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京都女の右のぼり
- 2015/03/19(Thu) -
基本は、右足からである。
もちろんこれは、階段を昇るときの作法であって、階段を降りるときに足の左右を気にする必要はない。しかしそれを知らずに階段の降り口で立ち止まり、考え込み、挙げ句の果てに転落する事故が増えているという。

「京都女の右のぼり」とは、着物の女性が、後ろから見られていちばん艶やかに見える階段の昇り方を言うが、戦後には忘れられている概念だ。
現代の京都女性が、階段を右足から昇るのか左足から昇るのか、もしもそこに明らかな差があれば、戦前からの風習が無意識のうちに、京都の女性の中に息づいていると、そう結論することもできよう。

どのような風俗研究においても、その調査は対象者の観察を基本とする。
京都駅構内の階段下で現地調査を行っていた、某大学の男子学生はしかし、観察開始のわずか20分後に、警官に拘束されることとなった。

物的証拠があった。学生が手にしていたスマホには、階段を昇ろうとする女性達の下半身が多数、撮影されていたからである。
もちろん彼が猛然と反論したことは言うまでもない。これは実地調査であり、風俗研究であり、文化人類学であると。しかしそういう言い訳は、あとから何とでも言えるものだ。

犯罪行為かと疑われるような調査には例外なく、警察への事前通知が必要なのである。
もちろんこの調査計画を、あらかじめ警察に通知したところで、やめろと言われるのがオチではあるが。

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※おことわり
「基本は」で始まる別役実風の文を書いてみろ、という注文を受けたので、今日は実験的創作文です。
記述したような事実、作法、風俗およびその研究は、実在しません。

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