様子を見るのは適切な判断ですが、その晩にまた高熱が出ると後悔します。
身近にインフル患者がいるなどの状況証拠があれば、発症の翌日には医療機関を受診した方がよいでしょう。

メディアでは、発症直後に受診しても検査で陽性が出ないので12時間以上待つように、などと言ってます。
が、それはちょっと違います。たしかに陽性は出にくいですが、症状が重ければすぐに受診すべきです。
問診と診察によってインフルエンザと診断し、未検査で治療を開始することも、しばしばあるからです。

その反対に、微熱で全身状態の良い方は、発症から24時間ほど自宅で療養してから、来院していただきたい。
いや、受診の必要すらないかもしれませんが、登園等の可否を決めたいなら、2日目の受診をお勧めします。

インフルエンザの流行が過去最多を更新し続けているとは言いますが、あくまでこれは報告数です。
以前よりも神経質に受診・検査をするような昨今の風潮が、見かけ上の患者数を増やしているかもしれません。

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Macユーザーの市民権
- 2018/02/07(Wed) -
マンションの勧誘電話にはいつもイラつきますが、お役所からの電話にはいつもビクついてしまいます。
なかでも「九州厚生局熊本事務所」と「熊本東税務署」からの突然の電話には、計り知れない恐怖を感じます。

一方で、本来恐怖を感じるべき(?)「熊本市保健所」は、意外と平気です。
市民病院に勤務していた頃の同僚が保健所に配属されていたりするため、親近感を覚えるのかもしれません。

今日の昼の、保健所からの電話には、とくに温かいものを感じたので、ご紹介します。
それは昨年9月に行われた、厚労省の「患者調査」に関する報告でした。

Windows環境でExcelファイルを使って回答させる調査に対して、当時私は保健所にクレームを付けたのです。
どうしてWindows限定なのか、しかもExcelなのか、Macユーザーに対する配慮はないのか、などと。

担当者は私の剣幕におされたのか、その要望はぜひ、調査用紙に記載しておくようにと教えてくれました。

あれから数カ月。このたび厚労省の担当者が熊本に来た際に、ようやく私の要望が伝えられたようです。
そして、それを伝えたことを、ただちに私に報告してくれたのが、今朝の電話だったのです。
「取り急ぎ、先生にご連絡しました!」という保健所の方の、明るくはずんだ声に、私も嬉しくなりました。
もしかするとその担当者が、個人的にはMacユーザーだったのかもしれません。

震災からあと、熊本の役所や保健所の対応が、以前よりも一段とソフトになったような気がします。

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抗菌剤の適正使用
- 2018/02/03(Sat) -
「抗菌薬適正使用支援加算」なるものが、診療報酬の中に新設されようとしています。
抗菌剤の処方を抑制するために、厚労省が医者に適正使用のインセンティブを与えようというもくろみです。
その目的は医療費の削減、ではなく、薬剤耐性菌を減らすためであり、全世界的な感染症対策なんですね。

抗菌薬の投与は必要ないと思われる病状の患者に、抗菌薬は必要ないと説明すれば、算定できるようです。
「お子さんは風邪なので、抗生剤は効かないから出しませんよ。よろしいですね」これで点数がプラスです。

「へー、こんな当たり前のことを説明したら、加算が付くのかね」というのが率直な感想。
だったら、「解熱剤適正使用支援加算」も考えていただきたい。
あるいは、「診療所適正受診支援加算」なんてのも、当然考慮されるべきでしょうね。ん?

「抗菌薬が不要な病状の患者に、抗菌薬は不要だと説明する」という算定条件に、私はひっかかります。
「抗菌薬適正使用支援」という名目の加算であれば、次のいずれの場合にも、算定すべきだと思うのです。

(1)抗菌薬が不要な病状の患者に、抗菌薬は不要だと説明する
(2)抗菌薬が必要な病状の患者に、抗菌薬は必要だと説明する

厚労省は(1)限定のつもりなんでしょうけど、それと同じぐらいに(2)も重要です。
その両者を考慮してこそ、「適正使用」だと思うんですけどね。
なにしろ最近、抗菌剤を必要以上に毛嫌いする方も増えているのです。

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インフル治癒証明
- 2018/01/18(Thu) -
インフルエンザに罹ったお子さんは、原則として初診の2,3日後に、経過観察のために来院していただきます。
その経過に応じて、いつ頃から登校・登園できるかを、親御さんに口頭と文書(ミニカルテ)でお伝えします。

学校は口頭で十分なのですが、幼稚園・保育園はしばしば、「治癒証明書」とか「登園許可証」を求めます。
簡単な書類なので、当院では無料で交付していますが、数が多くなるとそこそこ面倒です。

学校保健安全法による「登校(園)基準」は、
「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児においては3日)を経過した後」となっています。
すなわち、順調に下熱したお子さんの場合、「登校(園)は発症の6日後から」ということになります。

すると次は「いつ発症したのか」という点が問題になります。その解釈しだいで登校可能日が変わるからです。
たとえば、朝から熱が高かった、というケースでは、前夜から熱が出ていた可能性があります。

ある調査によると、「治癒証明書」の要求に応じるのは医師の約8割で、約15%は応じないそうです。
患者(子ども)と親の利益を考慮して私はすぐに書類を書く方ですが、その必要性には疑問を感じています。

いちばん困るのは、他院でインフルの診断や治療を受けた後、治癒証明書のためだけに当院を受診するケース。
子どもを月曜から登園させたければ、日曜診療を行っている当院で書類をもらうのが、うってつけなのです。
ですが、全体の病状経過を把握できてないのに、書類だけ書くのはまったく不本意です。書きますけどね。

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タミフルの予防投与
- 2018/01/17(Wed) -
インフルエンザの疑いのない方には、当院では原則として、抗インフルエンザウイルス薬を処方していません。
しかし、家族がインフルエンザに罹った場合に、タミフルの処方を希望する方がいます。気持ちはわかります。

抗インフルエンザウイルス薬の予防投与は、保険適応外です。自由診療(自費診療)となります。
また予防投与の対象は原則として、インフルエンザ患者に同居する高齢者か一定の持病のある方に限られます。

受験生だという社会的理由では、抗インフルエンザウイルス薬の予防投与を受けることはできないのです。
当院ではその規定を遵守していますが、医学的な理由が「少しでも」あれば、処方をするスタンスです。

(1)高熱・筋肉痛・倦怠感、周囲にはインフルエンザがいる、迅速検査で陽性
(2)高熱が出たばかり、周囲にはインフルエンザがいる、迅速検査は陰性(または未検査)
(3)微熱で元気、周囲にはインフルエンザがいる、迅速検査は陰性(または未検査)
(4)無症状、周囲にはインフルエンザがいる、未検査

私の場合、抗インフルエンザウイルス薬の処方率は、(1)ほぼ100%、(2)半々、(3)微妙。
予防投与は(4)のケースになると思います。やはり、高齢者などに限って処方するのが原則でしょう。

ところが最近、無症状だけど他院で予防投与を受けたという患者さん(しかも保険診療で!)に出会いました。
そういうコトする「親切な」医療機関が近隣にあるので、当院は融通が利かないと思われかねません。
でもやっぱり、(3)と(4)の間には、きちんと線を引きたいのです。

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医師偏在是正の方策
- 2018/01/06(Sat) -
地域と診療科による医師偏在の是正が必要だと言われて久しいですが、これは本当に難しい問題です。

厚労省が先月とりまとめて発表した論点のなかで、次の3点は、私も同じ認識です。
・長時間労働が常態化している外科や産婦人科は、精神科や放射線科に比べて医師の比率が下がっている
・女性医師は、出産育児等を見据えた勤務形態を余儀なくされ、一定地域・診療科に集中している
・医師が地方勤務する意思がない理由として、20代では「専門医の取得に不安がある」という意見も多い

勤務地や診療科を医師が自由に選択できる現状を改め、一定の規制を含めた対策が必要だという厚労省。
じゃあ、あれですか。医者の一定数を、強制的に外科医や産婦人科にならせるというのですか。ナンセンス。
医師は、自分の夢・希望・将来計画・やりがい・信念によって、自分の進むべき診療科を決めるべきです。

