人工弁の向きはOK?
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- 2018/05/13(Sun) -
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心臓病って「僧帽弁閉鎖不全症」しかないのかと、誤解を招きそうなドラマ『ブラックペアン』第4話。
外科医の腕の見せ所の描き方は、例によって2パターン。 X線透視を見ながらの慎重な手術操作と、やたらと素早い縫合結紮シーン。なんだかなぁ。 これまでの「スナイプ」はすべて、左心室の心尖部から挿入して、僧帽弁置換を行ってきました。 これを「経心尖アプローチ」といい、左室から左房へ向けて人工弁を留置するものでした。 ところが今日の2例目は、諸事情あって、大腿部からカテーテルを使ってスナイプ挿入することになりました。 大静脈から右房に至り、先天的に開存していた心房中隔の小欠損孔を経て、左房に到達する経路です。 これは「経心房中隔アプローチ」であり、人工弁は左房から左室に向けて留置されました。 私はその一部始終を見ていて、老婆心ながら、人工弁の向きは大丈夫なんだろうかと心配になりました。 「経心尖」と「経心房中隔」とでは、留置する弁の向きが逆だからです。 「あっ、人工弁が逆向きだった!」なんてことになったら、笑い話にもなりません。 ずいぶん昔のことですが、人工弁を逆向きに縫着しそうになった手術現場を、私は目撃したことがあります。 人工弁を心臓に縫い付けるためには、十数本の糸を心臓と人工弁に掛けていき、最後にまとめて結紮します。 ところが、執刀医がその人工弁を左手に持つときの持ち方を間違えて、最初から逆向きに持っていたのです。 そのことに、周囲の誰も気付きませんでした。最終段階で外科医全員が同時に気付き、一瞬、固まりました。 もちろん、縫着操作を全部やり直して事なきを得ましたので、ご安心ください。 スナイプの逆向き挿入シーンを見て、思わずそのような昔のことを思い出してしまい、変な汗が出ました。 当然、最初から弁が逆向きのスナイプを用いたのだとは思いますが、その説明がなかったので心配しました。
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