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手術の練習と模型
- 2016/12/18(Sun) -
外科医は、長時間労働や訴訟リスクなど厳しい環境のなかで、しかし常に、自己研鑽を続けています。
すなわち、知識の向上と術式の習熟、そして手技(技術)の上達のための努力です。

私が研修医の頃、詰所(通称「タコ部屋」)には、縫合結紮練習用の器具が置いてありました。
暇さえあればそのような模型や、コーヒーカップの取っ手でもなんでも使って、糸結びの練習をしていました。

書物やビデオで勉強し、手術の見学や助手を重ね、ついに執刀医としてデビューする時が来ます。
車の運転に例えるなら、学科教習を受け、教官の車の助手席に何度も乗り、ついに運転席に座るわけです。
自動車学校と異なるのは、最初に運転席に着いたその時から、事故の許されない一般道に出るということです。

しかし、初めての執刀医が、術式の手順もおぼろげなまま、切開や縫合をサクサクこなすのは無理です。
だから実際には、助手を経験している時に、少しだけ縫わせてもらったり、結紮させてもらったりするのです。
教官の車に乗ってるときに、交通量の少ない道で、少しだけ運転させてもらうようなものです。

ところが、実際の手術じゃないけど、執刀の練習をする方法があります。いわゆる「ウェットラボ」です。
たいていは、ブタの臓器を使って練習をします。私もブタの心臓で、何度か弁置換手術などをやりました。
技術的な修練だけでなく、解剖学的な理解を深め、術式の応用を探るためにも有効な方法です。
言ってみれば、路上教習に出る前に、自動車学校の練習コースを運転するようなものでしょうか。

それがいまや、3Dプリンターで出力された人工臓器で、手術の練習ができる時代になりました。
これはちょうど、高精度シミュレーターで運転の練習をするようなものかもしれません。
たとえば、いろんな心疾患の解剖学的構造を模型で再現できるので、あらゆる術式を練習することができます。

さらに凄いのは、手術予定患者のCT画像を元に、その患者の臓器を3Dプリントすることができる点です。
外科医がこれまでは頭の中で構築していた臓器構造を、あらかじめ手にとって見ることができるのです。
そして、その臓器模型で実際に「手術」してみることができるわけで、外科医にとっては夢のような話です。
術式の改良や、新しい術式の開発にもつながるでしょう。これは外科学の大きな転換点になるかもしれません。

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