厚労省はまた、医師の少ない地域での勤務を促すインセンティブを高める対策も重要だと言ってます。
どうなんでしょう。そもそも若い医師は、都会でもまれ、豊富な臨床経験を積みたいのです。当然のことです。
それに加えて専門医制度があります。どう考えても、医師偏在対策と専門医制度は両立しにくい話です。
この点が問題となって、新専門医制度の導入が1年延期されましたが、いよいよこの春、始まります。

医師偏在への対策案を出してみろと、もしも私が言われたら、次の3点を提案したい。

(1)勤務医にできるだけ診療以外の仕事をさせないようなシステムを作り、長時間労働を是正すること
大門未知子のように、医師免許不要の雑用を一切せずに済めば、勤務医はどれほど診療に集中できることか。

(2)長時間労働が常態化している科の診療報酬を増やし、病院管理者は給料にも格差を付けること
多忙でも給料が高ければ、人は集まります。人が集まれば、多忙ではなくなり、バランスがとれてくるはず。

(3)新専門医制度は、医師の偏在を助長します。もう中止はできませんが、制度の修正が必要です。
卒後2年目の研修医の約9割が登録した結果を見ると、地域偏在・診療科偏在はますます悪化しています。
地方勤務を促す「有効な」方策があるというのなら、早く打ち出してくださいよ、厚労省の方。

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寝当直で寝正月
- 2017/12/27(Wed) -
最近やっとメディアが取り上げ始めたのが、「当直医」の労基法上の問題です。先週の読売にも出ていました。
ただのお泊まりを意味する「宿直」とは違い、「当直」はしばしば夜通しの激務であり、時間外労働です。

ところが、「当直」医に対して「宿直」手当しか出していない病院が多く、是正勧告が相次いで起きています。
「勤務医の宿直には残業手当を払え」という5年前の最高裁の決定は、勤務医には追い風でした。

本来の勤務病院での当直以外に、アルバイトとしての救急病院の当直を、私も若い頃ずいぶん経験しました。
医局の先輩の病院を手伝って臨床経験を積ませてもらい、しかもお小遣いまでもらって帰るようなものでした。

大学病院の通常勤務を終えて、夕方当直病院に向かい、翌朝いったん自宅に戻った後、また大学に出勤します。
救急病院での当直でほとんど眠れていなかったとしても、翌日の大学病院では通常の仕事が待っています。
それが普通だったし、不満はありませんでした。なぜなら、当直には妥当なバイト料が出ていたからです。

某病院では、たびたび救急車に起こされるのがイヤで、ついに一晩中起きていた話は、前に書いたとおりです。
徹夜で何をやってたかと言えば、「ドラゴンクエスト」です。もう、30年以上も前の話です。

別の某病院では、診療の合間に豪華な夕食が出て、事務長がしきりにビールを勧めてくれます。飲みます。
飲んでる途中で救急車が入ります。仕事を終えて食堂に戻ると、事務長がまたビールを勧めます。昔の話です。

そのような救急病院とは正反対に、老人病院とか精神病院の当直の場合は、ほとんど仕事がありません。
何か起きたら電話指示を求められる程度で、これを「寝当直」と言い、ほとんど「宿直」と同じ状態です。

年末年始はしばしば、老人病院で当直をしていました。正月3が日の「3連直」なんてのも2度経験しました。
ネットのない90年代前半のこと。本を読んでも飽きるので、ずっとゴロゴロして3日間過ごしますが、長い。
むしろ、適度に救急車が入ってくる方が、よほど時間が短く感じたかもしれません。

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薬の配置と取り違え
- 2017/12/20(Wed) -
また薬の取り違え事故が報じられました。こんどは気管支拡張剤「テオドール」と向精神薬「テグレトール」。

名前は多少似ていますが、私としては、「アマリール」と「アルマール」ほどには、混同しそうにない薬です。
なのにそれを薬剤師が取り違えたのには、どのような具体的ないきさつがあったのか、それが知りたいですね。

薬が棚に五十音順に置いてあったのなら、テオドールとテグレトールの引き出しは、かなり近接していたはず。
では、名称の似通った薬剤の取り違えを、どのような方法で防げばいいのでしょうか。
棚の引き出しに、薬剤の外箱から薬剤名のロゴ部分を切り取って貼る、ぐらいしか私は思いつきません。

そこで今日、当院の隣の薬局に赴き、その管理法を見てきました。
驚いたことに、テオドールとテグレトールは、まったく別の場所に置かれていました。
これは取り違え防止のためではなく、薬局の内規によって、薬効的に特別に管理する薬だからだそうです。

それを見て思いつきました。すべての薬を、薬効別にグループ分けして配置すればいい!
抗がん剤とか、降圧剤とか、血糖降下剤といったコーナーを作り、その内部で五十音順に並べるわけです。
薬の取り違えが重大事故を招くのは、まったく別の薬効の薬剤を誤って投与してしまったときです。
薬効が異なるのに名称が似ているのが問題なのであって、同効薬の名称が似ている方がよほどマシです。

薬効別配置など誰でも思いつくことなので、すでに多くの薬局で似たような工夫をしているかもしれません。
しかしそれでも、人間のやることはわかりません。思いもよらないような勘違いをする場合もあるでしょう。

隣の薬局では、薬剤棚の引き出しのバーコードを読み取って、処方箋情報と照合してから薬を出すようです。
確実なチェックのために、けっこう面倒なことしてるんですね。

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廃棄はもったいないのか
- 2017/12/06(Wed) -
価格がきわめて高い抗がん剤が、使い切れずに年間738億円分も廃棄されていると、報じらました。
オプジーボ」のように、患者の体重に比例した用量で投与される薬は、薬瓶の使用単位に端数が出るのです。
使いかけの薬瓶内の残薬は、感染予防等の理由から次の患者には使わず、廃棄するのが普通です。

たしかに、高額な薬を捨てていると考えたらもったいないですが、報道を鵜呑みにはできません。
使い切れずに余った薬って、本当に高価なのでしょうか。できるだけ使い回すべきなのでしょうか。

オプジーボなどの超高額薬は、製造原価も高いですが、研究開発や設備にかかる費用も膨大です。
何人ぐらいの患者さんに使うことになりそうか、それを考慮して、薬の価格(薬価)が決められます。
莫大なコストをかけて、患者数の少ない疾患の治療薬を作れば、その単価はどうしても高くなります。

オプジーボのような薬は、その薬液そのものがひどく高額なのではありません(高額ではあるけど)。
2,000億円とも3,000億円ともいわれる研究開発費用を回収するために、単価を高くしてあるのです。

薬の売り上げが伸びれば、やがて薬価は引き下げられます。現にオプジーボは、今年2月に半額になりました
つまり、薬の消費量が増えれば増えるほど、その恩恵を被る患者一人当たりの負担は減ることになるわけです。
残薬を廃棄せずに使い回せば、患者数当たりの薬の消費量が減り、値下げの道が遠ざかるかもしれません。

一方で、医療機関にとっては、薬の使い回しは薬代を節約できるので、きわめてオトクです。
しかし、開封後の薬瓶を保管する衛生上のリスクを考慮して、あえて、残薬は破棄しているのです。
儲けよりも安全を優先した医療機関の姿勢を、今回のような報道は理解しておらず、踏みにじるものです。
残薬利用による健康被害と医療経済上の損失まで考慮して、廃棄がもったいないかどうかを議論してほしい。

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院外処方は3倍高い?
- 2017/11/25(Sat) -
院外処方の調剤技術料が院内処方の3倍であることが、最近急に問題視されています。
内閣官房行政改革推進本部が先週提出した、「調剤技術料」に関わる行政事業レビューシートが発端です。

「平均的な技術料」として例示された技術料の比較グラフが、なかなか衝撃的なのです。
院内処方では940円の診療報酬が、院外だと薬学管理用・調剤料・調剤基本料が上乗せされて、合計2,900円。

医療機関に厳しく調剤薬局に手厚い報酬は、医薬分業を進めるためのインセンティブでした。
しかし、医療機関による「薬漬け医療」を撲滅するための方策は、皮肉にも調剤医療費の膨張を招きました。
薬は減っても薬代は上がる。医療機関が儲からなくなったかわりに、調剤薬局が儲かるようになったわけです。

