大統領拒否権発動
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- 2013/08/06(Tue) -
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オバマ大統領が、米国際貿易委員会によるApple製品の輸入禁止命令に対し、拒否権を行使しました。
なんのことかよくわからないけど、そもそも興味もない、という方のために、今日は解説を試みます。 スマホやタブレットを世界に広めたのはAppleだと思いますが、それはAppleだけの功績ではありません。 ジョブズは、既存の技術に独自の技術と工夫を加え、洗練されたデザインの新製品を生みだしただけです。 だからApple製品には、他社が開発した技術、たとえばサムスンが開発した通信技術なども使われています。 そのサムスンは、たとえば自社の3G通信関連特許をAppleが侵害していると、Appleを訴えてきました。 しかしこの特許は「FRAND特許」であるから、2.4%のライセンス料は高すぎるというのがAppleの言い分。 FRAND特許(必須標準特許)とは、業界の標準規格に準拠した製品には欠かせない特許のことです。 「公平Fairで、妥当Reasonableで、And、非差別的Non-Discriminatory」な対応が求められます。 世界中が必要とする特許なので、特許権は認めるが、ライセンス料は安くしなさいよ、ということです。 サムスンがFRAND特許を濫用していることは、昨年あたりからEUなどでも問題になっていました。 今年2月の東京地裁判決も「サムスンは信義則上の義務を尽くさなかった」と、特許権の濫用を認めました。 そのような経緯から、どうやら欧米や日本はアンチサムスンに向かっているように、私は感じていました。 ところが本年6月4日、米国際貿易委員会(ITC)がAppleの特許侵害を認めました。これには驚きましたね。 これによって、旧型製品ではあるけど、iPhoneとiPadの米国への輸入禁止が決定されてしまったからです。 輸入禁止はAppleにとっては販売禁止に等しいダメージです。なにしろこれらの製品は中国製ですから。 ITCの決定から60日以内なら、大統領はこれを拒否できますが、まさかしないだろうと思われていました。 オバマ大統領はしかし、60日間の期限間近の8月3日になって、ITCの裁定に対して拒否権を発動したのです。 この発動は26年ぶり。米政府は自国企業を守る、その基本的姿勢が明らかになったとみることもできます。 そう思っていたらサムスンは昨日、標準特許以外の問題でITC判定に抗告したようです。懲りませんね。 Appleとサムスンの泥仕合は、まだまだ続きそうです。
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