肝心か、肝腎か
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- 2016/03/28(Mon) -
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「心臓外科」「脳外科」「肝臓外科」と並べてみると、テレビドラマで描きやすいのは、心臓外科でしょう。
なにしろ心臓は、「見た目」に動く臓器なので、手術が成功したシーンを表現しやすいですしね。 しかし、術後に心拍動が再開したからと言って、それは術後経過の初期段階の、そのまた入口に過ぎません。 問題はその後、安定して力強く拍動し続けてくれるかですが、まあそのことは、今回はあまり言いません。 考えてみると心臓は、血液を全身に送り出してるだけなのに、人体の最重要臓器のような顔をしています。 それはそれで重要だし、心臓にはほかの働きもあるのですが、ほかと比べれば比較的シンプルな臓器です。 最も複雑で高度な臓器は脳でしょう。ただ映像的に、脳外科の手術シーンは、ドラマで描きにくいのが難点。 心配したり、心が躍ったり、心を痛めたりしますが、心臓は脳のように思考する場所ではありません。 なのに「心」が心臓に宿ると感じるのは、感情の起伏が自律神経を介して、心拍動に影響するからでしょうね。 その結果、心臓がドキッと(動悸が)したりして、心臓の動きと心の動きが、リンクして感じるわけです。 「肝心」という言葉は「肝腎」とも書きます。それから考えると、心臓と腎臓は置き換え可能な立場です。 「肝心」と「肝腎」に共通する肝臓こそが、心臓や腎臓よりも格上と、位置づけられていたのかもしれません。 古来より、肝臓は人間の感情の根源と考えられています。英語の “liver” は生命 “life” と同語源だとか。 それだけ重要だからでしょうか、肝臓は、他の臓器にはない「再生力」を与えられています。 肝臓だけは、いくら切除しても、まるでプラナリアのように、元通りの大きさに戻ります。 ギリシャ神話の「プロメテウス」は、火を盗んだために、鷲に肝臓を食べられるという罰を与えられました。 しかし翌日には肝臓が再生するものだから、毎日毎日、三万年間食べられ続けたという、まあ気の長い話です。 ギリシャ神話が作られた昔から、肝臓の驚異的な再生能力が知られていた、ということにも驚きます。
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