10年前はまだ、医薬分業が強く推奨されていた時期だったので、私は迷わず院外処方を選んで開業しました。
近隣に調剤薬局がなければどうしようもありませんが、さいわい某薬局がクリニックの隣に来てくれました。

その「門前薬局」とはもちろん、経営上のつながりはなく、当院の処方箋はどこの薬局でも使える建前です。
しかし事実上、当院の処方箋の多くがその薬局に持ち込まれるので、薬の品揃えは当院と相性バッチリです。
患者さんのデメリットは、院外処方なので全体の医療費が高いということ。これは、いかんともしがたい。

行革推進本部は、院内処方と院外処方のコスト差は妥当なのかと、いまさらのように疑問を呈しています。
そのうち、院内処方への回帰を推進する政策に転換するかもしれません。現場は振り回されっぱなしです。

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診療と病名
- 2017/11/21(Tue) -
貴ノ岩のケガや診断書の件は、新情報が次々に出てくるので、真相がよくわからなくなってきました。
リアルタムでブログを書くと間違った論評になりそうなので、しばらく経過を見ることにします。

診断書を書く以前に、医師は患者の病状や診断等について、患者本人に十分に説明しなければなりません。
また同時に、病状や検査結果や診断や治療内容について、記録を残さなければなりません。それがカルテです。
さらに、保険者に対しては診療の要点を報告し、診療報酬を請求します。これがレセプトです。

「のどが痛い」という人を診察して咽頭発赤があれば、「急性咽頭炎」などの診断を付け、薬を処方します。
「のどが痛い」という人ののどが赤くなくても、痛いと言うのであれば何らかの薬を(控えめに)出します。
後者の場合、問診すなわち患者の訴えに応じた処方であり、現症つまり診察所見によるものではありません。

今朝頭痛があった、昨日下痢した、ときどきめまいがあるなど、今現在は無症状という方も、意外と多い。
このような方に、少し様子を見ましょうと無処方にしてもよいですが、それでは杓子定規な対応ともいえます。
軽い頭痛薬を少し出しておきます、整腸剤を飲んでみましょうなどと、念のための処方を行う方が親切です。

そして処方を行った場合には、その根拠となる「傷病名」が必要です。「頭痛」とか「胃腸炎」などです。
このような、保険診療上の暫定的な傷病名が「レセプト病名」であり、しばしば大げさになりがちです。
検査を行うための「疑い病名」も含むので、患者さんには見せられないほど盛りだくさんになってしまいます。

件の診断書に多くの病名が記載されているのも、あるいはそのような医者のクセが原因かもしれません。

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フリーアクセス見直し
- 2017/11/19(Sun) -
紹介状なしで大病院を受診した場合、患者から追加料金を徴収する病院が、大幅に増えることになりそうです。

軽症患者の大病院受診を抑制するための制度ですが、これまでは期待したほどの効果が出ていませんでした。
お金で誘導しても受診行動がそれほど変わらなかったわけです。対象を拡大してはたしてうまくいくのか。

ところで、定額負担制度が定着して大病院の受診が抑制されたとしたら、その結果どうなるのでしょう。
紹介状を求める患者が、中小の医療機関に流れます。そこで医者が言うことは、次の2種類考えられます。
(1)病状が重いので、ご希望通り紹介状を書きましょう。
(2)病状が軽いので、紹介は不要です。当院で治療しましょう。

この(2)に対する患者さんの反応は、こうです。
(2– A )では、治療を願いします
(2– B )いえ、紹介状をお願いします

この(2– B )に対して、医者はどのように反応するでしょう。いや、私の場合ではなく、一般論として。
(2– B – ア)では、紹介状を書きましょう
(2– B – イ)いえ、紹介状は書けません

医師には診療を引き受ける義務(応召義務)があるとしても、不本意な紹介まで行う義務はあるのでしょうか。
もちろん私は、(2– B – イ)のような対応はしませんけどね。平和主義者なので。

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サービスとコスパ
- 2017/11/15(Wed) -
ファミリーマートが、24時間営業の見直しに着手したと報じられました。
まず一部店舗で、深夜営業をやめたら売り上げはどれだけ減り、経費はどれほど浮くのかを検証すると。
どんな実験結果が出るのかわかりませんが、少々売り上げが減ったとしても、営業時間減に向かうでしょうね。

「開いててよかった」と喜ぶ客がいるのでやりがいはあっても、深夜はコスパの悪い時間帯だと思います。

なので従業員数は最小限のはず。だけど商品の搬入・陳列とか清掃で、深夜はけっこう忙しいらしいですね。
ファミマの某店の求人情報で時給を見ると、日中800円〜に対して、深夜は1250円〜とあります。
これだけ深夜割増して待遇を良くしても、人手不足なのかもしれません。

じつは医療機関にも、似たような側面があります。夜間や休日の診療態勢は、圧倒的に手薄です。
当院は、その休日や夕方の時間帯にも診療することで、微力ながら地域医療に貢献しているつもりです。

しかし、「開いててよかった」と喜ぶ患者さんがいるのでやりがいはありますが、苦労の多い診療です。

まず、休日に診療しようとすると職員のやりくりが大変。小規模な診療所なので、労務上かなり苦労します。
おまけに、休日診療を標榜している医療機関は休日加算が算定できない、という非道な規定があります。

このように苦労が多くてコスパの悪いままでは、休日診療に手を出す医療機関が増えるとは思えません。
そして残念ながら、休日診療を優遇・誘導するような診療報酬の改定は、今回も行われないようです。

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無診察処方は御法度
- 2017/11/13(Mon) -
「薬だけください」という方がいます。時間が無いなどの理由で、処方箋だけ受け取りたいようです。
最大限に配慮してあげたい場合もありますが、そのまま応じると、違法行為になってしまいます。

医師法第20条に、「医師は、自ら診察しないで (略) 処方箋を交付 (略) してはならない」とあるからです。
無診察で「薬だけ出しときます」と言うのは、御法度なのです。ヘタしたら、手が後ろに回るのです。

ただし、病状の経過をよく聞いた上での処方であれば、聴診はしなくても「無診察」ではないかもしれません。
慢性疾患で落ち着いている方には、来院の2回に1回程度は、ごく簡単な問診のみで済ませることはあります。
あるいは、病状が安定している方に限り、電話やご家族からの病状聴取を元に、薬を処方することもあります。

しかし、問診も情報も無い方や、まして病状が不安定な方は、処方の前に必ず診察しなければなりません。

ところが、「薬だけもらえないんですか」と、少々キレ気味の方も、ときどきいらっしゃいます。
「診察はいらんから、薬を出してくれ」ぐらいの勢いの方もいます。
「申し訳ないですがうちは薬局じゃないんです。医者なんです」とまで言ったことも、何回かあります。

おかげで私は、診察費をとるためにあえて診察している、がめつい医者だと思われているフシがあります。
でも違うのです。ちゃんと責任を持って処方したいだけなのです。そこんとこ、ご了承ください。

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ヒルドイド問題
- 2017/11/01(Wed) -
最近話題の「ヒルドイド問題」。今日は、中央社会保険医療協議会(中医協)総会でも取り上げられました。

乾燥肌(皮脂欠乏症)のひどいお子さんに対して、「ヒルドイド」は当院でもよく処方する保湿剤です。
これを、本来保険が適用されない美容用に使うことを、雑誌やネットが推奨してしているのが、問題なのです。
小児用に処方されたものを、親が美容目的で使っている例もあると、中医協も注目しているようです。
適用外使用による医療費増加に怒った健保連は、ヒルドイドを保険適用から除外せよと、息巻いています。

ヒルドイドは「ヘパリン類似物質」という一般名で呼ばれます。洋名は「Heparinoid」です。
“Heparinoid” = “heparin”(ヘパリン)+ “oid”(の様なもの)です。 “Android” と同じ語尾です。

商品名の「ヒルドイド」は、 “Hirudo” + “oid” から命名されたとのこと。 
“Hirudo” というのは、ドイツ語で「チスイビル(血吸蛭)」という、蛭(ヒル)の一種の名前です。
つまり「ヒルドイド」とは、「血吸蛭の様なもの」というシュールな意味なのです。

