機上の心肺蘇生
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- 2017/12/29(Fri) -
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「お客様の中にお医者様はいらっしゃいませんか」というアナウンスが、私の乗っていた旅客機で流れました。
今日の午後、私が搭乗した熊本発羽田行きのANA便での出来事。このようなことは、初めての経験でした。 向こうの方の座席の方の顔色がひどく悪く見えたので、近くのCAさんに尋ねたのです。「あの方、大丈夫?」 不審に思われてもあれなので、こう付け加えました。「私は医者ですが、あの方の様子がおかしいですよ」 一緒にその座席まで行くと、チアノーゼで、意識がなく、呼吸もなく、頸動脈の拍動も触れませんでした。 これ以上病状等の詳細は書きませんが、ともかく、その方を床に寝かせて、心肺蘇生を始めました。 この段階で、CAさんが冒頭のアナウンスを行うと、居合わせた医師がすぐに駆けつけてくれました。 その先生は初対面の方でしたが、じつは私の自宅の近所の先生だったことが、あとで判明します。 機内に備えてある器具や薬品はしかし、ちょっとした急病には間に合っても、蘇生には厳しいものでした。 なんとか心拍は再開したものの、呼吸が不十分で意識も戻りません。 飛行機は急遽、中部国際空港に着陸することになりました。すごい勢いで降下したので、私は耳を痛めました。 着陸の1分前ごろ、CAさんたちは大慌てで座席に着きました。そんな規則なのでしょうね、こんな状況でも。 「先生方はそのままで良いです」と言われた私は、床にひざまずいた体勢で着陸の瞬間を迎えました。 中部国際空港で患者さんを救急隊に引き継ぎ、救急車に乗せ、機体は給油後に羽田に向かって飛び立ちました。 到着が2時間近く遅れたので、羽田で国際線に乗り継ぐ予定の乗客の何人かは、乗り継げなかったそうです。 数百人の乗客は全員、自分の席で黙ってじっと過ごしていたように見えました。さすが日本人です。 ただし、私の心肺蘇生の様子を撮影して、CAさんに注意された方がいます。その動画、消してくださいね。
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