最近私は見かけませんが、子どもの頃、湿地や川を歩くと足や首に張り付いてきた、あの蛭のことでしょう。
蛭は皮膚から血を吸うので、打撲等でうっ血した場所に吸い付かせて、治療に用いることもあります。

ドイツ語の “Hirudo” が日本の「蛭」の一種だと聞けば、「ヒル」は元々外来語なのかと思ってしまいます。
しかし辞書をみると、「世中にあやしき物は雨ふれと大原河のひるにそありける」という用例がありました。
11世紀の拾遺和歌集のものです。ドイツ語の “Hirudo” と日本語の「ヒル」は、偶然の一致なのでしょう。

よく「ヒルロイドを処方してください」と言う上品な人がいますが、違います。「ヒルドイド」です。
ワセリンや市販薬では改善しない乾燥肌が、ヒルドイドで改善する方が多く、とくに冬場には大人気の薬です。
美容用に流用され易いから保険適用から外す、なんてのは筋違いもいいところ。乱暴な対応だと思います。

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類似名称回避責任
- 2017/10/25(Wed) -
紛らわしい名称は、ミスを誘発します。当たり前のことです。
医薬品の取り違えでは6月に重大事例が起き、最近になって注意喚起の文書が出されました。

肝性脳症治療薬「リフキシマ」を使うべき患者に、抗凝固剤「リクシアナ」を誤って調剤した死亡事故です。
血液サラサラにする薬を、そうでなくても凝固機能の低下しがちな肝不全患者に投与してしまったわけです。

処方や調剤をする際は注意せよ、なんて精神論では解決しません。電子カルテ等でチェックする仕組みが必要。
しかしそれよりも、製薬会社が薬剤名を決める時に、類似名称がないかを十分にチェックすることが大事です。

今回の2剤でいうと、リクシアナは販売開始から数年たってますが、リフキシマは昨年11月の発売です。
新しい方の薬(リフキシマ)のメーカーには、一定の責任(類似名称回避責任?)があるでしょう。

厚労省は、医薬品の取り違えを防ぐために、「医薬品類似名称検索システム」なるものを構築しています。
このシステムの詳細がいまひとつわかりませんが、それでチェック漏れしたのなら、国にも責任がありますね。

リフキシマは、一般名(成分名)「リファキシミン」が命名の由来ですが、もうちょっと考えてほしかった。
まさかリクシアナと取り違えるやつはいないだろうと、タカをくくったのか。それならば、想像力不足でした。

人がすることには、うっかりミスや勘違いや思い込みがつきもの。予想外のことは、起きるのです。
間違えないように注意喚起するよりも前に、そもそも間違いにくいようにしておくべきです。

「じゃあ、お前なら何て名前をつけるんだ?」とお尋ねでしょうか。待ってました。
「リファノーショー」でどうですか。まるで小林製薬ですが、こういうのが、間違えないんです。

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成功報酬型医療
- 2017/10/05(Thu) -
薬が効いた場合にのみ料金を支払えばよい「成功報酬型」の薬が、日本にも導入されようとしています。
欧米では既に、そのような薬が使われているとのことですが、いろいろ考えさせられる問題です。

「効果が無ければ全額返金」なんてのは、健康食品か健康器具か語学教材の専売特許かと思っていました。
これらの商品の場合、効果が無かったことを立証する必要が無いので、不正返金を目論むヤカラもいそうです。

医療用医薬品の場合にはしかし、厳正な効果判定基準があり、支払が必要かどうかは客観的に決められます。
効果判定前に別の疾患で亡くなったような場合の支払等にも、きっと一定の取り決めがあるのでしょう。

日本への導入が検討されているのは、ノバルティスの「キムリア」。小児の急性リンパ性白血病治療薬です。
1回の治療で済むというその薬は、その1回分の費用が5,300万円といいますから、目の玉が飛び出ます。

このような「成功報酬型」医療費の考え方が、医療全般に拡大するのではないかと、私は危惧しています。

たとえば、治療が効いた場合にのみ医療費を支払えばよい「成功報酬払い」。
「お前の治療では風邪が治らなかったから金は払わん」などと言われる時代が来ませんかね。
医療費を抑制したい行政からすれば、包括払い以上に魅力的なのが、成功報酬払いかもしれません。

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配合剤の名前
- 2017/10/04(Wed) -
配合剤」とは、2,3種類の既存の医薬品の、成分をそのまま合わせて1錠にしたものです。最近増えてます。

ひところ、雨後の筍のように出てきたのは、降圧剤(血圧を下げる薬)の配合剤でした。
便利な薬ではありますが、何と何を組み合わせた配合剤なのか、いちいち覚えるのがけっこう面倒。たとえば、
「ブロプレス」+「アムロジン」→「ユニシア」(便宜上、全部商品名で記載してます)とか、
「ディオバン」+「アムロジン」→「エックスフォージ」みたいに。

そんな中で良心的なのは、薬の成分だけじゃなく、名称も「配合」したケース。
「ミカルディス」+「アムロジン」→「ミカムロ」。グッジョブ。これは分かり易い。

最近、高脂血症治療薬でよく使う組合せの配合剤ができました。
「リピトール」+「ゼチーア」→「アトーゼット」。
これは補足しますと、リピトールの一般名「アトルバスタチン」の「アト」を使った「配合」名称です。
う〜ん、ここは他メーカーの商品名だけどリピトールの一部をもらって、「リピゼット」にしてほしかったな。

ていうか、なぜ「アトー」と伸ばすのか。阿藤快ですか。「アトゼット」の方がよほどスッキリしてるのに。
その「ゼット」もおかしい。本来は「ゼチ」でしょう。「アトゼチ」ですよ。なんなら「アトゼキ」でもいい。

その商品名が災いしたのか、MSDがサイバー攻撃に遭い、アトーゼットの発売が延期されています。
ランサムウェアに攻撃されたウクライナの企業経由で、MSDの親会社の米メルクが被害を被ったようです。
これは偶然与えられた良い機会。このさい、アトーゼットは名称を変更したらどうですか(アトゼキとかに)。

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RSウイルス検査希望
- 2017/09/24(Sun) -
アデノウイルスの検査をしてください」という患者さん(の親御さん)が、最近チラホラいます。
高熱を伴う強い咽頭炎・扁桃炎の所見があれば、アデノウイルスの迅速検査をする場合があります。

アデノが出なかったら普通のノド風邪の治療をしますが、アデノが出ても結局は普通のノド風邪の治療です。
じゃあ、検査する意味あるのか、って話です。
患者が保育園に報告するという社会的意義はありますが、治療に結び付く医学的意味は、あまりありません。

RSウイルスの検査をしてください」という方が、今月はとても多いですね。
0歳で39度以上で咳がひどくて喘鳴が聞こえていれば、まあ、検査します。低酸素があればなおさらです。
ただし、保険が利くのは0歳だけです。1歳以上の方にRSの検査をすると、「自由診療」(自費)となります。

ところが、RSウイルスの検査料を自由診療として患者に負担させると「混合診療」となり、御法度です。
つまり、自費でもいいから検査してくれ、と言われても、自費では検査ができないルールなのです。

結局、検査費用は、保険診療でも自由診療でもないサービス(=医療機関の負担)ということで決着します。

以前は、このようなサービス検査を私もしばしば行っていましたが、最近は減らしています。なるべくしない。
1歳以上で、病状が比較的軽くて入院治療が必要とは思われない場合には、基本的に検査しない方針です。
だって、RSウイルス感染であろうとなかろうと、処方や吸入や点滴などの治療内容に差は無いからです。

いや待てよ、治療中の疾病に無関係な自由診療を行った場合は、混合診療にはならないのではなかったっけ?
たとえば、高血圧の治療で通院している人に、インフルエンザワクチンを接種する時などがそれです。

RSウイルスの検査結果は治療には無関係だから自費検査OKだ、と強弁することはできないのでしょうかね。

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顧客ファースト
- 2017/09/22(Fri) -
新入社員が過労自殺した電通の違法残業事件では、今日の初公判で社長が謝罪しました。

「顧客ファースト」で、深夜残業や休日出勤もいとわない考えが蔓延していたと、検察は指摘していました。
顧客のために、顧客の要求に応じて、顧客第一で社員が働いたことが、過重労働につながったのだと。

ところで、「顧客」を「患者」に置き換えてみましょう。

「患者ファースト」で、深夜残業や休日出勤もいとわない考えが、医療界にも蔓延しているからです。
患者のために、患者の要求に応じて、患者第一で医師が働くことが、過重労働につながっているのです。

電通や新国立競技場建設工事での「顧客第一」体質が、新入社員を過労自殺へと追い詰めました。
企業の「顧客第一」はつまり、営利目的であり、社員に過重労働をさせれば糾弾されなければなりません。

一方で東京や新潟の医師の過労死は、残念ながら、電通事件ほど日本中を騒がせる問題にはなりませんでした。
病院の「患者第一」はむしろ、賞賛対象なので、勤務医の過重労働にはメディアも見て見ぬふりなのです。

過労事故を防ぐための、厚労省の「働き方改革」では、医師への規制適用を暫定的に除外してしまいました。
医師には「応召義務」があるので、時間外労働を機械的には規制できない、というのが理由です。

しかしもうそろそろ、応召義務については考え直すときでしょう。できれば、撤廃すべきです。
医師は、その使命感と責任感によって自発的に診療を行うのであって、強制されるものではないのです。

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医療費助成の拡大
- 2017/09/06(Wed) -
来年1月から、熊本市の「子ども医療費助成制度」が変わります。助成対象が中学3年生まで拡大します。

医科外来の場合、3歳未満はこれまでと同様に無料です。
3歳から小学3年生までは、これまで自己負担の上限が月額500円だったのが、700円に増えてしまいます。
そのかわり新たに、小学4年から中学3年までの月額上限が1200円となり、助成対象が6学年も拡大します。
来年4年生になるお子さんが、いちばんオトク感がありますね。

しかしこのように、医療費助成を手厚くすればするほど、国から自治体への支援が減らされます。
以前にも書いた、「国庫負担減額調整措置」というペナルティーです。
医療医助成を増やすと安易な医療機関受診につながるので、ムダな医療費が増える、というのが国の理屈です。

国の理屈が正しいのかどうか、最近調査が行われました。
その結果、低所得者層においては、医療費助成によってむしろ入院医療費が減ったとの結果が出たそうです。
助成があるから早めに受診するので、重症化を防ぐことができ、入院しなくても済んだというわけです。

少しムダ目の医療介入でも、数打ちゃ重症例を減らす効果はあるという、予想通りの結果ともいえます。

「軽い風邪で病院にかかるな」という意見を裏返せば、「風邪がこじれそうなら病院にかかれ」となります。
しかし、軽い風邪か、こじれそうな風邪か、それを患者本人や家族が早い段階で判断するのは難しい。
その判断こそが、医者の仕事です。早めの病院受診が、最終的に医療費を減らすことにつながると思います。
もちろん、ムダな処方や検査は減らすべきですが、受診だけなら、むしろ敷居を低くしても良いのでは?

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市民病院の外科の今後
- 2017/09/02(Sat) -
熊本市民病院病・病診連携懇話会」(この「病・病」はどうにかならんか)が、昨夜開催されました。
新病院は来年建設が始まり、早ければ2019年の秋から診療を始める計画とのこと。

一刻も早い「再稼働」を市民は待望しているでしょうけど、地震から3年半の実質的ブランクはちょっと長い。

働き盛りの中堅・若手医師が何人も、すでに病院を去っています。診療科によっては、全員いなくなりました。
部長もしくはそれ以上の管理職はおおむね残留し、外来診療を受け持っています。
「外来担当医はベテラン揃いです」と髙田院長が語りましたが、私には笑えないジョークでした。

外来はまだしも、入院治療を前提とする外科系の診療科は、ほとんどの手術ができないので壊滅的惨状です。
しかし、手術をあきらめた科が多い中で、小児心臓外科は熊大病院の手術室を間借りして手術を続けています。

間借り手術では、医師・看護師・技士のチームを編成して熊大に出かけ、すべての診療を独立して行います。
手術室やICUはもちろん病棟でも、1名の心臓手術患者のために、市民病院チームが24時間体制で働きます。
熊大と市民病院のスタッフは、互いに一切の干渉をしない取り決めなので、まことに居心地が悪いそうです。
おまけに、診療報酬の半分は熊大に取られます。なんとも理不尽ですが、手術の灯を消すわけにはいきません。

小児心臓外科が自前手術を続けるのは、県内の他の病院には、小児の心臓手術ができる医師がいないからです。
一方で、胃腸・肺・乳腺・脳神経などの外科疾患は、他の病院にお願いして、手術してもらうことになります。

このように市民病院の外科系は、一部を除いてほとんど、他の医療機関でカバーできているのが実情です。
あと2年間このような状況が続くうちに、市民病院の存在意義がどんどん低下するような気がしてなりません。
また緊縮財政の中で新病院ができても、はたして市民を呼び戻すような魅力的な医療ができるのでしょうか。
優秀で経験豊富な外科医や麻酔科医が、2年後にまた集まってきてくれる保証もないのに。

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患者調査ふたたび
- 2017/08/18(Fri) -
厚生労働省の患者調査の対象施設に、当院はまた、選定されました。
3年前に選ばれた際には、ちょっとした不満ブログを書きましたが、あれから3年ですか。
ていうか、この調査って、3年に1回行われているそうなので、当院は2回連続で選定されたことになります。

診療所では、全国約10万のうち6千施設が調査対象となるらしいので、2回連続の選定確率は0.36%です。
希といえば希ですが、考えてみると10万施設のうち360施設が同じ目に遭ってるわけですね。
3回連続のところも、22施設程度あるはず。確率的には、4回連続のところもありそうです。お疲れ様です。

それにしてもこの調査、3年前にも書きましたが、医療機関に面倒なことをさせるものです。
診療報酬請求時に提出するレセプトに含まれる情報を、あらためて提出させることのムダには呆れます。
厚労省は、医療機関にではなく、支払基金と国保連合にデータを照会すれば済むだけの話でしょう。
なんならサンプリング調査ではなく、全数調査だってできそうです。

ついでに言うなら、医療費の窓口負担(一部負担金)って、システムとしては洗練されてないですよね。
保険診療の患者窓口負担はゼロにして、医療費は保険者から医療機関に全額支払えばスッキリするのに。
患者の一部負担金は、保険者があとで保険料と一緒に請求すればいい。勤め人なら給料天引きでしょうか。

そもそも医療保険というのは、患者と保険者と国との間で、医療費の負担を一定の規則で分担する仕組みです。
その分担の配分には、医療機関は関係ありません。何割負担の患者であっても、診療内容は同じです。
医療機関にはただ、適切な診療と正しい請求をする責任があるだけです。

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あれなくばこれなし
- 2017/07/18(Tue) -
「植え込み型補助人工心臓」の植え込み手術を受けた方が、人工心臓特有の合併症で亡くなった医事訴訟。
植え込み基準以下の小柄な患者さんで、体格が原因ではないにせよ、死亡と手術の因果関係が認められました。
これは何年も前の事件ですが、最近解説記事が出ていたので、あらためて一般論で考えてみました。

一般的な治療法では治る見込みのない、死期も迫る病状で苦しむ患者さんがいるとします。
ある特殊な先進医療があるけれど、それを受けられるための適応基準は、ギリギリ満たしていない。
患者も家族も、藁にもすがる気持ちでその治療を望み、主治医もなんとか期待に応えたい。
その治療法を選択しなければ、患者はやがて確実に死亡する、という差し迫った状況。

数値を少しごまかして、基準を満たしたことにして治療を受けさせた場合、それはルール違反です。
もしもその結果、この治療ではときどき起こり得る合併症で患者さんが亡くなった場合に、問題となります。

裁判所は、規定に反する治療をして死亡したのだから、死亡の原因は治療である、と解釈するからです。
いわゆる「あれなくばこれなし」、治療しなければ死なずに済んだと、因果関係を認める理屈です。
たとえ治療をしなければ死亡する病状であったとしても、死亡の原因は不適切な治療ということになるのです。

このような解釈は、科学的とは言えません。
治療を行った場合と行わなかった場合とで、死亡率やその時期、その他の因子を比較していないからです。

難しい治療に挑んだ医師を、結果が悪ければすぐ非難するような社会は、医療を萎縮させるばかりです。

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手袋の使い回し
- 2017/07/08(Sat) -
歯科医院では、その約半数が手袋や医療機器を使い回していると、センセーショナルに報じられました。
歯を削るドリル(あの、イヤな音がするヤツ!)の柄や手袋を、患者ごとに交換していないというのです。

問題がないとは言いませんが、報道は表面的、メディアは感情的であり、情報は正確ではありません。
たとえば手袋は、「使い回し」という言葉で短絡的に非難していいのか、疑問です。

もちろん、すべての患者で新品の手袋を使うのが理想です。
私が診療中になにかの処置等を行う際の手袋は、いつも新品を使い、使用後にすぐ廃棄しています。
毎回捨てるのはもったいないので、アスクルで購入可能ないちばん安い手袋を使っています。

そもそも私の場合、手袋を使う機会は少なく、通常の診察は素手で行い、手指はたびたび消毒をしています。
たまに手袋を使ったとしても、いちど外すと手袋が裏返るので、それを再使用するのは少々面倒です。
したがって手袋を使い回そうとすれば、その手袋をずっと外さないままで使い続けることになります。
もちろんその都度、手袋のまましっかりと手を洗うことが大前提です。

しかしそれでも、手袋を使わずに素手で処置するよりはずっと、患者さんにとって清潔だと思います。
素手はいくら丁寧に洗っても、外科医が手術前に洗うような厳密さがなければ、つねに汚染されているのです。
一方で手袋には、爪やシワや毛穴が無いので表面が平滑であり、かなりきちんと洗うことができます。
手袋を手にはめたままでしっかり洗い、ハンドタオルで水をぬぐえば、清潔度はかなり高いと考えられます。

「手袋の使い回し」というと不潔な印象がありますが、「素手の使い回し」よりはよほど清潔だと思います。

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禁煙外来、次も来てね
- 2017/06/28(Wed) -
禁煙外来」における診療報酬「ニコチン依存症管理料」の算定要件が、今年から厳しくなっています。

禁煙外来は、5回の通院によって、問診・診察・呼気一酸化炭素濃度測定と禁煙治療薬の処方を行うものです。
ところが、途中で禁煙に失敗(または早々と成功)して、通院を自己中断する方がけっこう多いのです。
それどころか、初回だけ受診して、2回目からはもう来なくなる方も時々います。こういう方が問題です。

昨年の診療報酬改定によって、通院回数が少ない医療機関では、診療報酬が減額されることになりました。
過去1年間の禁煙外来の通院回数が、一人当たり平均2回未満の医療機関は、管理料が7割しか算定できません。

このたび厚生局から、昨年度の平均継続回数を算出して提出するようにと、調査用紙が届きました。

当院の実績を計算したところ、平均継続回数は2.75回。今年度の診療報酬は減額されずに済みそうです。
もしこの数値が2を下回ったら、全ての禁煙外来受診者に対して診療報酬が減額されるので、大変なことです。
それを防ぐためには、禁煙外来には必ず、少なくとも2回は通院してもらわなければなりません。

1回でやめるのは、禁煙治療を始めたものの禁煙できそうな気がしなくて、早々と治療を諦める方でしょう。
そのような、1回だけで通院をやめるケースが多い医療機関は報酬を減らすぞ、と厚労省は言うのです。

でもどうなんでしょう。1回だけでやめるかどうかは、その人の問題であって医療機関の問題ではありません。
確実に2回以上禁煙外来を受診できそうな人にだけ、禁煙治療薬を処方せよというのもおかしな話です。
むしろ、禁煙が成功する自信は無いけど禁煙治療にチャレンジしたい、という人を応援すべきじゃないですか。
禁煙治療の導入に積極的な医療機関ほど、禁煙外来の平均継続回数は減るんじゃないかとさえ思えるのです。

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漢方薬とドーピング
- 2017/06/19(Mon) -
風邪の初期症状の方には、漢方薬の「葛根湯」を処方することが、ときどきあります。
飲みやすい液状の薬も市販されているようですが、私が処方する場合にはいつも、ツムラのエキス顆粒です。
このような「○○湯」という名称のエキス製剤は、熱湯に溶かしてすすって飲むのが正しい作法です。

漢方薬には製品番号があります。ツムラでもクラシエでもコタローでも、同じ薬の番号は基本的に共通です。
そして葛根湯には、栄誉ある1番が付けられています。漢方薬のホームラン王みたいなものでしょうか。
いったい何番まであるんだろうと調べてみると、それが必ずしも連番ではなく、3000番台もあったりします。

妊婦さんや授乳中の方が風邪を引いたときは、最小限の薬を処方することになります。
うがい薬と解熱鎮痛剤(アセトアミノフェン)だけだったり、去痰剤を加えたりする程度です。
臨床所見や迅速検査等から細菌感染が疑われるときなどに限り、抗生剤を処方することもあります。
葛根湯は、妊婦さんの長期間内服はお勧めできませんが、授乳婦の方にはよく出します。乳腺炎にも使います。

市販の総合感冒薬には抗ヒスタミン薬が入っていることがあり、眠くなるので運転等には注意が必要です。

最近、薬物による意識障害や眠気が原因で重大な交通事故が起きたケースが、よく報道されます。
飲酒運転と同じで、運転することがわかっている人にその薬を処方した場合には、責任が問われかねません。
そのような患者さんには、眠くなる成分の薬は除外し、それこそ葛根湯などを処方するのがよいでしょう。

しかし先日当院に、あるスポーツ選手が来院した際には、逆にその葛根湯が処方できませんでした。
葛根湯に含まれている成分である麻黄(エフェドリン)は、ドーピング禁止薬物に指定されているからです。
スポーツの場合、眠くなるよりも興奮させる薬の方が問題のようです。

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医療機関の口コミサイト
- 2017/06/14(Wed) -
医療機関は、限られた事項以外の広告が禁じられており、おおっぴらに宣伝できないことになっています。
ただしホームページは例外。検索して閲覧するものなので広告とは扱わない、というのが医療法上の解釈です。

だから医者は、自院の詳細な紹介や実績やお知らせや自慢話を、何でもホームページに書いているのです。
あるいはまた、診療とはあまり関係のない医師の個人的な思いなども、ブログに書いたりするわけです。

しかし先週、医療法の改正法案が参院本会議で可決・成立し、今後はウエブサイトも規制が始まりそうです。
広告ではないという解釈は、今回の改正でも変わりませんが、いきすぎた表現を規制しようというわけです。

現行の医療法でも、バナー広告や費用負担による検索結果の上位表示は、広告と解釈されるそうです。
じゃあ、食べログのような、第三者によるランキングや口コミなどは、広告にはならないのでしょうか。
いや食べログだって、店側が評価者を接待したりするわけだし、客観的な評価とは考えない方がよいでしょう。

ネット情報を鵜呑みにしてはならないというのは常識です。医療機関の口コミサイトだって怪しいものです。
あのクリニックは良かったとか悪かったとか、その個人的意見にどれほどの統計学的意味があるのか。
などとは思いながらも、間違った情報や誤解に基づく口コミを書かれたら困ります。
そこで「つるはらクリニック」で検索して、各サイトの口コミをチェックしてみました。以下、表示順です。

【カルー】 口コミ3件。最新のものは約2年前。これじゃ、あまり役に立ちそうにありませんね。
【病院なび】 口コミ0件。情報更新日2012年4月。ナビできてないじゃん。
【お医者さんガイド】 口コミ0件。話になりません。ガイドする気あるの?
【マイクリニック】 口コミ1件。しかも2009年1月。オーマイガッ。
【ベネッセ ウィメンズパーク】 口コミ16件。でも最新は2年前のもの。メジャーなサイトと思ってたのに。
【くまもと医療ナビ】 熊本県のサイトなので、口コミ欄自体がない。
【エストドック】 口コミ0件。
【スクエル】 口コミ欄なし。けっこう詳しいサイトなのに。
【エキテン】 口コミ0件。
(以下省略)

こう言うと怒られるかもしれませんが、ほとんどのサイトが作っただけ。有効に活用されていません。

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保険証確認してますって
- 2017/05/22(Mon) -
健康保険の「資格喪失後の受診」が絶えません。
勤務先や扶養関係の変更に伴い健康保険が切り替わったのに、古い保険証を提示して受診する方がいるのです。
うっかりの場合もあるでしょうし、月末までは有効だろうと勘違いしているのかもしれません。

資格喪失後に受診しても、医療機関には保険証が有効なものに見えるので、通常の保険診療を行います。
しかしその後、とても面倒なことが起きてしまうのです。
たとえば、協会けんぽ(社保)から国保へ切り替わった方が、元の社保の保険証で受診した場合は、こうです。

(1)医者→社保:診療報酬を請求(←なんら落ち度のない、通常の手続き)
(2)社保→医者:確認書類を送付(=資格喪失してますけど保険証確認しましたか?、と難癖付けてくる)
(3)医者→社保:確認書類を返信(=提示された保険証はちゃんと確認したので、問題ないでしょ)
(4)社保→医者:診療報酬の支払(=しぶしぶ払う)
(5)社保→患者:医療費返還請求(=古い保険証使っちゃダメでしょう。医療費を返してね)
(6)患者→社保:返納金を支払
(7)患者→国保:療養費を請求
(8)国保→患者:療養費の支払

この(5)から(8)においては、社保も患者もひどく面倒なことになってしまいます。
そこで最近では社保と国保等の間で「保険者間調整」が行われるようになり、(5)以下が簡略化されました。

しかしその手間をも省こうと、(2)で医者に対して、診療報酬請求のやり直しを打診してくるわけです。
医者が、社保への請求を取り下げて国保に請求しなおせば、社保はレセプトを差し戻すだけで済むからです。
そのかわり、医療機関への診療報酬の振り込みがかなり遅れます。その分、医者は泣き寝入りです。

今月もまた当院に(2)の書類が届いたので、協会けんぽに電話しました。たぶんこれで3度目ぐらいです。
私「当院はちゃんと保険証を確認しているので、確認書類の送付は無用と言ったはずですが」
保「そうでした。つるはらクリニックさんには送らないようにしていたのですが、漏れてしまったようです」

驚きました。当院だけ特別に(2)を省くような内部規定にしていたような言いぶりです。ホントですか。
うるさく言うクリニックにだけ特例を認めているのだとしたら、それも問題です。

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迷ったら打て
- 2017/05/17(Wed) -
アナフィラキシー補助治療剤「エピペン注射液」に不具合があり、回収騒ぎが拡大しています。

エピペンは、重篤なアレルギーの際に、アドレナリンを迅速に筋肉注射するための専用の医薬品です。
たとえば、食物アレルギーのお子さんが、緊急治療用にエピペンをいつも携行しています。
いざというとき使うのは医者ではなく、患者本人か保護者や保育士や教職員など、患児の身近にいる人です。

「エピ」はアドレナリンの別名「エピネフリン」に由来し、「ペン」はその形状がペン型だからでしょう。
太ももの筋肉に、誰でも簡単に注射ができるように工夫された、特殊な容器に入っているところがユニーク。
見たことの無い人にはまったく想像できないでしょうけど、実は、エピペンによく似た日用品があります。

それは、「下地チェッカー(下地探しピン)」。壁の下地を調べるときに使う、棒状の器具です。
壁にグイッと押し込むと、針のカバーだけが引っ込んで針が壁に突き刺さり、下地の様子が確認できるあれ。

エピペンも、プラスチックのニードルカバーを太ももに押しつけると、カバーが引っ込んで針が突き出ます。
その針から自動的に、筋肉内にアドレナリンが注射されるという仕組みです。
終始針が見えないので、恐怖心が起きにくく、誰でも思い切って注射できるというわけです。

いちばん問題となるのは、その子が今本当にアナフィラキシーなのか、危険な状態なのか、その判断でしょう。
保育士や教職員が、エピペンを使ってアドレナリンを注射する際に、迷いが生じ易いのです。

しかしアナフィラキシーの際のアドレナリン注射は、「迷ったら打て」が基本。迷った時間が生死を分けます。
一般人にその判断は厳しくても、ことエピペンに関しては、周囲の者が躊躇なく注射しなければなりません。

そのエピペンが、不具合が起きてうまく注射できなかったケースがあったそうで、回収騒ぎとなっています。
あわてて使い方を誤ったのかもしれませんが、そもそもエピペンを使う人間は、間違いなくあわてているはず。
例外的に一般人が使う薬なのだから、どのように使おうと間違わないような機構にしてほしいものです。

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医療を取り巻く問題
- 2017/05/05(Fri) -
同年代の第一線の医師が集まり、医療を取り巻く諸問題を語り合う懇親会が、昨日と今日、開催されました。
今年の会場は、福岡の「ヒルトン福岡シーホーク」でした。
久しぶりに行ってみると、あのトロピカルでゴチャゴチャしたジャングルが消え失せ、スッキリしていました。
ちょうど晴天に恵まれ、ホテルの「舳先」部分のレストランから海を見渡す景色は、なかなか良かった。

討論テーマは多岐にわたり、ここにすべてを書き尽くせませんが、一部をご紹介します。

(1)「善きサマリア人の法」問題
航空機内で急病人が出た際に、「お客様の中に、お医者様はいらっしゃいませんか」とアナウンスされます。
これに応じた医師の行為は、たとえ結果が悪くても責任は問われない。それが善きサマリア人の法です。
米国などでは認められていることですが、日本では明確な規定が無いので、下手をすると罪に問われます。

今日の懇親会の参加メンバーに、幸か不幸かそのような目に遭遇し、機内で医療行為を行った者がいました。
幸い、事なきを得たそうですが、日本では今なお、結果が悪ければ訴えられるケースが、時々あります。
法整備上の問題だけではなく、ボランティア活動に対する日本人の考え方の特殊性があると思います。

(2)「敷地内禁煙」問題
総合病院でこれを実現するのは、形式的には可能でも、実際には困難。隠れタバコも出てきます。
今回の討論で、タバコとは関係ない疾患で入院している喫煙者の強制禁煙問題について、初めて意識しました。
一般男性の喫煙率は、2016年で29.7%とのことなので、現時点ではまだ喫煙ルームは必要でしょう。

(3)「海外で心臓移植」問題
渡航手術費用を募金で集め、子どもの命を救ったという「美談」に、日本人は感動します。
しかし「移植が必要な患者の命は自国で救う努力をするべき」、というのが国際学会でのルールです。
このルールに違反して例外を認めてもらうための割り込み手数料が、「渡航手術費用」の大半だそうです。

(4)「心臓外科手術中の人工心肺トラブル」問題
割愛します。

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応召義務と超過勤務
- 2017/04/09(Sun) -
残業上限60時間」と1月に書いた、政府の「働き方改革実行計画」が、「上限100時間」に緩められました。
おまけに医師に対しては、この規制の適用が5年間猶予されました。まったく、骨抜きというほかありません。

昨年自殺した、新潟の女性研修医は、月200時間以上の残業が4カ月続いていたそうです。
多くの勤務医は毎晩遅くまで仕事して、夜遅くに帰宅しても、呼び出されたらすぐ病院に駆けつける生活です。
患者の容態が気になるなら病院に泊まり、土日も欠かさず出勤する。そのような医師は、いくらでもいます。
だれもが過労状態です。カラダを壊すか、精神を病むか、その瀬戸際のような医者も、多いのです。

「残業100時間以上は絶対禁止」。病院長からそのような命令が出れば、どれほど楽なことか。
しかしそれをやると、病院が回りません。急変患者への対応が間に合わず、患者はひどい目に遭います。
急患手術を深夜に行った外科医が翌日は休む義務が生じたら、予定手術のキャンセルが相次ぐことでしょう。

いくら長時間労働になっても、過労気味でも、患者の求めに応じて診療に当たる義務が、医師にはあります。
応召義務」という名の、いわば超法規的な規定であり、事実上、労働基準法違反を黙認するものです。
このたびの「働き方改革実行計画」も、この応召義務にはあらがえず、医者への適用が猶予されました。

日本病院会の調査では「日本の医療は労働基準法違反を前提に成り立っている」と考える病院が47%でした。
診療報酬が安いので、病院は雇用する医師数をケチり、医師一人当たりの仕事量が増えているのです。

さて、残業規制の適用が猶予される5年間の間に、いったい何が変わり、何が是正されるのでしょう。
勤務医が急に増えるのですか。医者を増やしても病院の経営が成り立つ仕組みに、急に変わるのですか。
2025年へ向けて、医療需要がどんどん増えていくというのに、勤務医を守る改革はなされるのでしょうか。

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プログラム書き間違い
- 2017/03/30(Thu) -
日本臓器移植(JOT)ネットワークのシステムの不具合は、「初歩的なプログラムミス」が原因だったとのこと。
脳死患者から提供された臓器を誰に移植するか、その選定を行う重要なシステムなのに「初歩的ミス」とは。

新システム「E-VAS」は昨年10月に導入され、1月の不具合発覚までに、20例の脳死移植が行われています。
ただちに検証した結果、そのうち3例の心臓移植で「あっせんに誤り」があったと判明しました。
つまり、本来移植を受けるべき3人が、適切な機会で移植を受けられなかったということです。これが大問題。

ちなみに、その20例の手術のうち3例の心臓移植を、私の出身(いまも所属)医局が実施していました。
同門の医師たちが、患者の命のために、臓器提供者の善意と関係者の期待を受けて、手術を行ったわけです。
心臓移植に失敗は許されず、彼らは通常の心臓手術よりも、はるかに強いプレッシャーを感じていたはず。
もちろん外科医だけでなく、すべての関係者が全身全霊を込めて、チームで行うのが脳死移植です。

その移植を受けるために、長い間入院して、あるいは人工心臓を装着して、患者さんたちは待機しています。
だからこそその順位は、血液型や緊急度や待機期間の長さ等を考慮して、公平・適正に決められるべきです。
過去にも相次いだあっせんミスをなくすべく開発された、最新システムが「E-VAS」なのです。

いったいどんな「初歩的なプログラムミス」なんだろうと気になって、調べてみました。
それは、最重症の状態で移植を待機している患者さんの、待機日数算出処理プログラムの部分でした。
「IF(転帰区分=A)THEN(B)」の変数「転帰区分」を、誤って「転帰名称」にしてしまったとのこと。
これにより、前段の条件が成立せず、日数計算が適切に処理できなくなったわけです。

たったその「区分」と「名称」の書き間違いでも、結果的に3名の心臓移植機会を奪った事実は重大です。
こういうシステムを作る人は、移植手術に携わる者と同じぐらいの、強い責任感を持ってほしいものです。

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便利なのに不便な配合剤
- 2017/03/23(Thu) -
血圧を下げる薬(降圧剤)は、作用機序の異なる薬を組み合わせることが多いので、配合剤が花盛りです。
配合剤(配合錠)とは、別々の薬剤の成分を混合して1錠にしたものです。

薬AとBを飲んでいる人が、両方の成分を含む薬ABに切り替えれば(A+B→AB)、錠剤の数を減らせます。
薬効としては、A+B=AB、なのに、薬価的には、A+B>ABとなる場合が多く、配合剤は便利な薬です。

薬Aで血圧の下がりが悪い方に対して、薬Bを追加する代わりに、薬AをABに切り替えるやり方もあります。
A→A+B、とせずに、A→AB、としてしまうことで、錠数を増やさずに成分だけ増やせるわけです。

このように、錠剤数を増やさずに薬効を強めることができるのは、配合剤の重要なメリットなのです。

以前紹介した「ミカトリオ」は、日本初の3成分配合の降圧薬。A+B+C→ABC、の薬です。
ここでAはテルミサルタン80mg、Bはアムロジピン5mg、Cはヒドロクロロチアジド12.5mgとします。

問題なのは、ミカトリオには面倒くさい「用法・用量に関連する使用上の注意」があること。すなわち、
(1)A+B+Cを8週間以上継続した後、ABCに切り替える
(2)AB+Cを8週間以上継続した後、ABCに切り替える
(3)AC+Bを8週間以上継続した後、ABCに切り替える
のいずれかのパターンしか、認められていないのです。
A+B→ABCとか、AB→ABCのように、薬を強めながらミカトリオに切り替える、ということができません。

しかも、切り替え前に血圧が安定していたことを、血圧測定値とともにレセプトに記載しなければなりません。
ミカトリオは、患者さんと製薬会社には喜ばれたとしても、処方医には使いにくい、面倒な薬なのです。

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医療機能情報提供制度
- 2017/03/19(Sun) -
住民が医療機関を適切に選択できるように、平成19年から「医療機能情報提供制度」が導入されています。
各医療機関が医療機能に関する情報を都道府県に報告し、都道府県がその情報をネットで公開する仕組みです。

医療機関のホームページや広告や院内掲示と比べると、統一されたバラツキがない情報、というのがウリです。
ただしその内容は、診療時間などを中心とした、比較的当たり障りのない客観的情報が中心です。

ためしに今朝8時すぎに「今見てもらえるお医者さんを探す」「小児科」「熊本市全区」で検索してみました。
検索結果は2件。そのうちの一方が当院でした。9時すぎに検索すると7件に増えていました。

診療受付時間までも考慮した、わりと細かいシステムのようです。
ただし、「今見てもらえる」という表記はおかしい。「今診てもらえる」の方が正しいでしょう。

それに、今日のように日曜日に「今見てもらえる」というのであれば、今日の当番医も含めて表示すべきです。
ところが現行のシステムでは、毎週日曜日に診療を行っている医療機関しか掲載されていません。
これは情報としては不正確だし、市民に対して不親切です。

当番医であろうとなかろうと、その日に診療している医療機関を表示するように、システムを改修すべきです。

ためしに東京都のサイトを見たら、本日診療している医療機関が、当番医込みで表示されました。グッジョブ。
市民目線で考えたら、当然東京都のようにすべきです。熊本県、遅れてます。改善の余地あり、です。

医療機能に関する情報を、医療機関が県に報告する期限は、今月末です。毎年だいたいこの時期です。
年度末に、平成28年度の報告を提出するのは大変かと思いきや、そうでもありません。
実は、報告するのは前年度の内容だからです。年度末に前年度というのは、つまり、平成27年度のことです。
したがって、当制度によって市民に提供される医療機能情報は、いつも2年遅れの情報ということになります。
ここにも、改善の余地があります。

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地震の時の赤ちゃんたち
- 2017/02/11(Sat) -
熊本市民病院病・病診連携懇談会が、昨夜開催されました。恒例の会合ですが、私は久しぶりに出席しました。
今回は「熊本地震への対応と新病院再建」というテーマだったので、ぜひとも参加せねば、という思いでした。

救急部、循環器内科、新生児内科の医師と、病院長と、地元医師会長の方々の、苦労と苦悩の話が聞けました。
今日はその中で、私があらためて認識したことや驚いたことを、かいつまんで書いてみます。

(1)前震直後から地域の被災者を精力的に診療していた市民病院が、本震でいきなり被災病院になった
救急車をドンドン受け入れて入院治療していたのに、本震の直後から、全患者を退避させることになりました。

(2)深夜の本震だったが、たまたま在院職員数は多かった
準夜勤の看護師と、深夜勤の看護師との引きつぎ時間帯だったため、2勤務帯の看護師が院内に居たわけです。
ただ、深夜過ぎには帰るはずの職員が、そのまま働きづめだったとは、大変な過重労働だったことでしょう。

(3)重要な生命維持装置が林立するNICUで、医療機器が何一つ転落・転倒せず、重大トラブルがなかった
唯一、窒素ボンベが傾いたものの、赤ちゃんにつながる点滴のチューブに支えられて、倒れなかったとのこと。
ボンベが倒れ、点滴を引きちぎるようなことにならなくて、よかった。こうなると、ちょっとした奇跡ですね。

エレベーターが使えないので、患者さんたちは全員、狭い階段を使って人海戦術で運び下ろされました。
問題は、最重症の方、とくに人工呼吸中の赤ちゃんたちの移動と、その後の呼吸・循環・体温管理です。
人工呼吸器は移動できず、NICUの赤ちゃんたちには、手で何時間も人工呼吸を続けたとのこと。
保育器も使えず、赤ちゃんたちは職員が抱いて暖めたそうです。想像するだけでも、涙が出そうになります。

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